第270話
「はい、治ったよ」
「あ……ありがとうございます!」
「うん、次の人」
「おねがいします!」
「任せて」
新しい聖女様が、順番に女性たちを回復させていく。
普段だったらエリアヒールとかで一発で終わるのに、今日に限って何故か一人一人に順番に回復を行っているのはなんでなんだろう?
「大試は最後ね」
「そんな殺生な……」
「大丈夫、死なせないから」
「はい……」
飛行機が家の裏庭につきました。
いつの間にか、垂直離着陸ができる舗装された広場が出来ていて、そこで聖羅様が待って居られました。
そして、何故か普段以上にぶっきらぼう。
「……次からは、怪我をしないように気をつけます」
「別に怪我はしょうがない」
「あ、そうですか……」
大怪我して帰ってきたことに怒っているわけではないのか……?
「晩ごはん、何が食べたいか聞いたのに、なんで返信してくれなかったの?」
「……あー……」
はいそこですか。
そこで怒っている感じですか。
すみません。
「スマホ、ファムに貸してたからさ……。しかも、指もボロボロだったから、仮に持ってても返信は厳しかったかも……」
「そっか。無視じゃないならいい」
「無視なんてするわけがない。俺にとって最優先事項の一つだ」
「無理しなくて良い。帰ってきてくれるのが一番大事だから」
「はい、絶対死にません」
うーん……怒っているわけではない……?
じゃあ、どうしてこんなふうにぶっきらぼうで、エリアヒールを使わないの……?
「……はい、終わり」
「ありがとうございました!傷が消えなかったら、私……私!」
「うん、わかってる。綺麗になってよかった」
「はい!本当にありがとうございました聖女様!」
最後の女性への治療が終わった。
因みに、アンナさんは、とっくの昔に全快し、飛行機の外で天使様と抱き合って大泣きしているらしい。
ファムとアレクシアは、ここにつくなり自分の部屋へと帰っていった。
アイツら一応今はうちのメイドとして登録されているはずなんだけど、主人である俺への労りとかはないらしい。
いや、聖羅がいるから問題ないだろうという考えなんだろうが……。
んで、そろそろ俺への治療をですね聖羅さん……!
「うん、皆いなくなった」
「そうだな、だから治療を……」
「大試は大怪我しすぎだから、治すのに時間かかりそう」
「そうか?いつもならこのくらいすぐに……」
「ダメ、時間かかるから」
「あ、はい」
おかしい……今日の聖羅は、何かがおかしい。
だけど、このおかしさは、なんだか懐かしい気もする……。
うーん……それこそまだ聖羅が小さい時に、こんな事があったような……。
ぽすっ
俺が考えていると、突然胸に聖羅が飛び乗ってきた。
……あー、そういうことか。
「……もう、治ってない?」
「治ってない。あと10分くらい治らない」
「そっか……」
小さい時に、聖羅が甘えたくなるとたまにこんな感じになってたな。
別に言ってくれれば、いつまでもそうやっててくれても良いんだけども。
「痛かった?」
「うーん……痛かったな。っていっても、自分でやったことだし、心の準備もできてたから、まだマシだったな」
「そう」
「聖羅は、今日は何してたんだ?」
「リンゼたちと一緒にご飯作ってた。1000人くらい増えたって聞いてすごい忙しかった」
「そりゃそうだな……。悪かったな、いきなりこんな事になって」
「別にいい。でも、疲れたから、治すのにもっと時間かかるかも」
「そっか」
聖羅が俺の胸に耳を当てている。
心臓の音を聞いている。
人間は、鼓動音を聞くと安心するって言われているけれど、多分聖羅もそうなんだろう。
とてもリラックスしているのが俺にもわかる。
俺も、こうしてゆっくりする時間がとれたからか、土日が潰れて明日がもう学校だって事にも耐えられそうだ。
……サ○エさんの歌とか、笑○の曲が流れたら耐えられないかも知れないが。
「昨日今日と、疲れたなぁ俺も……。今夜は、ご飯食べて、ゆっくり風呂に入って、さっさと寝たいわ」
「一緒に寝て良い?」
「いやダメだろ」
「昔はよく一緒に寝たのに」
「小さい時の話だろ……」
「正式に婚約したんだから、そのくらいしてもいいと思う」
「ダメだ。おじさんたちに顔向けできなくなるわ」
「お父さんとお母さんは、むしろ良くやったって褒めると思うよ?」
「あー……でもダメだ」
「そう……じゃあ、まだ治るまで20分かかる」
「それならしかたないな」
「うん、しかたない」
そう、これは医療行為だ。
何もやましいことなど無い。
「ところで」
「うん?」
「外国の大聖堂が崩落したんだって」
「……お、おう……」
「すごい大きな火柱で壊されたらしいよ」
「そうなのかー……」
「その火柱、リスティの矢って呼ばれてるみたい」
「へぇ……」
「リスティのボルケーノとかじゃなくてよかったの?」
「良いんじゃないかな矢でうん」
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