第255話

「許してやれって!悪いのはいきなり現れた俺達だから!」

『ピッガ!』

「だって!じゃないんだよ!大体あの戦闘機の攻撃でこっちに有効なもん何も無いだろ!ミサイルだってこっちには追いつけねぇわ!」

『ピッガン!』

「えっへん!じゃねぇよ!」


 操縦席でカタカタしているイチゴに注意するけれど、効いている気がしない。

 まあ、確かにレーダー照射された時点で宣戦布告に等しいけれど、正体不明の飛行物体見つけたらそりゃロックオンしちゃうって。

 だって、明らかに今の人類の技術レベル超えてるもん。

 古代遺跡を守る神代のゴーレムとかその手の類だよ。

 まあ、これでもまだ性能をフルで使ってるわけじゃないらしいけど……。

 だって、レーダーに映るようにように飛んでるんだもん。

 本気になれば、風圧以外の全ての痕跡を残さずに飛べるらしいからなぁ。

 風圧だけはどうしようもなかったと恥ずかしがりながら言われたけれど、それ以外の部分がすごすぎて問題にならんだろうなぁとしか思えない。

 ただ、まさかこの世界で飛行機が飛んでいるとは思っていなかったから油断していたけれど、実際に飛んでみたらアメリカ上空で前世の世界にあったような戦闘機が編隊飛行してんだもん。

 マッハ15以上で飛んでる状態の風圧で近くを通れば大変なことになりそうだし焦った。

 ものすごく遠くからこちらのレーダーで見つけたから取り急ぎ日本経由してアメリカに連絡取ってもらったんだけれど、あんまり役には立たなかったらしい。

 イチゴももう少し離れて飛んでくれればいいのに、逆にウキウキしながら掠めるように飛ぶんだもんなぁ……。

 流石は、かつて古代人たちを混乱のドン底に追いやったヤベーAIだ。


「にしても、まさか今の人類が飛行機で堂々と飛び回ってるとはなぁ……。流石はアメリカといったところかね?」

「空の魔物を物量で殲滅し続けとるようじゃな。先程の機体も一役を買っとるんじゃろ」

「地面に足がついてないのは落ち着きませんねぇ……」

「暖房がキツイにゃ。少し温度下げてほしいニャ鉄クズ」

『ピガガガガ!!!』

「うわ!熱風が吹き付けてきたにゃ!」


 マッハ15で飛んでいても、機体内部は至って快適だ。

 加速する時も何も感じなかった。

 実は、慣性制御というヤベー機能が働いているから、どんな変態起動を描いたところで、機体内部でお茶会ができる程だ。

 ……ほんのちょっとだけ、強力なGに耐えるあの感じをやってみたかった気もするけれど、身体能力が上がっている俺がそんな耐え方しなきゃいけないGだと、他の乗員は皆潰れるかもしれんな……。


「なぁイチゴ、この機体って最高速度はどのくらいなんだ?」

『ピピ?ガガッピ』


 イチゴの腹から紙が吐き出される。

 そこには、『周囲の安全のためにマッハ15でとめているだけで、加速する距離さえあれば理論上無限』と書かれていた。

 見なかったことにしよう。


「さて、作戦のおさらいだ。目標空域まで到達したら皆で飛び降りて、イチゴは飛行機を収納。その後ファムのテレポートで目標がいる大きい教会付近に着地。そっからは可能な限り速やかに教皇を確保して離脱。それを邪魔する奴らは、容赦なく排除する。この際、相手の生命は重視しない。そんな感じで」

「ガバガバ計画だニャー。潜入まではともかく、脱出方法がなんにも計画されてない辺りすごいにゃ」

「ファムのテレポートに期待している」

「やっぱりニャー……」

「ある程度開けた所に出られたら、再度イチゴが飛行機を出してもらって、それで帰るぞ」


 正直、相手の国の事をそこまで調べているわけでもないから、きっちり計画を立てたところであんまり意味がないんだよなぁ。

 強いて言うなら、教皇には直属の戦闘部隊がいて、聖騎士の中でも最凶の13人がそこに所属しているってことは知っている。

 ネットに乗ってた!

 このご時世に、背景が水色一色のウェブページだったけれど、あれがどうやら公式らしいんだよな。

 信者いっぱいいるんだから、誰か1人くらいセンス古いぞって教えてやれよ!


『ピガガ!ピピッガガ!』

「ん?……え、あと10分で到着!?早すぎるだろ……」


 コンコルドも真っ青な空の旅も終わりが近づいてきた。

 機内食もキャビンアテンダントも存在しないけれど、飛行機ってだけで中々興奮したなぁ。

 そして、これから人生始めてのスカイダイビングだ!


『ガガガッピ!』

「ん?……保存食?なんで?」

『ピガッピガガッピ!』

「当機をご利用いただきありがとうございました、またのご利用をお待ちしております?どうやらキャビンアテンダントはいたようだな……」

「いや、もう利用せずに済むならそれに越したことはないんですけれど……?」

「この飛行機に乗るってことは、その時点で面倒事の雰囲気が濃厚になるからにゃ」

「つまり最高の乗り物じゃな!」


 ヴェルネスト聖国へお客様総勢4名と1機。

 招かれざる客ですので、歓迎は無用です。



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