第234話
「にしても、いちごは何でこんなとこに1人でいたんだ?自分で来たんだろ?」
『ピガガッ ピッピガガン』
「ほとぼりが冷めるまで人間がいない場所で隠れてようと思ったら、文明が滅んでた?スケールデカい逃亡劇だな……」
詳しい内容は、流石にピガガでは伝わらないため、出てくる紙に書かれている文章を只管読み上げ続ける。
それを続けて気が付いたけど、この紙何処から出てきてるんだ ?
もう相当な長さが出てるのに、一向に勢いが止まらない。
なんだ?
ファンタジー案件?
「紙を出す魔法使えるのか?」
『ピッピガピーガ』
「えーと……魔力を物質として定着させているだけだから数分で分解されて空気中に霧散する?超技術だな……」
魔法より高度な何かじゃなかろうか?
既に俺の頭で理解できる範疇を越えている。
相対性理論の方がまだ理解できそう。
……ごめん、やっぱ両方無理だわ。
「とりあえず、一緒に行くって事で良いよな?」
『ギピピ!』
「よし、じゃあイチゴ、持っていくものあったら準備してくれ。ドラゴン達にもある程度協力は取り付けたし、できるだけ早めにここを出たい。夏休みが開ける前には、家に帰りたいからな」
『ピピピッ』
恐らく敬礼のポーズだと思われる動きをして、さっきまで入っていた黒い箱の中に駆け込むイチゴ。
そこまで大きいわけでもないし、そうそう無茶な量の荷物を持ってくることも無いだろう……って思ってたんだけど、コイツが旧時代の遺物だってことを忘れていた。
「……これ、なんだ?」
『ピガピピ』
「飛行機……?これを持って行きたいのか……?ってか、そんなもんはいるスペースなかっただろ!?」
『ピピ!ピリリピピ!』
「箱の中の空間を歪ませて、無限のスペースが広がっている……?そういや、アイたちもスマホの中身をそんな感じにしてたな……」
『ピカピピ?』
「スマホ……あ、スマホ知らんか?持ち運べる通信装置だな」
『ピガー……ピッガリリピピ』
「通信するのに装置を持ち運ばないといけないなんて遅れた技術レベル……?イチゴの時代は、SFな世界だったんだなぁ……」
ファンタジーなゲームでAIなんていうサイエンスが幅を利かせるのもどうかと思わないでもないけれど、嫌いじゃないので俺は許す。
ロボだし。
完品だったらレトロなおもちゃコレクターに高値で買い取られそうなデザインに、疑似恋愛の相手として設計されたらしい女の子っぽいAIがぶち込まれているという歪な存在なんて、世界中どこを探しても他にないだろうなぁ。
アイが用意してくれる体にイチゴが移ったら、あのボディだけくれないかな?
部屋に飾りたい。
あれ?
でもそうなると、イチゴからしたら、自分の標本でも展示されているような気分になるんだろうか?
それはそれでアレかもしれないけれど、歴代の機械を展示する施設は、前世の世界でもこの世界でも割とメジャーだし、案外気にしないかも?
要相談だな。
「あ!連れて行くのは良いけど、昔みたいな大暴れはやめてくれよ?」
『ピガガ!』
「いい返事すぎて逆に不安になるけど、まあ良いや!信じるぞ!」
『ピッガガー!』
魔道具主体とはいえ、機械文明みたいになっているこの世界を滅ぼす可能性のある知性体を3体も夜に放ってしまった俺。
万が一の場合は、なんとか責任を取って解決しますのでお許しください。
多分、アイに頼めばなんとかなる。
アイが裏切ったらヤバい。
ごめん皆!意外と人類の未来は瀬戸際かも!
魔族関連解決に尽力するから許して!
それにしても、本当にこの世界樹はテラフォーミングする機能があったんだなぁ。
寿命があったみたいだけれど、それでもその技術を手にできたら、魔族の領域をもう少し楽に住みよくできるんだろうけどなぁ……。
イチゴ、知らないかな?
管理AIのフリしてたのか、実際に管理もしてたのかしらんけど、ここにいたならそれくらい把握していそうな気もする。
「なあイチゴ、この人工世界樹?みたいにテラフォーミングする技術で、今の俺達でも再現できそうなものってあるか?俺達なりに頑張ってはいるんだけど、このペースだと魔族の領域を緑で溢れさせるのに数年かかるし、それによってどんな気候変動が起きるかもわからないからさ。その辺りを解決する技術の知識があったら教えてほしい」
『ピピピピ?ピッピガ!』
返事をした後、すごいスピードで紙を吐き出し始めたイチゴ。
読んでみると、0と1で構成された文字列が延々と続いている。
……なんだ?二進法か?
「流石に読めんぞ?」
『……ピガ』
「ん?……これを一般人が一瞬で読み解けるくらいの技術レベルに到達しない限り、これは使わないほうがこの世界の生き物のため?そっか……」
一体どんな技術なんだろうか?
使うと世界が全部単一の植物で埋まったりとか、そういうのかな?
そして、単一の昆虫の大発生で大惨事になるんだ。
俺にはわかる。
生物兵器で何とかしようとするとだいたいろくでもないことになるんだ。
マングースのように。
俺が爆死した頃には、随分前には既にハブとマングースのリアルマッチは行われていなかったらしいけれど、どうなったのかなー……。
「ま!今のままでも、魔族の領域はいつか緑であふれる場所になりそうだし、地道にやっていってもらうか!」
『ピガガー!』
何事も、近道ってのは無いもんだ。
……ただし、ワープで端折る事はできる。
そう!聖女の力ならね!
「ほんと、聖羅の力はすごいよな」
「でしょ?AIなんかには負けないから。ポニーテールにだってなれる」
「うん、似合ってるけど、別に他の髪型でも魅力的だと思うぞ?」
「わかってる。だって大試は私のこと大好きだから」
『ピ……ピガガ!!!』
強敵の存在に気がついたかのような反応をするイチゴ。
本当に中身は高性能なんだな……。
「さて、そろそろここを出るか」
『ピガガ』
「ん?ちょっと待って……だって?え……」
イチゴが、再び箱の中に飛行機をしまう。
その後、その箱がサイコロサイズまで小さくなった。
『ピーガゴ!』
「それ持ち運べるのかよ!?」
へんてこなロボと、無限の輸送手段を手に入れました。
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