第19話 鯵でなめろうを作ってみせたよ!

ども、津田坊丸です。

マヨネーズ成功しました。マヨネーズが出来たら、次はタルタルソースだよなって思う訳ですよ。


が、残念、戦国時代には、玉ねぎがありませんでしたよ。パセリもありませんがね。キュウリはこの時代に既にありますが、今は2月、冷蔵技術なんかありませんから、旬でないキュウリもありやがりません。


なんつうか、どんな季節でも必要な野菜が売っている現代のありがたさを今更ながら思い知ります。

ちっきしょう、夏が近づいたら、キュウリメインできっと作るぜ、タルタルソース。玉ねぎとパセリは代用品を考えないとだめだけどね。


タルタルソースつけるなら、魚のフライを作りたいよね。でもパンが無いからパン粉無いしなぁ。

うどん・蕎麦はあるから小麦粉・そば粉で揚げ物かな… 

片栗粉は、その名の通り、カタクリの根っこのでんぷん集めたやつだよなぁ…

あんまり手に入りそうにないなぁ…

素麺とか蕎麦の乾麺を砕いて衣にするのはどうかなぁ…

でも、その前に、タルタルソースの玉ねぎの代用品だよな。


などと考えていると、本日は出入りの魚屋さんが鯵がたくさん獲れたから買ってくれって、台所の方に来ています。柴田の親父殿並みに声でかいから、すぐわかるよ。

鯵、美味いよねぇ。ちょっと、見に行こうっと。

え、次兵衛さん、理介たちが剣術の稽古してるから一緒にどうだって、いやいや、ここ連日相手してたんだから、今日はパスだパス。理介たちより、鯵ですよ!鯵!で、台所にgo!


調理番のおばちゃんが、魚屋さんと交渉中です。魚屋さんは多く持ってきたから、たくさん買ってほしい、調理番のおばちゃんとしては、足の速い青魚をたくさん仕入れるのは怖い。


そんな感じで折り合いがついていないご様子。


「だから、鯵をいつもの倍持ってきたからって、全部は買えやしないよ。どうせ腐らせちまう」


「そこをなんとか!持ってきた全部、いつもの倍とは言わねぇ、いつもより多く買ってくれれば、それだけでいいんだ、焼いたやつを今日明日だせばいいじゃねぇか」


「朝の焼き魚は、勝家様とお梅様、坊丸様くらいしかつかないよ。3人前で十分だ、6匹で良いよ」


「そこをなんとか!12匹とは言わねぇ、せめて、9匹。あ、そこの坊ちゃんもどうです。鯵、美味しいですよ。ね、お願いしますよ」


「あ、坊丸様、魚屋がうるさくてすみませんね、鯵をたくさん買ってくれってうるさいんですよ、こいつは!」


アジフライを作るめどが立っていれば、試作品を含めてみんなに食べてもらって12匹いけるだろうな。柴田の親父殿なんか2-3匹ペロッと食べそうだし。


でも、アジフライ、まだ、作れないんです。現代料理再現プロジェクトを考えると今後の仕入れで融通してもらうのに魚屋にすこし恩を売っておきたいのだけれど…


あ、鯵のなめろうとさんが焼なら作れるな。ショウガと大葉はあったはずだし。ねぎも秋から春が旬だからあるだろうし、なければ代用品を考えればいい。


「おばちゃん、1-2匹なら多く買ってもらっても大丈夫だよ」


「え、坊丸様、余計に買うんですか?坊丸様は変わった料理作られますが、鯵ですよ。屋敷の中で鯵の干物でも作るとか言わないで下さいよ」


おばちゃん、俺はまだマヨネーズしか作ってねぇから。俺は独創性あふれる創作料理の人じゃなからね。ネタ元は話せないけど、本来の時間線で四百年ちょっとくらいたった世界では、日本人普通に食べてるものだからね、マヨネーズ。


それはさておき、おばちゃんを説得して、2匹くらい余計に買ってもらおう。ちなみに、魚屋さんは、期待を込めた目でこっち見過ぎです。


「鯵の料理を作ります。焼き魚以外のものを。ちなみに、東国は、安房や上総下総の方で食べられる料理です」


「本当ですか?美味しいんですか?」おばちゃん、まだ疑います。


「あ、坊丸様がまたなにか作るんですか?」

ちょうどお千ちゃんが大根と白菜、ねぎを籠に背負って台所に入ってきたところです。お千ちゃんナイス!お千がねぎしょって来たぜ。あ、買ってきただけですか。


「鯵のたたきを少し変えた料理ですよ、味噌と薬味も一緒にたたく感じで作るんです」


「鯵のたたきなら、大丈夫。うん、きっとだいじょうさぁね。しょうがない、3匹余計に買ってあげるよ」


「毎度あり!じゃあっしはこれで」

魚屋さん売り付けたら即、帰りやがります。


「じゃ、坊丸様、あたしが鯵を三枚に下ろしておくから、お千ちゃんとその安房だか上総だかの鯵料理の準備をしといてください」


「了解した」「分かりました~」


「で、坊丸様、鯵のたたき風料理は何が必要なんですの?」


「味噌、大葉、ネギ、生姜だね。夏場なら、ネギの代わりに茗荷を入れるかな」


「ネギは、さっき買ってきたし、生姜と味噌は台所にあるから…、後は大葉ですね。確か庭に生えていたから、採ってきます。何枚くらいあればいいですか?」


「香り付け位だから、3~4枚で。でも少し多めの方がいいかな、念のため」


「じゃ、7、8枚採ってきますね」


お千ちゃんが大葉を取りに行っている間、手持ち無沙汰だな… ネギ、小口切りにしておくか…


予備のまな板にネギを一本乗せて、包丁を手に持ったら、料理番のおばちゃんに怒られました。


「坊丸様、なにやってるんですか!包丁を使う作業は私とお千ちゃんでやりますから、坊丸様はおとなしくしていてください。怪我でもされたら、怒られるのは私なんですから!」


子供に刃物は持たせられないっていう正論にぐうの音もでねぇ。しょうがない、お千ちゃんが帰ってくるのを待ちましょう。


「大葉、採ってきました!」


「こっちも鯵の三枚下ろし終わったよ、じゃ、三匹分、半身6枚を渡すから、絶対に美味しく仕上げて下さいな」


「とりあえず、お千ちゃん、一匹分、粗めのみじん切りにしちゃって」


「え、お刺身にできるのを粗めのみじん切りにしちゃうんですか?もったいなくないですか?」


「大丈夫だから、やって」


「は~い」


とんとんとん、とリズミカルに刻んでくれます。


「できましたよ。次は?」


「味噌を少し足して更に細か目に叩いて」


「あんまりたたくと鯵の身が細かくなって粘りけ出てきますよ?」


「それで良いの。で、そこに擦った生姜と刻みネギ、刻んだ大葉を足してさらに叩いて」


少し不信の目をむけられますが、お千ちゃん、鯵と味噌、香味野菜をまたリズミカルにたたいてくれます。


「坊丸様、ところどころ身は残るけど鯵がつみれを作るときっぽくなってきましたよ」


「はい、そこで止めて。じゃ、味見しよう」


味見といったとたん、三枚下ろしのあと、明日の朝食用に鯵を炙っていた料理番のおばちゃんがこっちにきます。全く、味見には敏感なんだから。


「ねっとりした口当たりに鯵の旨味、油ののりと味噌の塩気が良いね。生姜の爽やかさで、ついついあとを引いちゃうよ」


おばちゃん、食リポ上手すぎです。


「ネギの食感と大葉の香りも良いですね。鯵の生臭さを抑え込んでる」


お千ちゃん、的確な追加情報ありがとう。


「旨い、これだよ、これ、鯵のなめろうは、旨いなぁ」


「でも、もう少ししょっぱい方がいいね」


おばちゃんは、基本塩気強めが好きな。


「そうですか?私はもっと鯵と生姜多めが良いなぁ、坊丸様は?この味で大丈夫ですか?」


「少しネギと生姜多めで爽やかさを増したいね」


「みんな少しづつ違うんですね」とお千ちゃん。


「あら、何を作ってるのかしら」

ってお妙さんと婆上様まできましたよ。これじゃ味見で試作初号は無くなっちゃうよ…


「あ、美味しい。これでお酒がいただきたいわ」


ですよね、お妙さん、俺も前世では行きつけの居酒屋で鯵の刺し身が入っていたら、なめろうできないか聞いて、メニューにないのに作ってもらって、日本酒呑んでたもん。なめろう、加工賃が追加で載せられてましたが。


「鯵の生のつみれみたいなものですね、もっと魚臭い、生臭いかと思ったら、大葉、生姜が効いてますね」


お、婆上様からも今回は速やかにokいただきました。


「みんな好きな味が少しづつ違うんですよね…どうしよう」

と、問題提起してみる、俺。


「味噌とネギ、生姜を少しだけつけて、自分好みの味に変えられる用にすれば良いんじゃないですか?」


さすが、お妙さん、そのアイディアいただきました。

じゃ、みんなの最大公約数的な感じで作りましょう。

と、料理番のおばちゃん、あらをざるに集めだしましたよ。


「あ、鯵のあらは、捨てないで下さいね、それを煮て、出汁をとりましょう」


「あら汁にしようと思っていたんですが、違うんですか?」

あ、あら汁にするつもりだったんですか、捨てるのかと思ったよ。


「あらからとった出汁に塩と生姜を加えて、潮汁にしましょう、具はなめろうをつみれみたいに球にして落としたやつで。で、最後に柚子の絞り汁や柚子皮一欠片くらいいれると魚の生臭いのも抑えられるでしょ」本当は、清酒があればそれで臭い消しと味の整えるを一気に任せるんだけど、なんか、濁り酒ばっかりなんだよね。この時代。清酒無いのかなぁ。


「鯵のなめろう美味しいですね…でも、生だからすぐ腐っちゃうなぁ、食べきる量しか作れないですね」


「お千ちゃん、なめろうって焼いちゃダメなの?坊丸様、どうなんです?」


「お、お妙さん、良いところに目をつけました、なめろうを焼いた料理はさんが焼きっていうもので、ちゃんとあるんですよ!大葉ではさんで、焼くんです!」


「じゃ、その通り作って、焙烙皿に並べてやいてみましょう。大葉がちょっと焦げて、火が通ったら完成かしらね」


くっ、鯵のフルコースの最後を飾るさんが焼きは、なんかお妙さんの手柄みたいになっちまった… まぁ、いいか。


その晩、柴田の親父殿は、なめろうの語源の通り、なめろうをのせた皿までなめて味わってました。ちなみに味噌多めに味変したやつがお好みのようでしたよ。なめろうでご飯三杯、なめろうつみれの潮汁でご飯一杯、さんが焼きでご飯二杯食べやがりました。

そんだけ食べた上に、明日の信長伯父さん主催の鷹狩りにさんが焼きをおかずで持って行くって言い出して聞かない有り様でしたとさ。


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