第254話
イーグル1:知っての通り、人類にとって空の上は危険地帯だ。飛行する魔物は多く、そして人類に翼はない。ワイバーンなどに騎乗して大空を舞う者もいると聞くが、あくまでそれは例外中の例外といっていい。空は、依然として魔物の領域だ。……そう、我々アメリカ以外ではな!物量で飛行型の魔物を殲滅した後は、湧き次第撃滅する体制を整えたからこそのこの支配力に感謝して飛べよお前たち!
イーグル2:隊長またですか?
イーグル3:飛行任務の度に言いますよね
イーグル1:はは!まあそう言うな!どうもこうして大空を飛んでいると、語りたくなってしまうんだ!
イーグル4:まあこれからは安心してくださいよ!俺がいれば飛行タイプの魔物なんて殲滅してみせますから!
イーグル2:お?言うじゃないか新兵!今回はお前のための飛行訓練だっていうのによ!
イーグル3:まだ本当の恐怖を味わっていないから言えるのよ
イーグル4:恐怖?はっ!この※機密情報※に乗っていれば、どんな魔物だって置き去りにできますよ!
イーグル1:……懐かしいな、タリウス、ピクシー?
イーグル2:いやぁ……ねぇ?
イーグル3:黒歴史ですね……
イーグル4:どうしたんですか2人共?
イーグル1:この2人も、今のお前と同じことを言っていたんだよ
イーグル2:昔の話ですぜ隊長!
イーグル3:そうですよ!私はもうそんな事思っていません!
イーグル4:え?何故です?
イーグル1:俺達は皆、一度は強大な魔物を見ている。確かに、データが揃っているような魔物であれば、そうそう※機密情報※が負けることはないだろう。だが、この世界には人知の及ばない規格外の存在が幾らでもいる
イーグル4:規格外?それはどのような相手ですか?
イーグル2:俺が見たのは、真っ黒な翼の天使だったな!コクピットに手をつけてこっちを覗き込んでいた。顔は綺麗だったが、その時の俺は限界速度で急旋回中だったんだぜ?流石に頭が真っ白になった
イーグル3:私の時は、サメだったわね。私の機体と速度を揃えて飛んでいたわ
イーグル4:なんですかそれ……?
イーグル3:でも、隊長が見た奴はもっとすごいわよ?
イーグル2:そうそう!言ってやってくださいよ隊長!
イーグル1:……そうだな、折角だから教えてやるか。あれは、俺が初めて超音速飛行をした時のことだ。今はもう引退してしまった先輩について訓練で飛んでいたんだが、空の状態が良かったので、唐突に超音速飛行訓練へと移行したんだ。音を超えた瞬間に感じる衝撃が体に響き、人の枠を超えた速度に興奮していた。そんな時、奴は現れたんだ
イーグル4:奴?どんな魔物ですか?
イーグル1:ドラゴンだよ
イーグル4:ドラゴン!?あの伝説上の!?小型のワイバーンではなく!?
イーグル1:そうだ。あのドラゴンだよ。見た目はイメージと少し違ったがな
イーグル4:どんなやつだったんですか!?
イーグル1:羽毛が生えていたな。ドラゴンはトカゲに翼が生えているものだと思っていたんだが、全体に羽毛が生え、そして殆ど羽ばたかずに飛行していた。まるで、何か浮き上がる魔術を使っているかのようだった。いや、実際に使っていたのかも知れないが……
イーグル4:そ、それで!その後どうなったんですか!?
イーグル1:話しかけてきたぞ
イーグル4:話し!?ドラゴンがですか!?
イーグル1:ああ、ドラゴンがだ。しかも、音ではなく、頭に直接響くような声だった
イーグル4:なんて言ってたんですか!?
イーグル1:……だ
イーグル4:はい?ごめんなさい、聞こえませんでした
イーグル2:ぷっくく!
イーグル3:笑ったらダメよタリウス……!ふふっ!
イーグル4:なんなんすか!?
イーグル1:「デザインはともかく、色がダサい」だ
イーグル4:………………………はぁ?
イーグル2:まあ、そうなるよな!
イーグル3:私達も最初そうなったもの
イーグル1:だが、事実なんだよなぁ。結局その後何もせず魔族の領域の方へと戻っていったが、速度は確実にマッハ15は出ていた。センサーの精度が悪く、それ以上判定できなかっただけなんだがな
イーグル4:……ヤバいですね
イーグル2:まあ、お前もそのうちそういう相手に会っちまうこともあるだろうさ。焦らず真面目に飛んでりゃいい。雛鳥の仕事は、無事に滑走路まで戻ることだからな!
イーグル3:そうよ。だから、乗ってる機体がいくら高性能だからって、油断してんじゃないわよ!
イーグル4:は、ハイ!
イーグル1:悪いな新兵、コイツら、後輩ができたのが嬉しくて先輩ぶってんだよ
イーグル3:違いますよ!私は先輩として当然のアドバイスを!
イーグル2:それが先輩ぶってるってんだろ?俺も人のことはいえないがな!
イーグル3:くっ!
イーグル1:さぁ!無駄話はそこまでだ!今日の空はまたとないほどの快晴!予定通り超音速訓練を行うぞ!
イーグル2:イーグル2了解っと!
イーグル3:イーグル3了解!
イーグル4:イーグル4了解!
※アラーム音
HQ:ヘッドクォーターよりイーグル1、ヘッドクォーターよりイーグル1、緊急の連絡がある
イーグル1:緊急だと?何があった!?魔物か!?
HQ:いや、戦闘が必要な相手ではない。今しがた日本から連絡があってな、もうすぐそちらの近くを流星が通るそうだから、気をつけろとのことだ
イーグル1:流星?何の話だ?
HQ:貴官が知る必要はない。ただ黙って見送れば良い。それが貴官のためだ
イーグル1:……イーグル1了解。聞いたなお前たち!なんだか知らんが、よくわからんものが通り過ぎるらしい。俺達は俺達で、訓練を続けるぞ!
イーグル2:イーグル2了解!楽しそうだが、火傷しそうな気配がしやがる
イーグル3:イーグル3了解!触らぬ神になんとやらよ
イーグル4:イーグル4りょうか……広域レーダーに感あり!
イーグル1:何?……例の流星とやらか?
イーグル4:わかりません!ただ、速度が!
イーグル2:おいおいおい!マッハ15を超えているぞ!
イーグル3:肉眼では確認できていないわ!……いえ!アレが!?一瞬で通り過ぎ……キャアアアアアア!
イーグル1:なんて風圧だ!?全機コントロールを保つことを優先しろ!
イーグル4:なんだこいつ!?なんだコイツ!!!!!
※レーダーロック音
イーグル1:おい!やめろイーグル4!手を出すな!
イーグル4:消えろ!消えろおおお!!!
イーグル2:まずい!こいつ錯乱している!
イーグル3:マイルズ!おい!新兵!落ち着け!
イーグル1:いや……だがこちらの武装であの速度の物体に対して戦える物はない。あちらが見逃してくれれば……
※アラーム音
イーグル1:くっ!アンノウンからレーダー照射を受けている!そう上手くも行かないか!
イーグル2:さっきのやつか!?一体どこから!
イーグル3:レーダーに反応なし!肉眼でも確認できません!
イーグル4:あああああああ!わあああああああ!!!!
イーグル1:おい!イーグル4!……しかたない、イーグル1よりHQ!イーグル4へ鎮静剤の投与を頼む!
HQ:ヘッドクォーター了解、イーグル4のパイロットスーツより鎮静剤の投与を開始
イーグル4:がっ!?ああ!?……あ?
イーグル1:落ち着いたか!?
イーグル4:……あぁ、はい……
イーグル1:なら今すぐ流星へのレーダー照射をやめろ!死にたいのか!
イーグル4:……了解
HQ:ヘッドクォーターよりイーグル1、状況はどうなっている?
イーグル1:こちらイーグル1、依然としてレーダー照射を受けているが、攻撃はされていない。どうやら、警告のつもりらしい。だが、恐らく次はないだろうな……
HQ:ヘッドクォーター了解。イーグル隊は、訓練を切り上げて今すぐ帰還せよ。繰り返す。イーグル隊は、訓練を切り上げて今すぐ帰還せよ
イーグル1:イーグル1了解!全機RTB!
イーグル2:イーグル2了解!
イーグル3:イーグル3りょうか……隊長!後ろにアンノウンがいます!
イーグル1:なんだと!?いつのまに!?
イーグル3:たった今我々の編隊の中央にいきなり現れました!
イーグル2:なんだこの兵器技術は!?日本の秘密兵器か!?
イーグル1:全機!絶対に手を出すな!今度こそ本当に死ぬぞ!明らかに技術レベルが違う!
イーグル3:……何よこれ……アンノウンより光信号が!これは……モールス信号!?
イーグル1:通訳しろ!
イーグル3:「ますたーのいこうでみのがしてやる にどめはない」……「マスターの意向で見逃してやる!二度目はない!」
イーグル2:どうやらやっこさん、ちゃんと会話ができる存在らしいな!
イーグル1:……前を譲ってやれ。絶対に追うなよ
イーグル2:追いませんよ!追えませんし!
イーグル3:イーグル3了解。新兵!いいわね!
イーグル4:イーグル4了解……
イーグル1:何だったんだ今のは?魔獣ではなかったが……。飛行機だとしても、明らかに今の人類の技術ではなかった……
HQ:ヘッドクォーターよりイーグル隊全機へ。これよりお前達には箝口令を敷く。今回の出来事は、全て最高機密情報扱いだ。基地に戻り次第、しばらくは隔離されるだろう
イーグル1:イーグル1了解。……やれやれ、とんだ訓練任務になったな
イーグル2:生きてただけ儲けもんっすよ
イーグル3:……あちらのあの行動、私達を殲滅しようと思えば簡単にできたんでしょうね
イーグル4:あれが、きかくがいのそんざい……
イーグル1:お前は運がいいぞ新兵。あの手の化け物に出会って生き残っているんだからな
イーグル2:俺達のようにな!
イーグル3:寿命が半分くらいになった気分よ……
イーグル4:ああ……神様……女神様……
イーグル1:神がいるとしたら、アレを作ったのも神だろう。そんな者に祈ってもしょうがないと思うがな……
ある航空部隊の通信記録より抜粋
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