第262話
「止まれきさっ」
「うごくなあ!?」
「おや?観光の方ですか?順路はあちらですよ」
「ここから先には行かせなああん!?」
「キミも教会に入信しないか!?え?しない?そこをなんとヘブッ!?」
なんなんだこの大聖堂は!?
武器を持った聖騎士みたいなのがチョイチョイいると思えば、無害そうな神官っぽいのもそこそこいて、かと思えばムチ持っている上にシスター服のおばさんまでいたぞ!?
そして1分に1回くらいのペースで入信を勧められる!
あーくそ!とりあえず無害そうな奴はこっちもにこやかにスルーしてるけど、流石にそろそろ鬱陶しいな!
せめて美人シスターがワラワラと向かってくるとかなら、まだこっちのやる気も沸いてくるけれど、ビックリするくらい若い女は出てこない!
若い男も今思い出すとあまり見ていない!
あのイケメンたちはどこからやってきたんだ!?
若くてまだまだ体力のある聖騎士の上澄みがあのイケメンどもじゃなかったのか!?
いや、敵がイケメンロン毛だらけだったら、それはそれで不愉快だけれども!
道案内のイケメンを引き摺って走っているけれど、コイツもそろそろ痛みに慣れてきたのか反応が無くなって来たな。
まあ流石に走る速度もそこそこ早くて、床についている部分が削れ続けていればこうもなるか。
道案内すらできなくなった坊主頭のイケメンなんて邪魔だし、死なない程度にポーション適当にかけて投げ捨てておくか。
「かみよ……どうかじひを……」
「女子供にすら慈悲を与えなかったお前らに慈悲なんて齎されるわけないだろ?」
「ああ……あああああ……あっ」
知らんけどな。
教会の崇める神に慈悲が存在するのかどうかも知らん。
まだこっくりさんの方が詳しいわ。
そもそも、教会の建物に必ずあるあの女神像、絶対リスティ様じゃねーだろ?
だって翼あるもん。
天使って言われた方がまだわかるデザイン。
あの慈愛に満ちた表情もいただけない。
本物は、最近もう少しヤサグレているし、もっと美人だった。
ストレス溜まっている感じだったぞ。
……今度オデンでも作って日本酒と一緒に持って行こうかな?
委員長の店でそろそろ秋用の商品も出てくるかもだし、次の休みにでも覗いてみるか。
次の休み、いつかなぁ……。
通路を走っていると、金と銀で彩られたエレベーターに辿り着いた。
まだ元気なうちにイケメンから聞き出した情報によると、これを使えば、あのデカい塔のてっぺんにある教皇の部屋へ行けるそうだ。
他に行く手段は無いとも言っていた。
地震や家事でも起きたらどうすんの?脱出できないよ?
って思ったけれど、まあフィクションを元にしているんだし、宗教関係の施設だって言うなら、そういうちょっとアレな構造があってもおかしくはないのかもしれない。
俺はそんな所に居たくないけれど。
とりあえず、エレベーターの上にいくボタンを押してみると、エレベーター自体はやってきてくれたみたいだ。
だけれど、扉を開ける段階になって、パスワードを要求された。
しかも、そのパスワードは、チェスの駒を移動することで解く方式らしい。
誰だこんなクソな仕組み作ったの。
「まあ、当然ロックかかってるわな」
「じゃろうなぁ」
『ピガッ!』
イチゴのマジックハンドが伸び、エレベーターのコンソールに触れると、すぐにエレベーターの扉が開いた。
「……ロック、解除されたな」
「……されたのう」
『ピガガっ!』
秒で突破されたセキュリティーを潜り、エレベーターへと乗り込む。
一番上の階のボタンを押すと、非常に滑らかに登り始めるエレベーター。
金かかってるなぁこれ。
どんだけ暴利貪ってんだ?
センスがどれもこれも成金な感じだし、印象悪いわぁ……。
「ファムとアレクシアは、地下に捕らえられている人たち開放できましたかね?」
「どうじゃろうなぁ?確かめ様がないしわからんのう」
「アイとピリカに魔改造されたスマホ渡しちゃったからなぁ……」
大聖堂に突入する前に、あらかじめファムたちにはある指示を出していた。
もし万が一俺たちが別行動する事になって、ファムたちが誰かを救出だとか、何かの物品を確保に動く場合、証拠を残すために、ファムには俺のスマホで一部始終をネット配信するようにと。
あのスマホ、地下に居ても電波がビンビンだから、多分この大聖堂の中でも余裕で配信できるでしょってことでだ。
多分、普通のスマホで同じことはできないだろう。
そんな電波が簡単に飛んでくるわかりやすい場所に、後ろ暗い物置いておくわけないし……。
後ろ暗いと思っていなければあるかもだけれど。
少し待っていると、エレベーターの動きが止まった。
それと同時に、扉が開く。
その先には、大理石で作られたこれまた成金趣味な短い廊下があり、その先に扉が見える。
金色のだ。
頭おかしいだろ……。
「この国の教会って、金あるんですね」
「いつの世も宗教が腐敗すると歯止めが効かんからのう」
『ピガガー……』
多少ウンザリしながら扉に近づくと、徐にイチゴが扉に触れた。
すると、扉の表面に着いていた金箔と思われるキラキラが、一瞬で剥離してイチゴの無限収納へと入って行った。
……うん!何も見てなかったけれどなんだかちょっとこの扉のデザインが良くなった気がする!
「じゃあ行きますか」
「そうじゃな。さっさと手脚捥いで連れ帰って警察につきだしたいのう」
「他国の法皇って、法的に逮捕ってされるんですかね?」
「外交官ではないしされるんじゃないかのう?まあ、それに照らし合わせるなら、ワシらもかなり危ないがのう」
そんな事はないでーす。
僕らは、ただの報復で来てるだけでーす。
悪いのは法皇くんでーす。
俺達は、ノックも無しに扉をけ破った。
「な!?なんだ貴様らは!?」
中には、豪華そうな服に身を包んだ爺さんがいた。
多分、コイツが法皇なんだろう。
「ただの観光客ですよ」
「観光じゃ」
『ピガッガ』
「ふざけているのか!?」
真面目だよ。
この施設の人間の半分は騙せたもん。
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