第4話 ポンコツ天使様、ふたたび
寝ては、起きて、ぐずって、おっぱいで栄養補給して、また眠くなってってな感じで過ごす日々。
眠くなる前の時間などは、聞き耳を立てて、状況把握に努める。まだまだ視力は微妙で物がぼんやり見えるくらい。色は把握できるようになったけどね。
早く、言葉が話せるようになるといいなぁ。
そういえば、津田信澄について自分が知っていることを思い返しておこう。
1.織田信行の長男。信行が謀反したのに、何故か許された
2.信長に言われて香木「蘭奢待」の切り取りをした人
3.本能寺の変の後、織田信孝に明智光秀との連携を疑われて殺された
以上。
……。
どうしよう。勢いで津田信澄に転生したけど、業績について何も知らねぇぞ。
そこそこ戦国時代好きだったけど、もっと戦国時代が好きな高校時代の友達の千葉君に聞いた内容しか覚えていない。千葉君的には本能寺の変で信長と信澄が死んでなければ信長の後継者候補に入ってもおかしくないって高評価だったけど、そこまで詳しくなかったよ、俺。
津田信澄って、三英傑や有名戦国大名みたいに歴史の大切な場面とかに出てこないから仕方ないよねぇ…。
Zzzzzzzz
は、寝ていた。さっき、乳母からおっぱいもらって満腹だったからな。すぐ寝るな、乳児になった俺。
さて、もう一度考える。
プラン(1)信行父さんに謀反を思いとどまってもらって、連枝筆頭の息子として登場。明智光秀の出世を信行父さんを使って妨害して本能寺の変の時期に明智光秀が遊撃軍団の偉い人にさせない。本能寺の変が起こらないから、信孝に殺されることはない。
プラン(1-b)信行父さんに謀反を思い留まってもらって、連枝筆頭の息子として登場。信行・信澄の軍団で本能寺の変を起こした明智光秀を討つ。本能寺の変を鎮圧した信行父さんと共に褒めらるので、信孝に殺されることはない。
プラン(2)信行父さんには謀反してもらう。自分は許されるらしいのだから、子供の頃から現代知識という名前の「異才」を見せて取り立ててもらう。そして、明智光秀が本能寺の変を起こす前までに信孝より偉くなる。可能なら、本能寺の変を鎮圧・頓挫させる。本能寺の変を鎮圧した本人なら信孝に殺されるようなことはない。
プラン(3)明智光秀と本能寺の変を起こして自分が織田家本流になってやるぜ!当然、信長、信忠、信雄、信孝は殺す。とくに信孝は殺す。完膚なきまでに殺す。
信行父さんに謀反成功してもらうって案も一応考えたけど、信行父さんだと桶狭間の戦いで勝つ絵が見えないので、不採用。
う~ん、信澄の人生の情報がもう少し欲しいな。特に、信行父さんが信長伯父さんに謀殺された時期と桶狭間の戦いの時期に自分が何歳のか?って情報が特に欲しい。
しょうがない、天使級10589号さんに教えてもらおう。
『この切り離した時間線を管理する偉大な天使様、人の子をお助け下さい』純粋な気持ちで助けを乞う。
『この切り離した時間線を管理する偉大な天使様、人の子をお助け下さい』もう一回、祈る。
『この切り離した時間線を管理する偉大な天使様、人の子をお助け下さい』ねえ、助けて、ほんと。
「助けを乞う祈りに答え、吾は現れたり。しかし、すぐに吾を呼ぶものだな、人の子。時間線の切り離し業務の後始末が終わった直後だから答えられたが、もうすこし前だったら黙殺したぞ」
という天使級10589号の声が聞こえると共に、また白い部屋に移動している。なんか前回の部屋よりも狭い感じがするが、気にしたら負けなんだろう。
「偉大な天使様、ありがとうございます。人の子をお助け下さい。具体的には、津田信澄の本来の時間線での人生を教えていただきたいのです」
「それを教えると、それを参考にそなたら人の子の動くことになるから、詳細は教えることはできない」
「では、本来の時間線と同じに物事が動いた場合、父信行が自分が何歳の頃に死ぬのかと、桶狭間の戦いが自分が何歳の頃に起こるのかはどうですか?」
「む、それならば教えることができる」
「そなたのこの時間線での父である、織田信行はそなたが3歳の時に死ぬ。桶狭間の戦いとは何か?」
「桶狭間の戦いじゃ、分かってもらえないか…。じゃあ、聞き方を変えてっと。今川義元が戦死するのは自分が何歳の時ですか?」
「今川義元が戦死する時期だな?本来の時間線を参照するのでしばし待つが良い」
天使級10589号が高速スピンしているのをぼーっと見つめること、5-6分。そろそろ飽きてきたなと思いつつ、天使級10589号から視線を外す。ちなみにこの天使級って明確に顔がある訳ではないから、少し怖いんだよね。回転してるのは、天使の羽みたいな突起物があるから分かる感じ。
と、そんなことを思っていると、急に回転が停止した。
「人の子よ、今川義元なる存在が死亡するのは、そなたが5歳の時だな。」
「ほかには…」
「人の子よ、吾の仕事はこの分離した時間線の管理。其方がこの時間線ですぐに死ねば、吾の贖罪と反省のために設けられたこの業務は終了し、本来の時間線の保守管理業務に戻れる。この分離した時間線管理は吾の時間線管理の経験にはなるが、功績にはならない。本来の時間線で功績を積まねば、吾は天使級から大天使級に昇華できない。なので、其方がこの世界で長く生きるために積極的に協力する意志は吾には無い。そう思い知るがよい。」
「つまり?」
「今回はこれ以上の手助けはしない。また、そなたからの祈りについても、5-10年に一度程度しか答えない。今回は、時間線の分離業務終了後であり、ちょうどそなたの状態を見たから特別に答えた。良いな。」
「分かりました」
ちぇ、あんまり助けてくれないのかぁ。自分の道は自分で切り開けってことなのね。
って思っていると、目の前の天使級10589号さんの存在が消えた。
あ、この白い部屋の空間でのお話は終了ってことですね。
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白い部屋から追い出されたら、また赤ん坊の状態に速やかに帰って参りました。
とりあえず、これから数年で必須の知識は手に入ったぞ。
当面は「おっぱい飲んでねんねして」って感じで過ごすしかないし、体に引っ張られた感情爆発の時以外は、手に入れた知識を元に身の振り方を色々考えて行こう!
あ、おなか減ったな。
「オギャア、オギャア」
あぁ、空腹だとすぐに泣いちゃう。
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