第46話 塩水と卵とお千ちゃん

ども、坊丸です。

先日は、農業改革に協力してくれる石田村を視察に行きました。数日後にまた訪問する旨つたえて、帰ってきました。農業改革っていうか、まずは土づくりな感じなんですがね。




土づくりっていってもなぁ、家庭菜園を手伝ったり、理科の授業の知識くらいしかないしなぁ。


家庭菜園の時の土は、野菜と花の土とか野菜がおいしく育つ腐葉土とか培養土だからなぁ。


後は、窒素-リン-カリウムが8-8-8とかで入ってる白くて小さい粒の化学肥料かペレット状の油粕をちょっと追加するくらいだったもんなぁ。




剛腕で脱兎なアイドルが農業したり、海岸の環境改善したり、島を開拓する番組だと、大きな木で作った枡の中に、牛やヤギの糞と落ち葉を入れて半年近く寝かせて、完熟たい肥を作っていた感じだよね。




もう三月だし、たい肥化するのに時間ないんだよねぇ。


やっぱり油粕か。でも、この時代は、ゴマ油がメインだからね。ゴマ油を搾ったカスなら、水あめとまぜてゴマペーストでもつくって美味しくいただきたくなっちゃうよね!


油粕の代わりだと、おからと酒粕くらいしかおもいつかないなぁ。


おからと酒粕をベースに、牛糞、もみ殻、藁くず、雑木林の腐葉土なりかけの落ち葉なんかをつかって、促成たい肥を作るか…。


精米機とか存在しない時期だから、もみすりは杵と臼だろうし、もみ殻と一緒に米ぬかもgetできるはず。


米ぬかは、たしかぼかしたい肥のもとになったり、コンポストで自家製たい肥作る時に入れたりしていたはず。


あ、でも、もうすぐ春だから、もみ殻&米ぬかは大量にgetにはできないか…


とりあえず、おからと酒粕のできれば両方、少なくとも片方は手に入れる伝手をみつけないとな。


今回は、完熟たい肥作ってる時間無いから、短時間で発酵が進む工夫をなんとかしないといけないのがむずかしい感じ。






後は、鰯などの小魚を干して作った干鰯ってのもあったよね。たしか落語でそんなの見た気がする。ちがったかなぁ。


魚屋の三郎さんに頼んで、どうにか、漁師さん達から鰯や小魚を仕入れるルートつくれないかなぁ。


次に、魚屋の三郎さんが来たら、相談してみよう!




後は、農機具の改良だね。備中鍬の普及や馬鍬の改良、千歯扱きとかかな。


ここら辺は、木工職人の人や鍛冶職人の人に協力者を作らないときびしい感じ。




いやはや、自分ひとりじゃ無理だぞ、これ。


アイデアはいろいろ出せそうだけど、マンパワーが絶対必要な案件ですよ、これ。


どうにかして、実働部隊の確保が急務な気がしますよ、まったく。




流石に、柴田の親父殿や吉田次兵衛さんにいつもいつも付き添ってもらうわけにもいかないしなぁ。


あれでも、柴田の親父殿は織田家の重臣だし、吉田次兵衛さんもその柴田家の家宰みたいな役割しているお忙しい人だからね。




でも、ある程度交渉ができたり、説明ができるそこそこ有能な人をつけてもらわないとね。


いくら信長伯父さんのご下命だって言っても、豆腐屋さん、酒屋さん、漁師の網元の人なんかが、子供のいうことを、ホイホイ聞いてくれるはずないし。


そんなわけで、あとで、誰か、補佐役をつけてもらえないか、柴田の親父殿に相談だな。




「お千、何やってるんだい!」


おお、一生懸命、農業改革のアイデアを練っていると、台所のほうから、お滝さんの怒鳴り声が。


あきらかに、お千ちゃんが何かやらかしたんですね。


ま、一人ブレインストーミングも限界な感じがするし、気分転換に、台所をのぞきに行こうかな。




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「お千、確かにあたしは、茹で玉子を作る時に、鍋に塩をいれろって言ったよ、でも、手を滑らせて、こんなにたくさん入れちまうとは、何やっているんだい」




「すぅみばせぇん」




お千ちゃん、安定のドジっ娘ぷりですね。半泣きで謝っているのが、もはや定番ですよ。




「どうしたんですか?」




「あ、坊丸様、聞いてくださいよ。お千に、今朝もらった卵を茹で玉子にしといてくれって頼んですよ。


その時に、鍋に塩を少し入れるんだよ、って説明したら、この娘、どうしたと思います?


握りこぶし一個分くらい入れちまったんですよ。普通、少しって言ったら、ひとつまみふたつまみか多くても小指の頭くらいだと思うじゃないですか。


はぁ~、塩だって安かぁないんだよ、どうするんだい、まったく。


見てごらんよ、玉子が水に浮いちまってるじゃないか。こんなにたくさん入れる馬鹿ぁ、いないよ」




「鍋に塩を入れようとして、手で塩を救おうとしたときに、竃の薪が急にはぜたから、ビックリして、思いっきり掬い上げちゃって、その塩が、全部鍋に入っちゃったんですぅ」




うんうん、薪が燃える時に急にはぜるようになるときあるよね。あれって炎の傍にいると、意外とビクッすることあるよ。わかるわかる。




妖怪サトリもはぜた火の粉にビックリして山に逃げ帰る伝説とかあるもんね。




ただ、それで、塩を鍋に大量投入は無いわぁ~。


新たなお千ドジッ娘伝説の誕生ですか?ドジッ娘妖怪お千ですか?などと思っていても、謀反人の息子、坊丸についてきてくれたお千ちゃんには優しく声をかけることに決めている坊丸です。




「お千ちゃん、ビックリしたんだね。火の粉でやけどとかしてない?塩を少し入れる時は最初から少ない量を取って、何回か分けて入れるほうが良いよ」




茹で玉子を作る時に塩を入れるのは、味付けじゃなくて、たんぱく質の凝固を促進させるためだからね、そんなに高濃度の食塩水をつくる理由はないんだよね。




「坊丸様…。やけどはしてないです。今後は気を付けます。ごめんなさい」




っと、いきおいよく頭をさげる、お千ちゃん。


いや、謝るのは、自分じゃなくてお滝さんにだけどね。でも、その素直さは良し!ですよ。




「はぁ、坊丸様はお千に甘いねぇ。それはそうと、見てくださいよ。茹で玉子つくるのに卵がぷかぷか浮いちまっている」




どれどれ、本当だ、玉子が浮かぶくらいの食塩水って、どんだけ比重重いんだよ。


ん?比重?卵が浮かぶ?


あ、それだ!種もみを塩水の比重を利用した塩水選!


これなら、短時間でできて、しかも良質な種もみを選ぶことで、収穫はある一定以上確保できそう!


良質な種もみを選抜して継代することで、ナチュラルに品種の選抜・改良も可能になるだろうし。




「お千ちゃん、ありがとう!」


お千ちゃんの両手を握って、ぶんぶん振っちゃいます。感謝の気持ちです。




「え?ええぇ?」




何事かわからない、お千ちゃん、ポカーンとしてますが、知ったこっちゃありません。


失敗は成功の母!今回の事例はちょっと使用方法が間違っている気もしますが、お千ちゃんのドジッ娘パワーのおかげで塩水選を思い出せたんですから、結果オーライです!




ちなみに、お滝さんには、茹で終わった塩水を濾したうえで、沸騰させて、さらに濃い塩水をつくってから、天日で乾燥させて塩を回収する方法を教えておきました。


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ここまで読んでくださりありがとうございます。




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