第139話
1階へと続く階段を降りた俺たちは、そこからも数々の難問を解いていった。
ボイラー室で白い服に長い髪のお姉さんの幽霊みたいなのを部屋のギミック等を使って焼いて倒せと書いてあったので、面倒だからと倶利伽羅剣で灰燼にしたり、下水道でどでかいサメが通路にズリズリと入って来たから、これも部屋のギミック確認するの面倒だからとボルケーノ。
一番面倒そうだったモノレールを動かすために電力を復旧しろっていう指示を雷切でバリバリするだけで突破した時には、画伯も流石に唖然としていた。
後から聞いたんだけど、本来地下の原子力発電所を再稼働させなければいけなかったらしく、それが大変で面白かったはずなんスよ!とのこと。
付き合わされずに済んでよかった……。
「とうとうラストの関門っス!」
画伯はそう言うと、今乗ってきたモノレールの中でいきなり立ち上がり、どこからか持ち込んだデカいフリップを掲げる。
……何か、絵で説明しているんだろうけれど、やっぱり心を引っ掻き回す絵だ。
だから、赤絵の具をそんなに大量に使うな!
「題して、『これで終わりかと思ったら本当のラスボス登場』の巻!今から適度に強い魔物出すんで、倒したらそれで終わりっス!いい感じに苦戦してくれると有難いっすねー!」
勝手な事言うなぁ……。
大体、本当のラスボスって魔物じゃなくて、どう考えてもアンタだろ……。
「それ倒したらこのラビリンスクリアなんですね?」
「ハイっス!希望の未来へ進んでいく2人をバックにエンディング突入!しかしエンディング後にまだ怨霊は残っていて……って演出で〆っスね!」
「流石先生……!最後の最後でネタバレして雰囲気をぶち壊す芸術性!」
「フフフ……聖羅さんもよくわかってるっスねぇ……」
どうしたんだ聖羅の奴?
何か催眠でもかけられてるんじゃないよな?
アイツが俺以外にここまで興味を向けるなんて……成長してるって事かな……。
なんだかシミジミしちゃうな……。
「なんとか脱出した私と大試は、変わり果てた外の世界に絶望する……しかし、それでも生きているなら生きて行かないといけない。頼れるのはお互いだけ……触れる指と指……唇と唇……そして!」
「あー!ダメっすよ聖羅さん!それはラスボス倒してからにしないと!」
「はい!」
いや、やっぱりいつも通りの聖羅かもしれない。
でも、やっぱり楽しそうにしている聖羅は、最高に可愛いくて奇麗だから邪魔もできない。
非情に厄介だ……。
「それで、ラスボスとはどんなんなんじゃ?」
「それなんスけど、ジブン、あんまり魔物って知らないんで、何か強い魔物の案無いっスか?」
「強い魔物のう……やっぱりドラゴンじゃろうか?強かったぞ?」
「でもドラゴンだと別の作品っぽくなりそうなんスよ」
「ならば、ドラゴン細胞を埋め込まれて変異した人間でどうしゃ?強かったぞ?」
「それいいっスね!採用っス!」
軽ーく決まったなラスボス。
……てかソフィアさん、そいつらと戦った事あるんだ……。
大昔には、北海道にもドラゴンが……?
いや、今もいてもおかしくないか……。
実家から空飛ぶデカい魔物見たことあるしな……。
そもそも探し回れる範囲でも無いから、何がいたとしても驚かんわ……。
「じゃあドラにんげん出すっス!」
「なんか可愛い名前だな……」
「きっと可愛いマスコットだよ!ボクそういうの好き!」
「うちで言えば明小みたいなもんか」
「えへへー」
「犀果様、私の可愛さをご存じないのですか?」
「今可愛いと思ってるから心配するな」
「ありがとうございます」
小動物系少女に機械少女っぽい生身少女がマスコットの座をかけて対抗している。
なんなら、2人ともマスコットでいいよ?
片方はお姉さんにもなれるし、片方は50体も量産されてるし、商品展開しやすそう。
「いでよ!ドラにんげん『デスブレイカー辻本!』」
『ぎゃあああああ!?いでぇ!いでええええよおおおおおおお!?』
ミナミ画伯が空中に描き上げたそれは、頭が異様にデカく膨れ上がった人間のオッサンだった。
しかも、既に虫の息。
悲鳴をあげてのたうち回っている。
これがマスコットか……。
キモカワってやつか?
俺にはわからん……。
「……ボク、マスコットになんてならなくていいや」
「私は、初めからマスコットになど興味ありません。ヒロインでさえあればいいのです」
凄いガッカリした2人。
また、人の世について少し理解を深めた人外たちだった……。
「それで、これ倒せばいいんです?てか、このままほっといたら死ぬんじゃないか?」
「そう!このまま放っておくと、この辻本っていうオジサンの頭が破裂して、中から寄生タイプのドラゴンがドバっと……」
「ボルケーノ!!!!!」
「ああああああ!?」
『ぎゃあああああああああ!?』
この疲れている時にグロを見たくないので、即終わらせてもらった。
見た目は改造人間みたいなもんにみえるけど、実際にはこのラビリンスの主によって作られた仮初の存在。
倒すことに躊躇は無い。
例え、適度に苦戦してくれとラビリンスの主が期待していたとしてもだ。
嫌だよ!何だよ寄生タイプのドラゴンって!?
悪の組織にある日突然拉致されて、細胞埋め込まれた浸食されてるだけにしとけよ!
そして、一瞬にして炎上した辻本(仮)さんは、煤すら残さずこの世界から消え去った。
南無……。
「うぅ……破裂さえしてくれれば超メンドクサイ事になって面白そうだったんスけどねぇ……」
「疲れてるんで帰りたいんですよ。約束通り出してもらっていいですか?」
「そうだね、やっぱり周回プレイで強かったって事で納得しておくっス!おめでとう!はい経験値!」
「あーそういえばそれ貰えるんでしたっけ……え?なんか凄いいっぱいガチャチケもらった……ギフトカード……は?」
自分のレベルをすぐに確認してみたら、レベルが100に達していた。
あれぇ……?
最近全然上がってなかったのにこれって、どんだけ……?
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