第140話
「大試、私、凄いレベルが上がった……」
「私もです……」
「大精霊のワシですら上がったんじゃが……」
「ボク、レベル上がったのなんて500年ぶりくらいだよ!?」
「犀果様、生まれたばかりの私が、量産型含めてレベル100になっているのですが」
なにこれ?
経験値いっぱい貰えるとは聞いてたけど、それにしたって限度が無いか?
違うゲーム始めた気分……。
「ジブンも今知ったんスけど、ラビリンスはクリアされると、使用されたエネルギーが全て経験値になるらしいんスよ。あと、そんなこんなで大量に経験値が発生したんで、折角だから大試さんのご家族にも送っといたっス!いやぁ、大試さんって随分色んな女の子にパス繋がってるんスねぇ……」
何じゃいパスって?
ってか、すっごいゲスい顔でニヤニヤしてるな画伯……。
これ、本当にちょっと前までシクシク泣いてた水まんじゅうなの?
……おや?スマホが鳴り始めた。
相手は、またリンゼか。
「もしもし?もう王都についたのか?」
『とっくについてるわよ!アンタたち、今まで何してたの!?大丈夫なの!?』
「いやさ、買った家にいた幽霊っぽい精霊がさ、いきなりラビリンスとか言うの発生させてさ、それをクリアしてたんだよ。そしたら凄い経験値貰えたわ」
『やっぱりそれが原因だったのね……アタシもレベルが100になってるわ。これ、オンライン版にあったギルドハウジングのクエストなのよ。しかも、20人くらいいないとクリアできない奴。クエスト開始前にどれだけ建物を奇麗にして、前家主の力を削げるかっていう時間制限ありのタイプ。ギルド設立の時のお助けクエストで、条件さえ満たせば何度でも受けられて、クリアしたら仲間を100レベルに出来るってやつ。100レベル到達が前提のゲームバランスだったからこその物だったんだけど……、アンタたち、よくクリアできたわね?』
「へぇ。まあうちにはアイが50人いたからな。ピッカピカに改修してたから簡単だったのかも。ノーダメージだったわ」
『ならいいけど……あと、アタシたちって婚約関係にあるけれど、どうやら今回のそのクエストでは、同一ギルドと判定されたみたいね。多分、理衣や会長も100レベルになってるんじゃないかしら?』
よくある話なのかもしれないけど、ネトゲとコンシューマーゲーだと、レベルの概念が全く違ってたりする。
それを安易に混ぜてしまうと、こんな感じでぶっ飛んだ事態になるのかもしれない。
作ったはずの本人が、仕様を忘れているくらいにぶっ飛んだ事態だからな。
「まあ、何はともあれ、俺たちは無事だから心配しなくていいぞ。まだ駅にいるなら、アイに迎えに行ってもらおうか?すごいデコトラあるんだよ」
『はぁ……無事なら良かったわ。でも、気がついてないみたいだから教えてあげるけど、アンタと電話してたあの時から、丸1日経ってるからね?』
「……は?」
驚いて、スマートフォンの表示を確認してみる。
……確かに、日付が変わっている。
「ミナミ画伯……ラビリンスの中って時間の流れが外と違ったりします?」
「かもしれないっス!何分初めてつくったんで、自分もよく知らないっス!」
「よく知らないもんを気軽に作って自分までその中に入れるってすげぇなぁ……」
「そんなぁ……褒めてもラビリンスくらいしか出せないっすよぉ!」
気軽にポンポン出さないでほしい……。
「はぁ……というわけだリンゼ。ところで、新しい家は部屋がいっぱいあるから、リンゼの部屋も用意してもらおうと思ってるけど、今日来るか?」
『アタシは今日は遠慮しとくわ。明日から学校だし、今日はこのまま寮の部屋でゆっくりする。ハァ……アンタたちの心配してて、折角の休みがパーよ』
「そりゃ悪かったな……え?ちょっと待ってくれ……。明日から学校だって……?」
『そうよ?知らなかったの?』
「知らなかった……明日こそはゆっくりしてやろうって思いながら毎日生きてた……。今日もゆっくりしようって思ってたのにラビリンスに入れられて……」
『ご愁傷様、アタシを置いて行くからよ。さっさとお風呂にでも入って寝る準備したら?』
「…………………………………………そうするか…………」
リンゼとの会話を終える。
スマホを確認すると、理衣と会長とリンゼからすごい量のメッセージが届いていた。
リンゼは良いとして、理衣と会長には無事を伝えておいた。
あと、100レベルになって困惑しているかもしれないから、その原因に心当たりがあることも。
「……聖羅、明日から学校だってさ」
「みたいだね。大試、登校まであと12時間くらいしかないよ」
「……本当だな」
外はすっかり暗くなっている。
きっと、俺たちが行方不明だったせいで、大騒ぎになっている場所もあるだろう。
主に、王族関係とか教会関係とか。
事情聴取されたりするのかな……?
考えたくないな……。
なぁ俺、そろそろ寝ようぜ?
「じゃあ皆、疲れてると思うから、もうここらで解さ」
『あああああああああああありすううううううううううううううう!!!!!』
解散させようとしたら、空から響くローター音とスピーカー音声。
これは、宏崇王子か……?
「兄上!?」
『無事か!?反応が突如消えたから探していたんだぞ!?』
「それは申し訳ありません……ですが、貴方がそこに来たらダメだと思います!どんな危険があるかわからないんですよ!?」
『いても経っても居られなかったのだ!父上も来ているぞ!そろそろ騒ぎを聞きつけてこちらの方面に……』
「あああああああああああありすううううううううううううううう!!!!!」
今度は、野太いマッチョ声のマッチョが走ってきた。
周りの木々をなぎ倒しながら。
王族がこんな所にゾロゾロ来るなよ!
「なぁアイ、俺、このまま寝ることって可能だと思う?」
「データから導き出すなら、95%の確率で無理です」
「あ、5%くらいの確率で寝てるんだ?」
「はい、泣き喚きながら地面を転げまわって寝かせてくれと懇願すれば、悲しいものを見る目で了承されるかと」
「事情聴取してくるわ……」
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