第119話
なんかもうさぁ……さっさとコイツを冷凍して持ち帰って王様の前に投げ捨てたい。
さっくり終戦宣言しようや。
俺の両親は、コイツに陥れられたらしいけれど、多分大して気にしてないだろうしさ。
だったらもう手軽に済ませてしまいたいよ。
周りの軍人たちも、どうみてもイヤイヤ付き合ってるだけみたいだしなぁ……。
人望ねぇなコイツ。
でも、少なくとも一人は、こいつを利用して何かをやらかそうと企んだ偉い奴がいたはずなんだ。
じゃないと、隔離施設から出てこれるわけがない。
前世の発展途上国の刑務所みたいに囚人が普通に外出して、人殺して悠々と帰ってくるような滅茶苦茶な管理体制の訳が無いだろうし……。
うちの囚人一歩手前みたいな感じで召喚されたネコミミメイドは、好きなように飯食って寝てるけども!
「ソフィアさん、アイツら全員この前の冷凍するやつやってくれません?んで王子だけ持って帰りましょうよ」
時間は有限だ。
俺はもう帰りたい。
豪華な温泉旅館は最高だったけれど、別に四国じゃなくてもそれは体験できるはずだもん。
俺が四国で体験したかったのは、空港の蛇口からポンジュースが出るとか、うどんが出るとか、そういう四国ならではなもんだよ。
こんな危ない事しに来たい場所じゃない。
レンタカーで寺巡りをするなら多少危険な方が面白いかもしれないけれども。
だが、俺の提案を聞いたソフィアさんが、何やら渋い顔をしている。
「……大試、あ奴に魔術で攻撃するのはまずい」
「なんでです?もしかして、すごく強いとか?」
「いや、奴自体から確かに何やら不気味な気配は感じるが、それは何か外部からの物じゃろう。奴単体では大した事は無い。問題はじゃ……奴が何らかの魔法や魔術による攻撃を直接受けた場合、大爆発する呪いのようなものがかかっておるようじゃ……」
「えぇ……?なんでそんなことに……?」
「わからんが……本来であれば、祝福のように対象を強化するような目的で使われる術式じゃが、それを無理やり爆発力へと変出させるように設定されとるようじゃな……」
はた迷惑すぎる!
なんなのあいつ!あいつ!!!!!!
……よし落ち着こう。
状況を整理するぞ。
まず、アイツはウザい。
超ウザい!チョーベリーバッド!って言葉を使えば凄くネガティブな意味になると聞いた気がするけど、正にそんな感じ。
その上で、アイツに魔術による攻撃を加えると爆発する。
ウザさマシマシ。
多分そのトラップみたいな爆発魔術をあの王子に掛けた奴も、俺と同じ心境だったんだろうな。
ただそのせいで、俺は今決め手に欠ける案しか出せない。
魔術を使わず俺が木刀でボコるか、拳でボコるか、どっちかだ。
問題は、奴は黒魔術師である可能性が高くて、黒魔術を使わせてしまうと、後ろのタヌキ2人がショックを受けるような事態になりかねない。
豊満タヌキがゾンビみたいになって呼び出されるのは、流石に俺も見たくない。
となると、一瞬で意識を刈り取ってさっさと転送陣で帰ってしまうのが一番の近道かもしれないけれど、人間ってそう簡単に意識を刈り取る事なんてできんぞ?
聖羅や聖羅母みたいに、その道のプロじゃないと危険だ。
その道のプロがやっても危険だけどもさ。
そうなってくると、やっぱり生きたまま連れ帰るのは諦めて、首を撥ねるのが一番かなぁ……?
でもやっぱり、できるだけ人を殺したくはないんだけどなぁ……。
まあいいや。
それでもここで奴を逃がせばもっと多くの犠牲者が出る可能性もあるんだ。
それを考えると1人で済むなら儲けもんだろう?
前世だったら絶対にそこまで割り切った考えなんてできなかっただろうけれど、俺はこの世界で15年間も蛮族スタイルで生きてきたんだ。
モヒカンだったりトゲトゲ肩アーマーをつけていないだけマシだと思う。
魔物のクマとタイマン張るよりは楽だろうなって印象が強い。
「ソフィアさんは、基本的に魔術ばっかりだから今回は待機で。他の皆もな」
「万が一があるからのう……。王子巻き込んだらこの辺りががれきの山じゃ……」
「でもアサシンのアレクシアだけは俺と一緒にアイツらを狩るぞ。可能なら気絶とかでもいいけどさ。王子は俺が魔術を使わず倒すから、他の奴らにはアサシンの技能ガンガン使って倒しちゃっていいぞ!アサシンの技術なら正確に巻き込みとか無しで攻撃できるだろ!」
「いいぞって……私別に人を殺すのを許可されたくは無いのですが!?」
「うるさい!あれだけ何もせずバクバク飯ばっかり食ってたんだから少しは仕事しろ!世の中顔が良いだけじゃ食っていけないんだぞ!」
「顔がよくてすみません!」
さて、やると決めたらさっさとやってしまおう。
幸い、こちらは完全に不意を突ける状態だ。
一応武器を木刀に持ち替えておくけれど、別に木刀だから殺さずに済むかもわからないから気休めだな。
SSRやSRの神剣を具現化している俺の身体能力なら、コンクリートの壁でも木刀で掘り進めそうだし。
「3数えたら一気に行くぞ」
「待ってください!3って言われた瞬間に走り出すのですか!?それとも、さーん!って言った瞬間に走り出すんですか!?」
「面倒だからカウントダウン無しでもう行くぞ」
「そんなぁ!?」
理不尽だと主張し続ける表情のアレクシアを伴って走り出す。
既に、基地突入作戦健康前に先んじてかけてもらっていたステルスは解けてしまっているけれど、建物に入ったおかげで若干気が緩んでいるせいか、王子はもちろんだけれど、軍人たちもこちらに気がつかない。
これなら楽に作戦完了できそうだ。
そう悪い顔でほくそ笑みながら木刀を振りかぶった。
しかし、そんな俺の表情が、その直後に驚愕へと変わる。
ガキーン!
そんな音を立てて、木刀を何かが受け止めた。
曲がりなりにも神剣で、しかも世界樹だからまず破壊不可能で、そこに俺の上げられまくった身体能力を叩きこんだにもかかわらず、それを止めただと……!?
ただ、そこまでならまだ俺だってすぐに次の手に移ったさ。
にも拘らず、俺はその後すぐに距離をとって数秒惚けてしまった。
何故かって?
それは、受け止めたのがアレだからさ……。
「タヌキのロボット……?」
そこには、トラくらいのサイズの四足歩行型ロボットがいた。
デザイン的にはタヌキっぽい。
でも、カラーリングが青と白で、尻尾がシマシマ。
え?これ大丈夫?
いや、猫じゃなくてタヌキ型だから問題ないのか……?
「敵の魔術によって勝手に死んでもらいたかったんじゃが、世の中上手くいかんもんじゃわい」
「な!?隠神!?貴様、何故ここにいる!?地下指令室にいろと言っておいただろうが!」
「お前に危険が迫っておると、お前に掛けられた呪いによって知らされたから向かってきたまで。我輩とて貴様など助けとうないわい」
「生意気な奴だ!だが丁度いい!そのドローンタヌキで不届きものどもを倒せ!」
「……仕方ないのう、恨むんじゃないぞ東京モン!」
まずい、いきなり敵の親玉が揃ったっていうのに会話が全く頭に入らねぇ!
タヌキ型ロボットのせいだ!
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