第202話
今日は、いきなり視界が移り変わっちゃう事が多い日だなー。
リーダー君のせいで隔離空間とやらに入っちゃったらしい。
今見た所、薄暗い岩石砂漠って感じだ。
敵は……周囲にはいなさそう?
「犀果さん……無事、ですよね……?」
「リリアも無事っぽいな。まずは安心だな」
「安心できるかボケェ!ワシもう帰りたいー!こんな辛気臭いところイヤじゃー!」
「あ、ソフィアさんも巻き込まれましたか」
正面にリリア、後ろにソフィアさんがいる。
ソフィアさんは、もうすでにヤバ目な感じ。
呪いの雰囲気で参ってるらしい。
ただ、どうやら他にも巻き込まれた人がいるようだ。
「あのぉ……これってどういう状況なんでしょうか!?」
実況をしていた2組のアイドルの人だ。
この状況にかなり怯えているみたいだけど、すまんな。
俺にもよくわからん。
「何とか私の対呪結界で、隔離空間を半径5m程に食い止められたと思うんですが、その中にいた私たちは巻き込まれてしまいましたね……」
「リリアってそんなこともできたんだ?」
「これでも天皇の義娘ですから!まあ、この事態を防ぐこともできない半端者でもありますが……」
「いやいや、俺なんて呪いの対応策全くわからなかったから、リリアはよくやってると思うよ」
本来どのくらいの範囲の人間がこの空間に巻き込まれる筈だったのかわからないけど、今周りにいるのがこの程度で済んでいるのは、間違いなくリリアのおかげなんだろう。
「あれ?そうなると、自殺みたいな事してたリーダー君はともかくとして、アイドルちゃんの近くにいたあのオッサンはどうなったんだ?」
「……呪いは、伝染しやすいんです。特に、他人を強く呪っている人には……。先程の男の子がこの世界を形作る引き金となったのは間違いありませんが、それに誘発されて、恐らくあの男性も人妖になっていると思われます。人妖が嫌う対呪結界を、隔離空間が広がるのを防ぐのに1枚と、それとは別に私たちを守るために1枚張っていました。なので、この空間に巻き込まれ、人妖となったからこそあの男性もここには近寄ってこないのではないかと……」
「ワシてっきりあの男が一番の呪いの原因だと思っとったくらい呪いの気配ぷんぷん漂わせとったもんなー……。あーもう迷惑極まりないのう……帰りたい……」
人を呪わば穴二つなんて言葉もあるけど、人を呪ってた奴についでに穴に落とされるのか……。
なんか嫌だなー呪い……。
「リリアさんって陰陽師なのか?」
「どう……なんでしょう?陰陽術を多少使えるのは間違いありませんが、それだけで陰陽師と名乗っても良いのでしょうか?教えてくれていた義父は、『覚えておくと便利だから、術っぽいものは色々覚えておきなさい』といって、系統に関係なく様々な術を教えてくれましたが……。なので、魔術も使えますよ?」
「へー。いいなー、俺なんて魔術使えないから尊敬するわ」
「そ……そうですか?」
照れながら、掌の上に小さな竜巻みたいなのを作って見せてくるリリアさん。
褒めてもらうの慣れてないけどうれしいんですね分かります。
「あの!それでこの後どうしたらいいんでしょうか!?この空間から脱出するには……!」
アイドルちゃんが悲鳴に近い声で訪ねてくる。
まあ、そりゃ気になるよね。
でも大丈夫!だってこれ、ゲームをモデルにした世界だから!
クソゲーとしか思えない状態でも、絶対に何かしら脱出する方法はあるから!
多分な。
「この隔離空間は、人妖となった男の子が発生させています。なので、彼を討伐することができれば、自然と元の場所に戻れるでしょう。ただ、彼の空間に触発されて人妖となった男性もこの空間内にいるはずなので、そちらも倒してからにしないと、この空間を解除した次の瞬間には、5m以内に人妖がいる状態で元の世界に戻されますが……」
クッソめんどくせーなあのオッサン!死ねばいいのに!
あ、この状況なら殺していいのか?まあ人間としては死んでるのかもしれんが。
いずれにせよ、良心の呵責とかはないな!
「そういや、この世界の中は、半径5mって訳でも無いんだな?」
「通常空間の物理法則は、この世界では必ずしも通用するとは限りません。時間や距離の概念もです。ただ、大抵の場合は、この空間を作り出した者の認識が強く反映されるので、そこまで訳の分からない世界に成りはしないのですが、どうやらあの男の子の心の中は、このように伽藍洞で、何も芽吹かない荒涼としたイメージだったということでしょう……」
「成程、俺は友達になれそうにないな」
「ワシが隔離空間作ったら、多分お主ら糖尿一直線じゃなー……」
「私だと、多分観客一杯のステージの上になりますね……」
ガタガタ震えているのに、夢いっぱいの世界を作り出そうとする2人。
案外余裕あるな?そういう強がり大事だぞ!
こういう時暗い事ばっかいう奴は、大体一番最初かその次に死ぬんだ!
映画で見た!
「ここに居ても始まらないし、その人妖ってのを探しに行こうか。どんな見た目かってわかる?」
「見た目は、元の姿に近いと思います。本人が自分をどう捉えているかが強く反映されますので」
「ふーん……。じゃあまずはオッサンを探せばいいんだな?」
「そうじゃ!オッサンを即死させるんじゃ!」
「オッサンを倒しましょう!」
「オッサンって……」
リリアさんだけ苦笑いだけど、やる事は決まった。
ただなぁ、なんかだだっ広い割りに、目印も何もない荒野みたいな場所なんだよなぁ。
どっちに行ったもんか……。
よし!こういう時の必殺技が俺にはある!
「……犀果さん、それは何をなさっているのですか?」
「ん?木刀を立てて、手を離したらどっちに倒れるかで行き先を決めようかなって」
「……成程!では少々お待ち下さい!」
「え?はい」
半分ふざけてやろうとしたんだけど、どうやらリリアさん的にはそこまでダメな方法では無かったらしい。
ただ、何か図面みたいなのをテキパキ描いている。
1分ほどでかなり複雑なアジアンな感じの模様が出来上がった。
「この中心にその聖なる力が強そうな棒を立てて倒してください!」
「これって何かの術なの?」
「はい!その者が進むべき方向を占う術です!」
「へー……」
そういや、陰陽術って本当は天文学を使った占いみたいなもんだっけか。
だったらこういうの強いかもない。
俺は、言われた通りに世界樹製木刀を図の中心に立て、手を離した。
「成程……ではこちらへ向かいましょう!」
「わかった」
「「おー……」」
もうぐったりしかけている2人も連れて、リリアさんを先頭に俺達は歩き出した。
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