第259話
速いだけの踏み込み。
それだけで十分だ。
こいつらは、自分より格段に弱い相手としか戦ってきていないのが動きからわかる。
レベル上げのために魔獣を狩るようなことも大してしてきていないんだろう。
動きに無駄が多すぎる。
一応罠の可能性も考えて様子を見ていたけれど、どうやら素でこれのようだ。
……ロン毛と戦ったときから考えていたことがある。
こいつらは、レベルを上げるために魔獣と戦っていたとしたら、明らかに戦闘センスがなさすぎる。
重心の移動も、目線の動きも、まるで素人みたいだ。
それでも、身体能力は、この世界の人間として考えてもかなりのものだ。
まあ、100レベルに到達している俺達みたいなのを基準にしなければだけれど。
どうしてそんなことになるのか?
普通にレベル上げしている人達と違うのはなにか?
それは、コイツらが人を殺しまくっているらしいことだ。
つまり、人間を倒すと、魔物を倒すよりも多くの経験値が稼げるんじゃないだろうか?
それも、倒す人間の強さにあまり関係なくだ。
そうじゃなければ、ここまでレベルに不釣り合いな戦力になるとは思えない。
メタ的なことを言うなら、裏切り者の人間を中ボスとかに据えた場合、経験値がモリッと入るようにしたのが、人間自体が倒すと経験値が高いって事でこの世界では再現されているんだろう。
自分でそれを試すことは、未だにできていないし、したいとも思っていないけれど、こいつらは実際に人間を殺しまくってレベル上げをしてきたんじゃないだろうか?
あくまで予想だけれど、まともに戦闘していたら、こんな油断だらけの間抜け面で、そのイケメンフェイスに木刀をぶち込まれることもなかっただろうに。
先頭に居たリーダーっぽい雰囲気のイケメンの顔面が、木刀で歪む感触が手に伝わる。
不快だ。
そのままの勢いで、リーダーの後ろにいた緑髪のイケメンを掴む。
幸いというか、このイケメンたちには、例外なく頭に掴みやすい取っ手がついているため、非常に持ちやすい。
ブチブチと髪が抜ける感触がする。
不快だ。
髪の毛を鎖代わりにして、フレイルかモーニングスターのように振り回す。
近くにいた水色髪のショタ声弟キャラ枠っぽいイケメンに叩きつける。
どこかの骨が砕けた感触が、手に持つ武器から手に伝わってくる。
不快だ。
勢いをなくさないようにしながらイケメンウェポンからタイミングよく手を話し、後ろにいたメガネイケメンとポニテイケメンに一遍にぶつける。
当たりどころが悪かったのか、2人は口から胃の内容物を逆流させながら跳ね飛ばされた。
血混じりの吐瀉物の臭いがキツイ。
不快だ。
この段階になってやっと反応を始めたイケメンたち。
口汚くこちらを罵ろうとしている赤毛イケメンの喉を木刀の先端で潰す。
赤毛イケメンの口から、肉が爆ぜる音がする。
不快だ。
紫イケメンが、突然の俺の攻勢による驚きから復帰し、抜刀からの反撃をしようとしているのが見えた。
だから、手の指を木刀で叩き潰してから、顔面に蹴りを入れておく。
歯が折れたのか、口から血と白いものが吹き出された。
不快だ。
残りのイケメンたち4人が、俺を取り囲むようにそれぞれ抜刀して切りかかってくる。
わざわざ相手に近寄る必要が無くなってしまったので、こちらとしては手間が省けてありがたい。
右手に持つ木刀で、銀髪のイケメンとピンク髪のイケメンの顎を砕いた。
左手に持つ木刀で、サラサラ金髪イケメンの武器ごと手を潰し、オレンジ髪イケメンの肋骨を叩き折る。
気がつけば、イケメンたちが呻くだけだけの場所になっていた。
「おー、中々早かったのう」
『ピッガガー』
ソフィアさんが、閉じ込めるための結界を解除する。
それを見て、戦いの終わりを感じたらしいイチゴが、バリカンを持ちながらイケメンたちに近づく。
「ぎあああ!?」
「お?まだ声出せたか。じゃあ、今のうちに指もらうぞ」
「な!?貴様……ああああああああああ!!」
ロン毛相手にそうしたように、このイケメンどもの指も潰していく。
一人の例外もなくだ。
二度と剣を振るうことも、ナイフを投げることもさせない。
もっとも、首を狩られるよりはマシだろ?
俺としても、お前達なんか殺したくないし。
何より、多少の経験値なんかのために、人を殺すような真似はしたくない。
……まあ、こいつらが死んだ所で、別に何も感じないかも知れないけれど……。
数分で、そこらに横たわるイケメンたちは、全員頭皮をグズグズ状態の坊主になっていた。
『ビビガ!』
「おつかれイチゴ。いいバリカンさばきだったぞ」
『ガガッピ!』
教会の最大戦力のはずだけれど、13使徒とやらはほぼ全員片付いた。
残っているのは、裏切り者の女性だけのはずだけど、そっちはもう既にリンチを受けて戦闘力は無さそうだし、アレクシアたちに任せよう。
俺達は、このまま進むことにした。
「教皇とやらも坊主にするぞ。頭皮をバリカンで耕すんだ」
「教皇って坊さんじゃないんかのう?」
「お坊さんの定義がわからんけど、多分頭を丸めるような殊勝な心がけなんて無いだろうさ」
『ピピガ!!』
イチゴが、血と錆に塗れたバリカンを掲げ、やる気をアピールしてくる。
ホラーかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます