第244話(また投稿ミスっていたので、ここから話数ズレます。すみません)

「誰が?」


「……大試さんが」


「誰を?」


「……アレクシアさんを」


「どうしろって?」


「……手籠めに……できれば男性……いえ、大試さんにしか興奮できない体にしてください」


「すごいこと頼んでくるな……」


「……実の姉から、お前の子供を産みたいとか、お前に子供を産ませたいと言われ続ければ、そうもなりますよ……」




 マイカの表情から、切実さが伝わってくる。


 いやさ?言いたい事はわかるよ?


 好きでもない奴からのアタックは、ディフェンスが間に合っていようがいまいが嫌だろうというのは想像が着く。


 だからってなぁ……。




「逆に聞くけど、男の俺が、どうやったら女が好きなアレクシアをどうこうできるんだ?力ずくでって話じゃないんだろ?」


「……流石に無理やりは……。でも、大試さんに頼る他に思い浮かばなくて……」


「だからってなぁ……」


「……それに、姉にとって、もっとも身近で信頼している男性は、間違いなく大試さんですし……」


「そりゃそうだろ。だって他の男とまともに相対してないもん」




 集団でいる時は、いつも俺を盾に男を躱し、単独の時には、気配を完全に断って親交を拒絶するスタイル。


 どこかのスパイか?


 いやどこかっていうか、エルフの集落のだけど。




「見た目は、間違いなく絶世の美女なんだから、そこらの男に引く手数多だろうに」


「……まず、私自身が大試さん以外とまともにお話できませんし、姉も男性とコミュニケーションをとることはほぼありませんから……」


「あぁ……まあそうか……」




 マイカはマイカでコミュ障だからな。


 俺と同レベルかそれ以上に他の奴らと一緒にいる所を見たことが無い。


 俺だって、聖羅たちがいなければ、前世同様クラスで孤立した孤高の狼を気取っていただろう。


 今思うとあれは怖い。


 孤高を気取っているのに、トイレ行きたくなったりすると、「犀果君って、トイレって言葉使うんだ……」とか言われそうで怖い。




 違うんです。


 ただ喋る勇気が無いだけなんです。


 休み時間に机に突っ伏して寝ているのも、別に周りの会話を盗み聞きしたいわけじゃなくて、周りの会話に参加することもできないから、自らシャットアウトしている風を装っているだけなんです。


 前世だったらそれでも気にならなかったけれど、流石に今、教室でそれをやるのはちょっとなぁ……。


 聖羅たちに振られたんじゃとか噂されそうで……。




 落ち着け!考えが後ろ向きになってる!大丈夫!俺は元気!俺は出来る子!


 ……何ができる?アレクシア1人垂らし込むこともできそうにないと諦めているのに?


 ……………………………………………………。




「……なんで俺なんて生きてるんだろう……」


「……あの、どうしていきなりそんな人生に絶望したような事を……?」


「いや、なんでもない……」




 ……………………………………………………。


 よし!頭の中を昨日の水着の記憶でリセットした!


 今日も頑張るぞ!




「アレクシアを俺に惚れさせるより、マイカをアレクシアと両想いにする方がまだ楽な気がしてきたわ」


「……私は、男性が好きなので」


「どんな男が好きなんだ?」


「……きっといつか、白馬の王子様が迎えに来てくれるんです」


「王子様……」




 王子様ねぇ……。


 俺の知ってる王子様に碌なのがいないから、その発想に納得も何もできないけども……。


 この国の王子は、どいつもこいつもかなりアレだからなぁ……。




 長男は、ゲーム本編でも大した活躍が無かった上に、この世界でも碌な事をせずに死亡。


 次男は、とても優秀だというのに、シスコンを患っていて台無し。


 三男は、ゲームではたゆまぬ努力でとても優秀だったらしいけど、この世界だと学校初日のパーティーで聖羅に手を出そうとしてボコボコに返り討ちにされたどうしようもない奴だった。




 貴方が求めているのは長男の王子様?


 それとも次男の王子様?


 ……正直なあなたには、両方の王子と、おまけに三男の王子も与えてあげましょう。




 絶対喜ばんなマイカは……。




「……でも、多分ですけれど、大試さんが誘えばデートくらいならいくらでもしてくれると思うんですよ」


「そうかなぁ?そもそも異性とのデート自体が割とハードル高い行為なんじゃないかって気もするけれど……」




 何はともあれ、マイカは優秀な魔眼を持っているから、将来的に我が開拓村へとリクルートする予定なので、力になれるならなるさ……。




「まあ、やれることはやってみるけど、あんまり期待しはしないでくれ。寿司を注文した客にビーフカレーを出すくらい無茶な行動になりそうだから」


「……はい。上手く行かなければ、犀果さんの横から離れない事で自衛したいと思います」




 虫よけスプレーみたいな扱いだな……。


 まあいいけどさ。


 俺の横から離れないって事は、その魔眼の力も俺の隣で使ってくれるってわけで。


 それはそれでラッキーだな。




「具体的には、俺とアレクシアがどういう関係になれば、マイカ的に合格なんだ?」


「……私に性的な興奮を覚えないようにして頂けるなら、後はお任せします」




 うん、それが難しいんだよな!


 宿題すすまないなぁ……。






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