第186話
「うーん……テレポートは流石に無理っぽいか?」
「どうだろうニャ?そもそもニャーは、転送紋使わずにジャンプできる存在をあんまり知らないニャ。うちの一族でも、ポンポン飛べるのはニャーくらいだし。後は精々、膨大な魔力に任せて無茶を通す魔王様くらいじゃないかにゃ?」
「他に何か特殊な力ってないのか?」
「さぁ……基本似たような力の応用だからにゃ。爪に小さなゲートを作って、相手の防御力に関係なく削り取ったりとか……。あ!結界とか得意ニャ!まあ、あれも元々はジャンプするときに自分を守るために使う奴だし、聖女様にはぶち破られたけどニャ~」
夕食後、ファムを伴って外で能力実験中。
ただ、今の所身体能力が上がった気がするってくらいで、他のファムらしい力は扱えていない。
テレポートだかジャンプだかはまあしょうがないとして、結界は使ってみたいなぁ……。
ファムと戦った時に使われた結界は、有栖の聖剣で叩きまくっても壊れてなかったし、自分の物に出来たら凄く便利そうなんだけどな。
「何かコツとかある?」
「コツ?生まれた時から使えたもんにコツとか言われてもわかんねーにゃ」
「何なの?お前天才なの?」
「もっと褒めても良いニャ」
クソが!
ちょっとくらい顔が良くて胸が大きくて他の奴が使えない能力持ってるからって偉そうに!
そんな態度だとお小遣いアップしちゃうからな!?
実際、有能なんだよなぁ……。
「うーん!うーん!壁!でろ!バリアー!」
「う○こ気張ってるみたいニャ」
「もうちょっと言い方を考えろ」
結局、そこから30分ほど試してみたけど、結界と聞いてイメージするようなものは発現できなかった。
才能無いのかなぁ俺……。
まあ無いがな?あったらとっくに使ってるもんな?
「やっぱり剣から出すようにしないと、ギフトの副作用に引っ掛かるのかなぁ?」
「はぁ……ニャーというスーパーウルトラミラクルスペシャルガールの力を借りておいて扱えないなんて、可哀想だにゃあ!にゃっはっは!」
腹が立ったので、とりあえずほっぺを強めに突っついておく。
抗議の声が上がるも、無視。
「まあ、できないものはしょうがない。身体能力が上がっただけでも儲けもんだな」
「ならもう戻ってもいいニャ?教えてたらお腹空いたにゃ~」
「お前おやつもカレーもいっぱい食ってたんじゃないのか?」
「能力使うとお腹すくのにゃ」
「太るぞ?」
「余分なカロリーは、胸に行くから大丈夫ニャ。アイスが呼んでるにゃ~」
俺を置いて、ファムはさっさと家の中に入って行ってしまう。
気まぐれな奴だから、30分付き合ってくれただけでも頑張った方だろう。
だけど、やっぱりテレポートと結界使いたかったなぁ……。
もし仮に、そういう魔術みたいな力は、俺が借りて行使できる力の対象外だとしたら、結局今の神剣でモリモリ身体能力向上させてるのと変わらんのかな?
それはそれでいいけど、何かもう少しメリット欲しいな。
何か無いかなぁ……ファム使ってた技で、俺の肉体でも使えそうなの……。
そうだ!カロリーオーバーした時に胸にカロリーをチャージするのなら俺にもできるのでは!?
いやいらんわそんなもん。
ネコミミを生やすとか……それはちょっと何かに使えるかもしれない。
顔は……仮に変えれたとしても、聖羅が文句言いそうだからやめておこう。
イケメンになってみたいけどな!
そういや、日月護身之剣で借りられる能力って、日月護身之剣を具現化している時しか使えないんだろうか?
小さくして収納している時でも問題なく効果は続いているけれど、消した時にどうなるのかはわからんな。
ちょっと試してみるか……。
「日月護身之剣を解除っと」
日月護身之剣が消える。
こうすると、装備している時に身体能力が100%増加する効果は消えちゃうけど、みるく先輩たちから借りてる力は……あれ?
ちょっとわかんねーな……。
効果が残ってたとしても、結局上がってるのは身体能力だし、確かめる方法がなぁ。
剣自体による増加分が消えたせいで、体の軽さについて判断がつかん。
あ、そういやみるく先輩と契約してから嗅覚が特別上がってた気がするな。
香りだけでカレーの材料までわかりそうな嗅覚が残っていれば、この能力は万が一剣すべてを使用できなくなったとしても使用できる切り札となり得る。
というかですね、現状、神剣使えなかったら一般人ですからね俺。
魔力はあるけど、それを扱う術がありませんから。
さーてと、嗅覚実験にいい物無いかなぁ……?
「大試よ、まだ外におったのか?そろそろ休んだ方がいいんじゃないかのう?」
「あ、良さげな実験対象だ」
「なんじゃ?」
目の前には、エルフで大精霊のお姉さん。
ソフィアさんなら、多少匂いを嗅いでも怒らんだろ多分。
……ごめんやっぱり俺が恥ずかしいからやめとくわ。
「ソフィアさん、あのたまにやってるお菓子出す奴やってもらえません?匂いで材料当てられるか実験したいんですよ」
「また変な事始めたのう……。構わんが、メニューは何でも良いのか?」
「何が出せるのか知りませんが、美味しいので頼みます」
「どれも美味しいがのう……なら、アンパンなんてどうじゃ?ほいっと」
そう言ってソフィアさんが指を鳴らすと、目の前にアンパンが出てきた。
見た目だけでいえば、普通のアンパンだ。
だけど……わかる!わかるぞ!?この香り!この風味!これは!
「アンパンですね」
「そりゃそうじゃろ」
「小麦は流石にちょっとわかりませんけど、餡に使われてる小豆……これって、相当おいしいのでは!?」
「そうじゃな」
俺は、重大なミスに気が付いた。
あまりに重大にして根本的な問題なせいで、完全に見落としていた。
「うん、匂いで中に何が入ってるのかは識別できるとは思うんですけど、そもそも俺はこの状態の嗅覚であんまり匂いを嗅いだことが無いので、どの匂いがどの食材かまではわかんなかったです。すごくいいアンパンの匂いだなってことしか把握できませんでした」
「そうじゃろ?めっちゃうまいんじゃよ。ほれ、これ食べてさっさと休むんじゃぞ?明日は、学園に行くんじゃろ?」
「そうですね……ありがとうございます」
アンパンを渡して去っていくソフィアさんを見送る。
とりあえず、匂いで材料を当てることはまだ難しいけれど、嗅覚の向上自体はされているらしい。
だったら、日月護身之剣の効果自体は乗ってるって事でいいのかな?
本当は、他の剣を全部解除したら一番わかりやすいんだろうけど、ずっと身体能力上げて生活してきたから、いきなり消した時に自分がどうなるのか怖くてやりたくないんだよなぁ……。
深海から一気に陸上へ揚げられた魚みたいに膨らんで破裂したりして……。
まあ、剣を使えなくなる状況にならない事を祈っておくか。
この時はまさか、すぐに剣を使えない状況で戦う事になるとは思っていなかったんだけどな。
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