第22話 肉だ!肉がきたよ!鴨をいただきました!
ども、坊丸です。
今日は、柴田の親父殿が、信長伯父さん主催の鷹狩に行きました。
とはいえ、こちとら、小僧の身。いつものように簡単な書き取りと漢文、簡単な計算の手習いした後に、理介たちとチャンバラや相撲、鬼ごっこですよ。
え?何か不満なのかって?手習いは、漢文の勉強以外はつまんないよねぇ…。漢文もいきなり白文を読めって言われるしさぁ。理助たちは常に全力で手加減とかしないから、擦り傷、痣は日常茶飯事だし…。
まぁ、子供らしい生活っちゃあ、生活なので、大きな不満まではないですが。周囲の国のこととか、京の都のこととかそんなのも知りたいよね。今後のために。信行パパはときどきそういうの話してくれたので、情報収集になったんだけどね。ま、死んじゃったけど。
そういえば、鷹狩なんだから、なんか獲物取ってこないかな。久しぶりに肉が食べたい!肉!肉!野鳥でもイノシシでも、ウサギでもいい!肉ぅぅ~!
と、柴田の親父殿が帰ってきたみたい。お出迎えに行きますか。あ、婆上も玄関のほうへ向かっているし、急いで向かおう。
「今戻りました、母上。お、坊丸殿も出迎えご苦労」
柴田の親父殿、なんか上機嫌です。
「母上、今日は信長様より、鴨二羽をいただきました。本日の夕餉にあぶってもらおうと思います」
やった!肉だ!肉が来たよ!って、心霊呪殺師太郎丸のボスキャラみたいなことを思ってしまった。
「この鴨です。後で厨の方に持っていかせます」
「あれ、片方はきれいな感じなのに、片方は左の羽が吹き飛んでますね。どうしたのですか?」
「あぁ、きれいな方は、儂が鷹を使って捕らえたものぞ。もう一方は、橋本一巴殿が、鉄砲で撃ち落としたものだ」
「え、もう鉄砲ってこの辺にもあるんですか?」
「坊丸殿は、鉄砲を知っているのか?」
やべっ、やっちまった。頑張ってごまかさないとぉ…
「父上が、信長の伯父上は鉄砲を買い集めているって言っていたのですが、まさかもう使っているとは…」
「殿は、鉄砲を既に戦場で使っていますぞ。数年前の村木砦を攻めたときに、砦に撃ちかけさせてますからな」
し、知らんかった… 鉄砲を有効活用って言ったら長篠の戦いだと思っていたけど。そりゃそうだよね。あれが一発目のわけないよね。その前にいろいろ試行錯誤してるよね、ウンウン。
「それはさておき、坊丸殿、信長様がお呼びじゃ」
「え?」
やばっ俺、何かやらかしましたか?今さら、信行パパの謀反に連座制ですか?
「なぁに、悪い話でない。本日、さんが焼きを鷹狩りに持っていったところ、殿がさんが焼きをたいそう気に入り、さんが焼きの他になめろうや真夜寝酢和えも召し上がりたいそうだ。期日は10日後、清須の城で。卵と鯵は、あちらで準備くださるそうだ。それに何か他に必要なものがあれば可能な限り手配いただけるとのことであった」
「10日後、ですか…ちなみに大勢に振る舞うのですか?」
「殿と正室の帰蝶様、側室の吉乃様、後はどれだけ食べられるかわからんが、嫡男の奇妙丸様の四人だな」
「わかりました。信長伯父上を満足させられるよう、少し考えてみます」
「取り寄せる食材のことを考えると、期日の数日前には言わねばならぬし、あまり珍しい食材は無理ですぞ」
「それも、考えておきます。こちらから持ち込みは大丈夫ですよね」
「毒味の人間に見せねばならんかもしれないが、まぁ、大丈夫だろうな」
「持ち込みは大丈夫と…、でもできるだけ信長伯父上の支払いにしたいから、簡単に手にはいるものは、できるだけ事前に頼むようにします、では、鴨もみたいし少し厨に行ってみますね」
「おぅ、殿の饗応のこと、宜しくな」
「はい」
と答えつつ、台所に向かうわけです。
台所につくと、鴨の首が、くびちょんぱされるところでしたよ。わぁお。ビックリするよね。
でも、現代社会のスーパーに並んだお肉の状態で手にはいる訳じゃないし、肉屋経由でなくて鷹狩りで直で手に入った鴨だもん、しかたないよね。目の前で首がおとされる見たときは、ビックリ&ショッキングだったけどさぁ。
柴田家の男衆が、既にくびちょんぱされた鴨を紐で吊って血抜きしている光景も、なかなか来るものがありますが、戦国時代ではきっと普通なんだよね。頑張れ俺、平静を装うんだ。
ちなみに羽付きのままお湯でさっと茹で、そのあと、羽をむしった後、軽くあぶるそうです。そのあと内臓を処理するするそうですが、さばいていくのをじっと見ているだけの胆力が現代っ子の自分にはないので、縁側ですこし休んでます。あ、切り干し大根をつくる用に千切りの大根がざるに干してありますな。遠くを見つつ、ちょっとだけつまんで、気分をリセット。
料理番のおばちゃんから声がかかりました。あ、内臓の処理終わりましたか。
手羽とささみ、ボン尻、あとメインの胸肉、もも肉ときれいにさばいてあります。2羽分て意外と多いのですね。
料理番のおばちゃんに聞いたら、基本、全部塩で焼いて夕餉に出すって言われました。
鴨の油や肉のうまみを味わうだけなら、塩だけだよね!でも、信長伯父さんの饗応があるからね、この鴨も何か使えないかなぁ。
「おばちゃん、10日後に殿にマヨネーズやなめろうを差し上げるんだけど、この鴨って使えるかなぁ?」
「坊丸様、10日後は無理、というもんですよ。10日もどうやって持たすんですか?腐ったものを殿様に出すわけにはいかないから駄目でしょうね」
そうか、10日、持たないよね。だとすると、燻製を作るか、みそ漬けにでもして持たせるか…
「燻製か味噌漬けで10日くらい持たないかな」
「燻製なら長持ちしますよ。味噌漬けも10日くらいなら持つでしょうかね」
「風味を考えたら、みそ漬けかなぁ…。一匹の胸肉をみそ漬けにしてもらっていい?親父殿には話しておくから」
「はいはい、坊丸様の料理にしてはまぁ、普通でさあね。小さいツボに味噌と鴨肉を入れて漬け込んでおきますかね」
「今日の夕餉のほうにも、ただ塩で焼く奴だけじゃなくて、工夫したいね。味噌と柚子の皮を下したものを混ぜて、ゆず味噌を鴨の肉にすこし塗って焼くのはどうか?」
「そうですね、一つの味だけだと飽きるから、柚子味噌を塗った鴨も数切れお出しするのは、いいお考えだね」
「でしょ!そんな感じで作ってよ!」
本当は、伯父上の饗応の時に、鴨の味噌漬けをただ焼いただけの奴と香りを変えた柚子味噌焼きの二つを出したいからね、その時の練習なんだけどね。
その晩の夕餉、いつものように、柴田勝家、その母のお梅、そして坊丸は膳を囲んだ。
「うむうむ、鷹狩でとった鴨、うまそうじゃ!」
と柴田の親父殿。
「勝家、鷹狩での活躍お見事でした。おかげで、今日は鴨がいただけるからうれしい限りですございますね」
「後で、親父殿のご活躍、聞かせてくださいね」
婆上が親父殿をほめているから、それに話を合わせておくぜ!
「お、今日の鴨は塩焼きだけではなく、何か塗って焼いているのか」
あ、気づきました?伯父上の饗応に向けてのひと工夫ですよ!
「はい、塩焼きだけでも十分美味しいのですが、ひと工夫してみました」
「では、その工夫したほうからいただくか!む、柚子の香りと味噌の塩気が鴨の濃厚なうまみにあわさって、美味い!美味いぞ!」
柴田の親父殿、食リポ、上手やな。そして、なんか、親父殿が涙ぐみながら鴨の柚子味噌焼きを食べているんですが。あ、婆上は塩焼きの後に柚子味噌焼きですか。
「塩焼きのほうが鴨のうまみ、香りが直に来ますね。柚子味噌のほうは、香りも味もすこし穏やかになっている感じかしら。でも、柚子の爽やかな香りがなんともいいですね、坊丸殿」
その晩、柴田の親父殿は、味の違う鴨肉を交互に丼のうえでバウンドさせながら4杯、米を食っておりました。さすが、鬼柴田。胃袋も鬼だね!
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