第251話
「ぐうぅ……!貴様!貴様ぁ!」
「まだまだ元気だなぁ……」
既に坊主頭になったロン毛兄ちゃん。
心へのダメージは、見てわかる程度にかなりのものだったようだけれど、それでもまだやる気マンマンといったところだ。
流石に面倒になってきたな……。
「ソフィアさん、なんか手軽に口を割る方法ありませんかね?もしくは、心を折る感じの魔術とか」
「あるぞ?だがまぁ……精神系の魔術ではなく、神経系なんじゃが……」
「あー……そういうのですか……」
エグいタイプの技術なんだなぁ……。
横で聞いていたロン毛も少し顔が青ざめている。
若干1名わかっていない奴もいるけど……。
「どういうことです?」
「つまり、めっちゃ痛くしたりするやつってことだろ。死んだほうがマシレベルで」
「あー……」
同じエルフにまでドン引きされるエグい魔術なんだろうという俺達の予想は、ソフィアさんが目を晒したことで確信へと変わった。
「やっちゃいましょう!」
「大試はたまに思い切り良すぎてワシでもビビるのう……やるが!」
ソフィアさんがパチンと指を鳴らす。
すると、坊主毛の表情が一瞬驚愕に染まり、瞬時に苦痛へと変わった。
「ぎゃああああああああああ!!!!!ああああああ!ひゃああああああああ!?!!!」
先程までの横柄でニヒルなイケメンフェイスが、歪みに歪んで限界まで引きつっている。
信仰も信念も、流石にこの苦痛の前には無理だろうな……。
そう思える程度には痛そう。
通風に苦しんでいるオッサンが、タンスの角に足をぶつけたような壮絶な表情だもん。
5分後、そこに居たのは、涙と涎を垂れ流しながら、許しを請う哀れな男だった。
アレクシアがドン引きしながらソフィアさんを見て、ソフィアさんは壁の染みを見つめている。
エルフの歴史は、かなり血腥いものだというけれど、こんな感じの技術がいっぱいなんだろうか?
超やべー。
「はなす……なんでもはなす……たすけて……」
「あーそう……。じゃあ、誰の依頼で俺を襲いに来たんだ?」
「法皇様だ……」
「法皇?法皇に俺等を攻撃する理由ってあったか?」
「貴様らの考えているまがい物の法皇様ではない……ヴェルネスト聖国の大聖堂に御わす本物の法皇様だ……」
法皇に本物とか偽物とかあるのか?
よくわからんが、ソイツは何とかしないといけないな。
……ところで、ヴェルネスト聖国って何?
「アレクシア、ヴェルネスト聖国って知ってるか?」
「私にそういう知識を求めるのはナンセンスというものです!」
こいつ……!
「じゃあソフィアさんは?」
「大昔に聖女が生まれた場所じゃなかったかのう?そこを勝手に神が祝福する土地と言ってふんぞり返っている奴らじゃろ?」
「教会を愚弄するのか!」
「ふむ?」
ソフィアさんが指を構える。
途端、ロン毛は顔を青くして助けを懇願する。
どんだけ痛いんだろうなぁアレ……。
所々そんなやり取りを挟みながら、ロン毛から話を聞き出したところによると、どうにもその何ちゃら聖国と言うのは、世界中の教会の総元締めだけど、総元締め足りえる理由が初代聖女が生まれた地だって理由しかなくて、日本で聖女が生まれて日本の教会が法皇まで作っちゃったもんだから、焦って聖羅を連れ去りたいんだけど、婚約者である俺に執着していると知ってまず俺を片付けに来たと。
ふーん、クソじゃん。
「俺はさ、宗教なんて他人に迷惑かけなければ自由だと思ってるんだけどさ、ここまで自分勝手で傲慢な事されたら、流石に許す気にもならんよな?」
「……おっしゃる通りです」
この数十分で随分従順になったな……。
「それに、お前の戦い方も気になった」
「私の戦い方ですか……?」
「そう。なんかさぁ、お前、人殺すの慣れてる感じだったよな?罪悪感とか全くなく、むしろ自慢げに殺しに来てたよな?今までどれだけ殺して来たんだ?」
俺からすると無駄な動きだらけの見せ技剣術って感じだったけれど、そこらの人々にとっては十分以上に脅威だと思う。
そんな奴が白昼堂々慣れた感じで殺しに来たんだ。
今までなにやらかして来たんだろうか。
「人数は覚えていない……。教皇様から指示を受ければ異端者として始末するのが私の使命だ……」
「そうか……」
よし、決めた。
「そのなんとか聖国の教会とか言うの、潰すしかないな」
「そういうのワシ得意じゃ!」
「私は苦手なので留守番で……」
みんなで頑張ろうな!
「あ、忘れるところだった!せいっ!」
ロン毛の手の指を木刀で全て叩き潰す。
「ぎゃああ!?指が!私の指がぁ!?」
「まあ、剣士相手の対応としては当然じゃな。命があるだけ感謝するべきじゃろ」
「それよりオヤツ行きませんか?私おなかすいちゃいました」
「お!いいのう!」
流石にこの状況で食欲は湧かないなぁ俺……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます