第265話
「この部屋を神域に創り変えた!もう逃げることはできんぞ!」
「いい具合にリングが出来たな」
「神域とはいえ、外界からの隔離以上の効果は無さそうじゃな。まあ、間に合せの神性ではこんなものよの」
『ピッガガ!ピッガ!』
「なんなのだ!?何なのだ貴様らは!?怯えろ!恐怖しろ!」
いやぁ……。
今までに会ったことがある神性持ちって、はっきり言って、自分とは次元が違うっていうのが本能というか、魂のなにかの部分で感じたけれど、コイツ相手だとそれがないんだよなぁ……。
なんていうか、頑張ったら倒せそうな感じがする。
流石に、女神が出てくるなんて思ってなかったけれど、そんな事は関係ない。
コイツをなんとかしないと、またこの前みたいに暗殺者が送り込まれてくるっていうなら、なんとかしないといけないんだ。
教皇を片付けるという目的は、本来の予定とはだいぶ変わってしまったけれど、一応は達成された。
ついでに似非女神を倒すくらい難てことはない。
……うん、この世界に転生してからの事を考えたら、むしろサービスゲームにすら感じてくるわ!
「何とかなりそう!」なんてポジティブな印象を持てているだけでもさ!
「その濡羽色の翼、消し炭にしてやるよ」
「そ……その神剣、火が出せるのか……?神の火は、流石に……」
「嫌なら降参も受け付けるぞ?自分がリスティ様とは別の存在であり、現在この国にのさばっている教会って組織は、女神や聖女をダシにして横暴を働いているだけのカスみたいな組織なので、本日只今をもって解散するとでも宣言してくれるならさ」
「……いや!それはできん!それでは、新しい聖女の存在で、人間どもに希望が残ってしまう!そんなこと許せるものか!自らの罪を忘れ、のうのうと生きる貴様ら人の子を、偽りの信仰の力で滅ぼす!そのために我は、この愚かな宗教を作り上げたのだ!こんな簡単な終わり方で納得できるものか!」
なんでこんなに頑ななのかわからないけれど、そこまで言うなら、こちらとしても対応せざるをえないわけで。
「残念だよ女神様」
一足飛びにゼルエルの所まで踏み込み、雷切で斬りつける。
ゼルエルは、それを自分の翼で受けた。
多少翼に食い込んだくらいで、そこまでのダメージは無さそうだ。
神剣を受け止められるなんて、偽物とはいえ、流石は信仰対象ってところだろうか?
「っは!神剣と言っても、大したことがないな!」
「そうかい?じゃあ、そのまま痺れてろ!」
雷切に、全力で雷を纏わせる。
瞬時に煙を上げるゼルエルの翼。
「ナバババババババ!」
「自分の体を武器にするのは良いけれど、相手の武器によっては致命的だぞそれ!」
「なナナナ……なめるなあああ!」
翼で雷切を力任せに振り払われてしまった。
煙まで出たというのに、まだまだ大きなダメージを負ったようには見えない。
けれど、少なくとも多少のダメージはあったようだ。
「へぇ?天使の血も、俺達と同じ赤い色なんだな?」
「我に血を流させるだと!?くぅ……!神剣さえ!神剣さえ無ければ!」
「もしもの話で現実逃避しないほうが良いぞ。眼の前の脅威である俺から目を逸らすなよ。できるだけ怖がらせてからねじ伏せたいんだから。二度と俺達に襲いかかってこようなんて発想が浮かばないようにしてやる!」
今度は、倶利伽羅剣で斬りつける。
ゼルエルは、今度も先ほどと同じように翼で受けたけれど、そのすさまじい熱に、毛が燃えるような嫌な匂いがした。
よし!やっぱり効いてる!倒せる!
「待てよ女神様ァ!息の根を止めてやるから!」
「く……くそ!いいタイミングだからと生贄もなしに召喚されてやったというのに、こんな所でこんなデタラメな奴に会ってしまうなんて!」
「お前にとってどういうタイミングが良いタイミングなのか知らないけれど、こっちはさっさと帰りたいんだ!どんどん切りつけていくぞ!」
二振りの神剣を可能な限りの速さでぶち込み続ける。
ゼルエルも何か反撃したいようだけれど、俺の攻撃によって、攻撃を差し込む余裕はないらしい。
教皇の部屋の中は無駄に広かったせいで、ゼルエルと俺は、室内を縦横無尽に走り回りながら、斬ることに集中していた。
「……く!しつこい!」
「そりゃしつこいよ。お前を潰しておかないと、どうなるかわからないんだからな!」
とはいえ、ずっと斬っているけれど、致命打のようなものはまったくない。
神域が解ける雰囲気もない。
まったく……骨が折れるとはこのことだな。
壁や天井を走りながら、ゼルエルに剣を振り続けていた。
神剣やスーツで肉体性能が超飛躍的に上がっているというのに、逃げ出したゼルエルに攻撃を当てる余裕がなかなかなく、ほぼ追いかけっこの様相を呈してきた。
しかし、10分もすると、何故かゼルエルの動きがジワジワと遅くなってきている気がする。
最初は気のせいかと思ったけれど、どうもそうではないようで……。
「何故だ!?我の神の力が、どんどん漏れていく!」
ゼルエルが、なんだか焦り始めた。
神の力が漏れるってどんな状況なんだろうか……。
「うお!?壁が壊れた!?」
神域化され壊れないはずの教皇の部屋の壁が、俺がぶつかっただけでヒビが入った。
『ピガーピ!』
壁にヒビが入ってすぐ、イチゴが腹からロール紙を出し始めた。
それをソフィアさんが伝えてくれた。
「大試よ!ファム達の影響で、世界中からゼルヘルへと流れ込んでいた信仰パワーが、どんどん薄れていっているそうじゃ!」
神の力を打ち消すって、どんなLIVE配信したんだろうかあの2人……。
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