第274話
僕の名前は、田中健児!
ヴェルネスト聖国にある教会本部で13使徒に選ばれた最強の聖騎士だ!
今日も元気に使徒としての仕事をしちゃうぞ!
信心を忘れた奴らを殺したり潰したりするんだ!
男爵家の嫡男で、元々は跡取りだったんだけど、父さんの貴族ゴッコなんかに付き合っていられない!
金が無くてひーこら言ってる貴族の娘を嫁にしたり賄賂渡したりしてまで貴族になった父さんには悪いけれどさ!
まあ、父さんも本当は母さんと無理やり結婚して孕ませたかっただけで、実は貴族なんてどうでもよかったみたいだけれど!
頭がおかしいよね!
そんな僕には、趣味と夢がある!
それは、世界中にリスティ様の像を建てる事だ!
何故かって?
リスティ様の像がこの世界で一番エッチだからさ!
あの慈愛に満ちた表情!
たわわに実った胸!
豊満な尻!
正に理想の女性じゃないか!
何より、子供を2人くらい産んでそうな雰囲気が良い!
なんていうか……ちょっとセルライトが浮かんできて、「もう!こんなおばさんを揶揄っちゃだめよ?」とか言ってくれるくらいの感じが最高だ!
だから、非常に不愉快なんだ!
日本の教会は!
アイツら、聖女が新しく生まれたからって、リスティ様の像のデザインも変えやがった!
22歳くらいの女性になってしまった、あの年齢を多少重ねて落ち着いた雰囲気が無くなっちゃったじゃないか!
新しいのから古いのまで、ありとあらゆる年代のリスティ様の像を集めた僕にとって、許されない暴挙だ!
お前も許せないよな!?な!?
あ、また部下を殺してしまった。
まあいいや。
アイツこの前陰で僕の性癖をバカにしてたし、死んでもいい奴リストに載ってたもんな。
日本人として初めて13使徒に選ばれた天才の僕は現在、日本を粛正するために粛々と準備を重ねている。
小さな国なら楽だけれど、日本は案外強い奴らが多くて、正面から力で言う事を聞かせようとしても難しい。
特に、自分たちで勝手に教皇まで作り出した日本の教会を放置しておくのは、僕としても忸怩たる思いだけれど、今は仕方がない。
でも、その日が着たら、日本の教会が作り出したあの若い女神像を全部叩き壊して、ヴェルネスト聖国の女神像を設置しなおすんだ!
その為なら、このつまらない下準備も我慢できる!
俺は、我慢できる天才なんだ!
我慢して我慢して開放するのは気持ちがいいしな!
あ?いや、そいつはお前らが片付けておいてよ。
大丈夫、どうせここでのことは表に出ないから。
父さんたちは、僕が13使徒に選ばれたのを利用して、色々強引な手を使って金儲けしているらしいけれど、愚かだなぁ。
どうせこの国は、もうすぐ僕らの手に落ちるのに。
だって、こうして地下に潜って力を蓄えている猛者たちが、何か大きなイベントで手薄になっているうちに、一気に城を占拠する計画なんだから。
そうなったら、円なんて通貨も廃止させてGFだけにさせるし、貴族なんて枠組みも全部無くして、皆等しくリスティ様の奴隷になるのに。
あぁ……リスティ様……。
会いたいなぁ……。
生贄を1000人くらい使って行われる儀式で召喚できるって聞いたけれど、その召喚式は教皇様が持ってるアイテムが必要らしいんだよなぁ……。
うーん……あのオッサンぶっ殺したら奪えるかな?
でもなぁ……死んだら失伝するタイプだとまずいよなぁ……。
はぁ……会いたい……会って頭をナデナデされたい……。
そして美味しいご飯をあーんしてほしい……。
絶対すごい包容力だぞ……。
お前もそう思うだろ!?な!?
……また殺してしまった。
お前たちさぁ、もう少し鍛えろよ?
筋肉が足りな過ぎるぞ。
……え?筋肉?僕は何を言っているんだ?
いけない、最近何故か頭の中に筋肉を鍛えろとか、マッスルを信じろって声が響く。
何かの呪いなんだろうか?
特に今日は、その声が大きく聞こえるなぁ……。
聖騎士としてリスティ様を信仰する僕に対してそんな事ができるやつがこの世界にいるか?
そんなの、神話に出てくる魔族くらいじゃないのかなぁ。
そういえば、日本の聖騎士を束ねるオッサンが、最近聖女とその婚約者をどうにかしようとして動き回っているらしい。
今日も何かのイベントで、嫌がらせをしに行くらしいけれど、まあ失敗するだろうな。
だって、人の恋路を邪魔する奴は、リスティ様に蹴られて死ぬんだから。
僕みたいに、真面目に生きている人間だけが、リスティ様に愛される権利があるんだ!
そうだ!僕の使命!
世界中にヴェルネスト聖国教会のリスティ様の像を設置するために、まずはこの国をリスティ様の像だらけにしないと!
仏像もお地蔵様も全部置き換えだ!
楽しみだなぁー!
よし!通販でまたリスティ様の像を買い直しておこう!
保存用と観賞用はいいとして、実用の奴がまた壊れちゃったからなぁ!
今度は、イボを大きくして……。
ん?んんんん!?
なんだ!?体の中から何かが溢れる!?
これは……ヤバイ!?
見れば、周りの部下たちもドンドン膨れて、異形の姿へと変貌していく。
自分の手が、それらと同じ不気味なモノへと変わっていく。
頭の中に、あの声が響く。
「そうだ!筋肉だ!マッスルだ!」
煩い!ちょっとたるんだ脂肪もいいもんだろうが!
「ダメだ!お前はもう!マッスルなんだ!」
頭の中に響いたその声を最後に、俺の思考は闇へと落ちて行った。
あ、でも、腹筋バキバキのリスティ様もいいかも……。
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