第219話
「これより、第一回魔族会議を開始する!司会進行は妾!クイーンオブヴァンパイア!スフィールが行おうではないか!まずは、初代議長である聖羅嬢に開会の挨拶を頼もう!」
「わかった。じゃあ全員、ジョッキを持って。せーの……」
「「「「「カンパーイ!!!!!」」」」」
今まさに世紀のイベントが開始された。
第一回魔族
今後の魔族の領域をどう運営していくのかを決めるために、とりあえず集まれる偉い奴らを全員集めて見たわけだ。
渋る奴らには、先にやってきて、作ることの尊さを思い知った魔族たちがおにぎりをぶち込みまくって連れてきていた。
ビールにエールにシードル、ウイスキーに日本酒と、聖羅が作った経験のある酒を作りまくることで、この宴会会場……じゃなかった。
大魔講堂という、魔王城で一番デカい部屋を埋めるほどの数が集まり、大宴会状態となっていた。
魔王城建設以来、魔王のコンサートでしか使われないほどに大きすぎたこの部屋が、初めて陽の目を見たと魔王自身が喜んでいた。
コンサートの言葉が出た瞬間、何人かは死んだ目をしていたけれど。
芸術文化がそこまで発達していないらしいこの場所で、一体何を披露したというのだろうか?
デスメタルか?
ファムが死んだ目になってんぞ。
それで、なんで聖羅が議長になんてなっているかといえば、もちろん酒を作ったのが聖羅ということになっているからだ。
酒を作る菌類も、聖羅の力ならいくらでも活動を促進できる。
だから実際にそうなんだけど、聖女の力ということはもちろんまだ明らかにできていないので、聖羅の力は『発酵』ということにして、なんとなく魔族っぽい能力であるように説明してある。
目の前で聖女パワーを使うのは流石にまずいけど、発酵食品や堆肥を聖羅が作り出していることまでは公にできるようになったので、酒だけではなく、古今東西の発酵食品を大量生産してみた。
酒を飲みたがる魔族は多かったけれど、それと同じくらいの魔族に支持を受けたのが乳酸菌飲料だ。
むくつけき野獣のような男が……というか野獣そのものが、ジョッキいっぱいの白濁液を飲んでいるんだ。
適量なら健康にいいんだろうけど、その量は流石にまずいんじゃないかと思わないでもない。
まあ、人間と同じ身体機能ではないだろうから、大丈夫なのかもしれないけれど。
女王スフィールすら、「乳はもともと血液なのだから、妾達にとってこれは主食である!」と言ってグビグビ飲んでる。
「そんな中、なんで俺は唐揚げ揚げてんだ?」
「宴会におつまみは必要。お母さんたちもそう言ってた」
「いや、会議だったはずなんだが」
「開拓村では、会議は宴会だった」
「そうだったな……」
飲みニケーションとかいう死語が、あの場所では現役だった。
というか、常に飲んでたから、あの人達とコミュニケーションをするってことは、それはつあり飲みニケーションというやべー場所。
王様相手だろうがそうだった。
酔った勢いのまま喧嘩を始め、俺や聖羅に酔いを覚まされて説教されるまでがセット。
この魔族たちの頂点を自称する奴らがもりもり集まってるこの場所で同じことが起きたらどうしよう……。
「いや、その心配はないよ大試くん」
「あなたは……ワーウルフのおじさん!」
「ワーウルフの長、マイルスだよ」
狼耳が頭の上にある以外、ふっつーのおじさん感がすごいこの人は、あのミリスの父親らしい。
どうやったらこんな人があの娘を育て上げられるのか。
「それで、心配ないっていうのはどういう意味ですか?」
「魔族にとって、ついこの間まで最大の規律であった方がここにいるからね。なにかあったとしても、すぐ解決されるよ」
おじさんが見つめる先には、ウイスキーを樽で飲んでいる魔王様がいる。
確かに魔族最強の魔王様なら解決できるかもしれないけれど、魔装様本人が酔っ払って暴れたらうやべーってことでもあるんだよなぁ……。
最悪、疱瘡正宗で辻斬りしていくことになるぞ。
「まあいいか。ところで、この会議って何を話し合う場なんですか?俺は、とりあえず食べ物と飲み物を大量に用意してくれって言われただけだったんですけど」
「あれ?聞いていないのかい?ドラゴンたちに畑の素晴らしさをどう教えに行くかという話し合いをしようって事だったはずだよ」
「あードラゴン!どうしたらいいんだろうなぁ」
「ドラゴン達の長は、我々の話を聞かないだろうからね。さてどうしたものか。ここで案が出ないと、娘のクラスメイトである大試君たちの命が危ない」
「……やっぱり、命の危機なんだ……」
確認を取りたくなかった事項が確認された。
いやだなぁああああああ!
命の危険ある状況に慣れてきてるしさあああああ!
あ、開拓村でもそれは同じか?
そう考えると日常だったわ。
「大試!ワシに考えがある!」
「またしこたま飲んだんですね。俺まで浮きそうなくらい浮かれてますよ?」
「今日は、カルーアという酒じゃ!甘くて美味いんじゃ!」
浮力が風船から広告用バルーンくらいになっているソフィアさんが、以前よりも更に艶っぽい顔で空から語りかけてくる。
天使かな?
酒臭いけど。
「竜といえば、古来より弱点とされとるもんがあるじゃろう!それを使うんじゃ!」
「あー、聖剣とかですか?」
「酒じゃろ!」
それ、洋風ドラゴンじゃなくて和風とか中華ドラゴン系じゃねぇかなぁ。
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