第141話
青い空。
白い雲。
久しぶりに会う生徒たちの楽しそうな、或いは死んだような表情。
俺?どっちかっていうと死体寄りかな?
「犀果君久しぶり!どうしたの?元気ないよね?」
「……あー、委員長……久しぶり。いや、忙し日が続いてたけど、まだ休みがあるから平気って思ってたら、いきなり休みが終わったんだ……」
「なんか疲れてるね……。それにしても、休み中は随分ご活躍だったそうじゃない?」
「活躍なんて別にしたくないんだけどね……」
活躍する予定だった奴らが、何故か軒並みいなくなったり敵に回ってんだ。
俺は、開拓村で箱庭ゲーみたいな生活でもよかったんだけど……。
まあ、それを続けていたら、今でも自分がこの世界にとっての異物だとしか思っていなかっただろうけども。
何だかんだ、俺もこの世界に馴染んできたのかな。
疲れてはいるけど、充実はしているし、楽しんでいる。
流石に、家に昨日の今日でテレポートゲートが作られるとは思わなかったけども……。
家から学校まで0秒でした。
「それにしても、まさか犀果君が理衣さんと生徒会長まで婚約者にしちゃうなんてねぇ?」
「凄いでしょ?俺もびっくりした」
「この調子でどんどん増やしていくの?実は私も狙っていたり?」
「5人でも多すぎて、人としてどうなんだろうって悩んでる所だから……」
世が世なら……というか、前世の日本だったら、相当いろいろ言われていただろう。
スケコマシだの、種馬だの、屋根裏にでも住んでろだの。
でもさ?一応念のため言っておくけど、俺まだ誰にも手は出していないからな?
結婚するまでは、なんていうかさ……そういうの……アレじゃん?
「冗談はそこまでにして、宿題はちゃんとやってきた?」
「宿題?」
「……もしかして、忘れてる?」
宿題……なんだそれは……?
一応これはゴールデンウィークの休みからの続きだった筈だ。
貴族様の学校だから休みが長かったけど、俺の前世だったらゴールデンウィークにそんな面倒なタスクは殆ど存在しなかったはずだ。
もしかして、この世界だと夏休みとか冬休み同様、工作とかしなきゃいけなかったのか……?
「さっぱり思い出せません」
「あちゃー……先生から、犀果君は忙しくて忘れてそうだから、一応確認しておくように朝言われたんだけどさ、本当に忘れてたんだねぇ」
「これだけ言われても、そんなもんがあった事すら思い出せない」
おっかしいなぁ……。
俺、授業は真面目に受けていた筈なんだけどなぁ……。
もしかして、重要事項すら頭から抜け落ちる程、忙しすぎたのか?
「まあいっか!宿題って言っても、すぐ終わるし!」
「すぐ終わるのか?それ宿題としてどうなんだ?」
「大丈夫大丈夫!お休みの間どう生活していたのかを確認するために、レベル確認しておけってだけだから!はい、提出用の用紙もう一回渡しておくね?ギフトカードで確認すればすぐわかるでしょ?本当は毎日記録した方が良いんだけど、今日の分さえ確認できれば怒られないから!」
渡されたプリントには、名前を書き込む場所と、休みの間の日付と空欄のマスが並んでいた。
委員長の話を聞く限り、今日の日付の所に自分の今のレベルを書き込めばいいんだな?
でも……うーん……。
「あれ?どうかした?」
「いや……これ書き込んで提出したら、ふざけてるのかって怒られたりしないかなって」
「別に休み中に上がってなくても減点されたりはしないから大丈夫だと思うよ?内申点に加点はされないけどね」
いや、成績の事じゃなくてだな……。
まあいいか!考えても仕方ない!
俺何も悪いことしてないもん!
宿題忘れてたって事以外!
「……じゃあ、はい」
「はいはい、犀果君の提出確認っと……え?」
委員長が、俺の書いたレベルを見て固まった。
うん、そんな感じになるかなって思ったよ俺も。
だって、皆まだ10とかそこらだもんねレベル……。
「犀果君……これ、本当なの?」
「うん、ビックリでしょ?」
「ビックリって……うん……」
そう言いながら、俺の体をマジマジと見る。
レベルって、体を見てわかるもんなんだろうか?
なんなら、ポーズでもとろうか?
って思ってたら、今度はペタペタと触りだした。
えーと……委員長?
「すごい……これがレベル100の筋肉……」
「いや、そこら辺はあんまり変わって無い気がするんだけど……委員長って筋肉好きなの?」
「へ!?あ!ごめん!私ったらはしたない……」
いやいや、別に女の子に触られるのは構いませんよ?
実は、結構筋肉には最近自信がついてきたからな!
前世だと、筋トレしてる人たちが、鏡に自分の体を映して悦に浸っている気持ちなんて全くわからなかったけど、この世界に転生したから結構訓練してて、王都に来てからも筋トレ続けているから、何だかんだでかなり筋肉がついてきた俺。
鏡に映る自分の体に、たまにだけれど、ウットリすることもある。
俺……頑張ってるんだなって……。
「どう?筋トレ結構してるから自信あるぞ?」
「……うん……すごい……涎でそう……」
いや涎は我慢しろ。
女の子どころか、男だとしてもそれは流石にどうかと思うぞ。
俺は気にしないけど、世間体が……。
「ダメ、大試の筋肉は、婚約者の物」
「あ!聖羅さん!ごめんね!ついついレベルと筋肉にびっくりしちゃって……」
「大丈夫、大試が美味しそうに見える気持ちはわかる。わかってくれればそれでいい」
「……うん、なんだか、ずっと触っていたくなる筋肉だったもんね」
「貴方はわかってる。今度、うちに来て大試を触ってもいい」
「ほんと!?」
いや何言ってんだお前?
委員長も、ほんと!?じゃないんだよ?
「アンタ、何女の子に体触らせてんのよ?変態なの?」
「あの!私も大試さんの筋肉を堪能させて頂けないでしょうか!?」
「えーと……大試君……、私も触らせてほしいかも……できれば直接……」
リンゼと有栖と理衣も集まってきた。
流石に、そこまで筋肉に期待されると恥ずかしいんだけど……。
てか、筋肉よりレベルじゃないのか?
多分、100レベルってこの世界だと早々いないんじゃないの?
そんなに筋肉重要?
「話は聞かせてもらった!!!!!!!」
筋肉に湧く女子たちの声を消し去るがごとく、大声と共に教室の引き戸が開かれた。
クラス中の生徒が驚愕し、その声の主を凝視する。
そして、声よりもその容姿に更に驚愕する二段構え。
そこには、黒ビキニパンツのみ装備した、鬼のような筋肉モリモリの男がいた。
「犀果大試!!!!お前を勧誘しに来た!!!!是非我がマッスル部に入ってくれ!!!!!!!」
「え……嫌です……」
「まあまあ!!!!とりあえず見学しに来てくれ!!!!!!プロテインは部費で落ちるぞ!!!!!!では放課後にな!!!!!!!!」
そしてその男は、俺に名刺を渡して帰って行った。
何だったんだ一体……?
名刺を見ると、どうやら名前は、
だから、マッスル部ってなんだ?
「大試、マッスルになるの?」
「俺があんな黒ビキニで歩き回ってたら嬉しいか?」
「……うーん……私の前だけでなら……」
「え?」
どうしよう……マッスルするか?
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