第291話
「翼……生えてないのか……」
「種類的には、アースドラゴンタイプね」
「いや、アースドラゴンっていうか……ティラノサウルス・レックスじゃん……」
「ティラノサウルスだけじゃダメなの?アースドラゴンだけど」
「別にダメじゃないけど、ティラノサウルス属の中のレックスって種類って意味だから。まあ、レックスしか見つかってないんだけど……」
「へー、そう」
「興味ないだろ?」
「そうでもないわよ?でもそれより、早くあの肉が食べたいだけ」
別に、どう見てもティラノサウルスなアースドラゴンについて文句があるわけじゃない。
普通にカッコいいと思う。
でも……でもだ!
俺の頭の中には、翼が生えてる絵にかいたようなドラゴンが、口から火を噴きながら迫ってくるイメージがあったんだ!
それと戦うのは凄くファンタジーだなーって思ってたんだ!
でもさ!ティラノサウルスと戦うってなったら、それはファンタジーっていうよりアドベンチャーじゃなかろうか!?
とりあえずゾンビだろうがモンスターだろうが、アサルトライフルで撃って倒す作品が好きならそれでもいいかもしれないけれど、俺はどっちかっていうと、デカブツとは大剣で戦うゲームの方が好きだ!
「……よし、気持ちを切り替えよう。どうせあれは、ただの倒すべき相手であり、食材だ。俺のイメージとは違ったけれど、そこは重要じゃない……うん、そうだ。大丈夫、大丈夫……。羽毛だって生えてないし……うん……」
「どんだけショック受けてんのよ?」
「いや、もう平気だ。乗り越えた」
今俺たちがいる場所は、あのアースドラゴンとやらがいる場所の風下。
もし、羽毛が生えていない時代のティラノサウルスをモデルにして作られているなら、嗅覚も相当鋭いはずだ。
体も地面に対してほぼ水平だから、それだとある程度モデルになった時代もわかる。
具体的に言うと、パーク的なアレだ。
それより前だと、体が地面に対して垂直だったりするんだ。
念の為風下から血数いておいて良かったな。
「でだリンゼ、アレはどういう魔物なんだ?」
「シモフリドラゴンよ」
「シモフリ……」
そのまま肉が美味しいドラゴンって事か……。
「俺さ、霜降り至上主義には一言物申したいんだよな。赤身だって美味いだろって」
「じゃあ、アンタはアレの肉食べないのね?」
「食べるに決まってるだろ。意識高い系の台詞を言ってみたかっただけだ」
「コーヒーショップでノートパソコン使ってたらそれらしくなるわよ」
「コーヒーショップの注文方法わからないもん……」
「残念な奴ね……」
トールとか言われてもわからんよ。
「攻撃方法とか、弱点は?」
「攻撃に関しては、噴火させてきたり、隕石落してきたりするわ」
「ちょっとまて、神か何かなのか?」
「このイベントのボスモンスターだもの。その位するわよ」
「気軽に天変地異起こしてんじゃねぇよネトゲ運営さぁ……」
そして、それをそのまま持って来てんじゃねぇよどこぞの女神!
「弱点に関してだけれど、これと言って効かない攻撃は無いわ。その代わりHPがすごく高いから、総力戦で吹き飛ばすのが一番だと思う」
「成程、わかりやすくていいな」
俺が持っている神剣の性能的にも、非常にやりやすい。
小技を使わされる方が難しいからな……。
「皆、それでいいか?」
「大試がそれでいいなら、私もそうする」
「はい!よしなに!」
「周囲のアイシリーズ10人も加わります」
「どんな技を使おうかのう……あんまり広範囲に影響あるのは、ここではちょっとのう……」
「援護は任せろ!神弓の力を見せてやる!そして肉をくれ!」
我が軍の戦意は上々だ。
これも食欲のなせる業か。
「それじゃあ、開幕の一撃は誰に頼もうか」
俺が作戦を立てようと口を開いた時、視界の端で霜ドラが頭を上に向けたのが見えた。
直後。
『ヴォン!!!!!』
音、というより最早衝撃波と言った方がいいようなものが放たれる。
何をしたのかわからないけれど、とにかく異常事態だ。
奴が俺達を見つけたような気配は無かったけれど、ここは引いた方が良い気がする。
素早く他のメンバーを見ると、全員が俺と同じ考えだったのか頷く。
そのまま速やかに撤退の指示を出そうとした時だった。
「おや?そこに居るのは、もしや人間ですか?」
そんな声が聞こえた。
声が聞こえた方を反射的に向くと、シモフリドラゴンと目が合ってしまった。
「初めまして。私は、シモフリドラゴンと申します。少しお聞きしたい事があるのですが」
俺も疑問だらけだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます