第245話
善は急げ!
兵は拙速を尊ぶ!
というわけで、放課後になって早々に家へと帰ってきた。
目的は、この家が出来てからここに住み込み……いや、住み着いているグータラエルフと話をするためだ。
奴め……エルフの集落のために強くなろうと来たはずなのに、少なくとも引っ越してからは、ご飯食べたり、お菓子食べたり、俺のゲームをしたり、俺のマンガを読んだり、疲れて俺のベッドで寝ていたりと好き放題している。
俺は、「この世界にもゲームやマンガあるんだ!?」とスマホを買ったときのように衝動買いしたはいいけれど、結局時間がなくてまだ全然プレイできていないというのに!
何が腹立つって、見た目が良いからついつい許しちゃう俺の理性の欠如!
だって美人なんだもん!ゲームしてるだけで絵になるんだもん!
負け始めると、初めて会った時並みにぐちゃぐちゃの顔でえぐえぐしだすけど……。
さて、そんなアレクシアをなんとかしないといけないんだけど、正直ノーアイディア。
何の案も持っていないんだ。
だって、女性が好きな女性について、俺はあまりに無知だ。
百合とかそういうジャンルはあんまり知らないんだよなぁ……。
知っていたとしても、この状況で参考になるかは知らないけれど……。
仮にアレクシアとマイカがセーラー服で「マイカ……」「お姉様……」と言い合っていれば、その時点で既に絵画として完成した作品になりそうだなぁとは思うけれど、それは百合なのかレズなのかすら俺には判別できない。
それでも女と女系はまたマシだ。
男と男の話になると、もうネタ動画系の知識ばかりだし……。
俺としては、恋愛事は、俺にさえ迷惑がかからない範囲であれば好きにしろってスタンスだから。
性癖だって、周りに迷惑をかけないなら個人の自由だと思っている。
仕方ないから、もういっそのこと本人に聞いてみることにした。
もうね、難しいこと考えるのボク疲れちゃったの……。
「アレクシアさぁ、マイカに無理に迫ってるって聞いたんだけど?」
「はぅあ!?ちっ違いますよ!?いや確かに交配を申し込みましたけれど!違うんです!」
「交際を申し込むノリで交配を申し込むなよ……」
「だってだって!こんな気持ち初めてなんですよ!今までにも女性とお付き合いしたことは一応あるんです!でもそこまで深い仲になったことは無くてですね!なりたいとも中々思えなくて!そんな時に久しぶりに妹を……いえ、妹だと気がつくまではそこまででも無かったのですが!妹だと気がついてから見るともう天使に見えてですね!あああ!あの子の子どもを生みたい!あの子にも私の子どもを生んでほしい!そう思ってしまったのです!」
「ごめん、何が違うと言っているのかわからん」
わからん……わからんが、少しわかったこともある。
どうもアレクシアは、ある性癖があるようだ。
それも、かなり拗らせた類の……。
「アレクシアってさ、もしかしてシスコンなんじゃないか?」
「私が……シスコン……?」
え?自覚なし?
自分でそれに準ずること言ってただろ!?
「妹だから好きだって事……?そんな……でも確かに今まで付き合った人たちも自分より年下かそれっぽく見える人ばかり……えっ……まさか本当に……?」
アレクシア的にかなりの衝撃だったらしい。
マイカが妹だってわかった瞬間天使に見えてる時点でさぁ……。
ただ、その妹に子ども生んでほしいとか産ませてほしいって発想になるのは一線超えている気がしないでもない。
「大試さん……私は、何か異常なのでしょうか!?」
異常?
異常といえば異常だけれど、性癖なんて人それぞれだから、正常判定なんて出せるやつがどれだけいるのかも知らんな。
ドラゴンと自動車のカップリングに興奮する奴だっているらしいし……。
アレって元々は、「俺達このままだと規制だらけでこういうタイプのエッチな本しか許してもらえなくなるぞ!」ってネタで言われてただけだったのに、「いや、俺マジでいけるわ」って本物が湧いてきて大変なことになってるらしいから……。
「相手が嫌がってる訳だから、問題がない訳ではないだろうけれど、別に妹が好きだと感じてしまうだけならいいんじゃないか?」
「そ……そうでしょうか?」
「あくまで無理に手を出さなければな?」
「うっ……でも、このままだと自分を抑えられるか自信が無いんです!」
そんな事を力いっぱい言われてもな……。
「むしろ、大試さんはマイカを見て何も感じないんですか!?あの綺麗な瞳を見ても!?」
「じっくり見せてもらったことがあるわけでもないしなぁ……。エルフらしいから、美人なんだろうなとは思っているけどさ」
前髪で目をほとんど隠しちゃってるからなぁマイカ。
ちらっと見えるときもあるけれど、メカクレメガネっ子だなって印象しか見た目の印象はない。
むしろ、魔眼とかそっちのほうがマイカ自身への印象は強いかな?「
あとは、バスで酔って……いや止めておくか。
「アレクシア」
「な……なんでしょう?」
「俺は、お前がどんなフェチを持っていたとしてもいいと思う。相手に被害が出ないならな。なんだかんだで、俺はお前のことを気に入っているし、何が好きかなんてどうでもいいことで見捨てるつもりもない」
「お……おおお!大試さああああん!」
「その上で聞くぞ。アレクシアは、どうしたいんだ?」
「私が……どうしたいか……」
悩むアレクシア。
その顔をみて、まさか妹を孕ませたい気持ちをどうしたらいいかを悩んでいると思うやつは居ないだろう。
居たら頭ひっぱたいて正気にもどしてやらんといけない。
だけど、案外答えは早めに出たようだ。
アレクシアが、強い決意の篭った顔で俺を見つめる。
「私は!シスコンも妹フェチも卒業します!」
「真面目な話のはずなのに力が抜ける言葉だよな……」
でも、想像を絶する程の決意だと思うぞ!
性癖を卒業するってのはさ!
俺にはわかる!
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