第257話
「なんだって!?観光!?そりゃいい!楽しんでいってくれ!」
「まぁ観光ですって!?是非お土産も買っていってくださいな!クッキーとチョコよ!」
「純粋な観光客なんていつぶりだろう!?この大聖堂はすごいだろう!?他に観光名所はないんだけど……」
「そのロボットカッコいいね!日本製かい!?」
何故かこの聖堂にいる人たちは、俺達が観光客だというと大喜びする。
今のところ、何の障害もなく敵の本拠地の中を歩き回っているわけだが、いいのかこれで?
そりゃ邪魔をするやつは容赦なく排除するつもりで来たよ?
だけど、大歓迎されるのは計算外だ。
それに、仮にも教会の総本山を自称する施設にしては、巡礼者っていうのか?
やってきている人が全然居ないんだよなぁ。
たまに見るのも、恐らくここに努めているであろう人たちか、もしくは何処かからやってきたらしい協会信者っぽい服装の人たちだけだ。
前世の外国の大聖堂とか、大きな寺なんかは、その宗教の信者じゃなくても観光にやってくる人たち多かった記憶があるんだけどなぁ……。
中学の修学旅行先が奈良で、大半のクラスメイトが文句を言っていたのを覚えている。
でも、あの辺りで神社仏閣って楽しいんだぞ?
ちょっと調べると平気で国宝出てくるデタラメさがワクワクするし。
この世界でも俺が出荷していた木……というかトレントは、その太さと頑丈さから、デカい神社仏閣を始めとした木造建築用に大人気だったと会長からも聞いているし、会長の実家にも実際に客はいっぱい来ていた。
にも関わらず、この大聖堂にそういった客は見られない。
成金趣味丸出しの悪趣味な建物ではあったけれど、それでもその迫力は中々のものだし、見に来たがる人はいそうなもんだけれどな……。
大仏なんて、例え歴史が全く無く、材質がコンクリートだとしても、デカいってだけで見に来る人はいるのに……。
中にエレベータとかあってビックリすんだ。
「なんでこんなに人気ないのかね?」
「いや、聖女が実際に今いて、そっちが大聖堂まで作ったなら、普通そっち行っちゃうんじゃないかにゃ?」
「噂聞く限り、割と好き勝手やって嫌われてるみたいですしねこの国、というかここの教会」
「粛清用の戦力まで堂々と保持しとる上に、肝心の聖女がおらん場所に来る奴はそうそうおらんじゃろ。聖女が生まれた家の場所にこの大聖堂は建っとるらしいぞ。つまり、聖女の生家を潰して作ったのがこの建物じゃ。観光パンフを見る限り、移築とかもしとらんらしいしのう……」
俺達は、仮に逆賊扱いされたとしても跳ね除ける戦力があるからこそここに来ちゃってるけど、そう言われると確かにここは怖い場所かも知れない。
背教者だの異教徒だのを認定されたら、この宗教が最上位に来る国ではまともな司法の場にも出られないかも知れない。
よっぽど極まった教会信者でもないと、そりゃ来たくないわなぁ……。
「観光……ちゃんとどこかに行きたいなぁ……。温泉入って、不可解なほどチャンネル数の少ないテレビを見ながら部屋でジュース飲んで、夜中に寝れなくて窓際の謎スペースから外を眺めるような感じの旅行したいわ」
「謎スペースってなんです?」
「テーブルと椅子が置いてある小さい部屋みたいな場所だ」
「あー、大試さんがたまに言ってるアレですか」
「アレは良いものじゃが、ワシはそこまで理解できんのよな。広い部屋と広いバルコニーのほうが良いのう」
「ニャーはわかるにゃ。あれこそビールを飲むためのスペースニャ」
ビールは知らん。
俺は、普段だったら売ってない不思議なジュースを自販機で買って飲むんだ。
つぶつぶが入ってるみかんジュースとか。
四国に行った時は、そこそこ旅行っぽくて面白かったけれど、あれはあくまで仕事だったからなぁ。
完全なプライベートで旅行したいんだ。
京都も結局堪能するにはいたらなかったし……。
そして休みが欲しい。
切実に。
「旅行するならどんなところに行きたい?」
「南の海が良いです!」
「ご飯が美味しい所がいいにゃ」
「地酒を楽しめる施設に行きたいのう!」
いいねー、地酒の良さはまだわからないけれど、皆で行きたいねー。
「ふっ!女連れで旅行の相談とはいい気なものだな!この人類の裏切り者め!」
突然通路の先からナイフが飛んできたので、咄嗟に木刀で叩き落とす。
銀色で十字架のような形のこれは、あのロン毛が使っていたのと同じものに見える。
「ほう?あのタイミングで防ぐとは、中々やるではないか!」
「だから言ったでじょ?彼強いよ」
「まったく、面倒なことだな……」
通路の先から、イケメンたちが歩いてきた。
乙女ゲーに出てきそうな顔に、うざったい髪型のやつらだけど、コイツらは確かWebページに乗っていたあれでは?
最凶の13人とかいう……。
「しかたない、不意打ちが決まらなかった以上、我ら聖13使徒の総力を以て正面から戦ってやろう」
あのロン毛も確かそんな奴らの1人だったはずだし、教会のメイン戦力は、どいつもこいつもこんななのか……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます