第301話
(ごめん、落ち着いた)
(そうか……本当か……?)
(信じてくれ妹よ)
(信用は地に落ちたぞ小僧……)
お兄ちゃんは悲しい……。
紅羽を抱えながら、赤ちゃん用のベッドへと向かう。
俺もこれを使っていたけれど、材質はもちろんそこらのトレント。
この村の大人であれば、片手間に伐採できる魔物だけれど、それ以外の土地にこれが生えていれば、それだけで厄災とか言われちゃうクラスの魔物らしい。
怖いね。
(おかしい……この寝所、何やらとてつもない魔力を感じるんだが……?)
(なんだっけ……エルダー?エンシェント?トレントとかいうらしいぞ。木の魔物の上位種だって)
(それは、相当な化け物ではなかったか!?そんな物をこのようなものに……!?)
(ってか、この家は、ほぼ全てこのトレントの素材だぞ。この村では普通に使われる建材だ)
(おかしい……おかしいぞそれは!?)
そう言われても、今更だからなぁ。
(この村の人達は、多分現代の人類最強クラスばっかりだからな。多少の化け物じゃ相手にもならないんだよ)
(とんでもない場所に転生したものだな……だが、腕が鳴るな!)
(いや鳴るわけ無いじゃないですか。ぷにぷにですよ)
(……そうだった。私は、ただの赤子であった……)
かわいいかわいい赤ちゃんであるところの妹は、まだ目も開ききっていないというのに、物憂げな表情になっている。
そんな顔も可愛いけれど、キミにその顔は似合わないよ。
いや、やっぱりこれはこれで可愛いからスマホで写真を撮って……って、両手が塞がっているから無理だ!
かといって、この抱っこ状態を解除することはできない!
なぜって?嫌だからだ!
しかたない、言葉で慰めるか……。
(落ち込むことはなと思う。だって、紅羽の母親は、俺が知る限り最強の魔術師で、父さんは、剣聖とまで呼ばれてるくらいの強者だから。そして、その2人の間に生まれた娘が紅羽、お前だ)
(いくら親が強いとしても、私自信にはあまり関係が……いや待て!何だこの体は!?まだ赤子だというのに、己の内にある魔力量がとてつもないことがわかる!しかも……前世では到達できなかった精度の魔力操作が、赤子の今ですらできるぞ!?)
やっぱりか!
だって、あの2人の子どもって時点でとんでもない存在になっているだろうなという確信があったもん。
たとえ今はまだ俺に及ばないとしても、ハイヒューマンである2人の間に生まれた子どもが普通な訳が無いんだ。
戦う事が好きそうなてふ子様的には、非常に楽しめる体になっていることだろう。
紅羽の顔が、先程までの曇り顔が嘘のように晴れ晴れとした笑顔になっている。
よしよし、計画通りだ。
流石は、バトルジャンキータケミーに気に入られるだけのことはある。
ただ、計算外だったのは、紅羽がその体の性能を確かめるために行った事が、あまりに常軌を逸していたため、俺についてきて様子を伺っていた者たちに、紅羽の異常さがバレてしまった事だ。
「すごいわ!紅羽が魔力操作と魔力放出だけで浮いてるわ!」
「やっぱり俺達の娘は天才だったか!」
「流石は、大試の妹だけある」
「私には、なんだかすごすぎてわからないや……」
「やっべー奴が増えたにゃ……」
「やるではないか!大人になったら手合わせ願いたいのう!」
ギャラリーたちは大盛りあがり。
可愛くて優秀とかそりゃ騒がれるわ。
「これは……今すぐこの肉体の調整をして、あの程度できるようになっておかなければ……」
「次は、変なロックをかけないよう要請する」
「どんなロックも解除しちゃうから大丈夫だよー」
AI3人衆は、まだ肉体を強化するつもりらしい。
最終的にどんな化け物に仕上がるのか乞うご期待!
怖いわ……。
「あれ?ドラゴンの2人は?」
「ルージュとクレーンは、先に移住地を探しに飛んでったよ」
「自由だなぁ……いいけどさ」
(ドラゴン……竜のことだったか!?戦いたい!私も戦いたいぞ!強い相手との戦闘は、勝った時にレベルが一気にあがるからな!)
(その前に、健康で大きな体になるようにお祈りしにいきますよ。幸いといかなんというか、かなり上位の女神様と面識有るから、その辺りの祈りは多分聞いてくれやすいと思うし)
(大試、お前はまさか、女神の眷属なのか!?)
(そうだぞ。リスティ様って言ってな……)
(創造神じゃなかったかその方は!?)
(いや、創造神がやらかして代理で任された可哀そうな女神様だよ)
(それは……紙にも色々有るのだな……)
ふよふよ浮かぶ妹を再度抱きしめる。
こんなにちっこいのに、魔力量はとんでもないらしいあら、将来が本当に楽しみだ。
クリスマス生れは、誕生日パーティがクリスマスと一緒にされるから微妙だと聞いたことが有るけれど、少なくとも俺にとって今日という日は、祝日にしたいくらいの幸せな日になりました。
よし、魔法少女の衣装を発注しておかねば……。
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