第79話
知らないよ流行りなんて!
俺は、そういうのに敏感なJKでも、古き良き歴史を感じる巫女でも無いんだから!
「人の若者と遊ぶのは心が躍るのぅ!何年振りだろ?長く生きとると、その辺りの感覚が曖昧になって……うーむ……最後に遊んだのは、そうそう!赤い服の少女じゃった!服装から言って、数百年前かの?いやでも、おぬしらも似たような服装じゃし……りばいばる?ゆうやつかの?」
違います。
ただのJK巫女です。
「大試君、どうする?勝ち目なんて無いと思うのだけれど……」
「逃げることもできそうにないのが悲しいですよね」
「そうね……ねぇ大試君、私、この炎華祭が終わったら田舎に残してきたあの娘と結婚しようと思うの……」
「会長、ここぞとばかりに死亡フラグ立てないでくれます?」
まあ強がっているけれど、震えているから怖がってるんだろう。
流石に、これはどうしたらいい?
命まではとらないって言ってたけれど、それってどの程度のもんだろう?
近くに聖羅がいるなら、多少体が欠けたところで何とかなるけれど、今は脚や腕が吹き飛ぼうものなら命に係わる。
その瞬間生きてればいいだろ的ないい加減な感じかもしれんし。
あれだよ?
肩とか太ももを銃で撃たれてもマンガだと軽傷扱いだけど、普通に考えたら重症だよ?
聖羅がいなかったら、怪我は怖いんだよ?
大怪我でも即治す奴とか、敵からしたら悪夢以外の何物でもない。
まあ、その天使で悪夢な存在は今ここにいないわけで。
「理衣たちは今すぐ逃げろ。俺が……いや、龍の力持ってるみるく先輩にも手伝ってもらおうかな。タケミーとかいう奴も興味持ってるみたいだし。2人で時間を稼ぐから、運営に言ってこの辺りに人を近寄らせないようにしてくれ」
「ふっ!いいだろう!私を混ぜ物呼ばわりした事を後悔させてやる!」
「でも大試君!私も一緒に……」
「いや、相手がどういうものかわからない以上危険すぎる。それに……」
冷や汗を拭いながら、タケミー(仮)から目を離さずに続ける。
「味方が何人いても、アイツには勝てない気がする」
「……そっか……死なないでね!」
「そのつもりだ」
身体能力を上げていて頑丈な俺と、龍のスペックがあるらしいみるく先輩でもないと、あの訳の分からない存在相手に生き残れる気がしない。
それに、もう周りの被害を気にしてる段階じゃない気がする。
だから、味方の人数は少ないほうが色々やりやすい。
「みるく先輩、火に弱かったりします?」
「そんなわけがないだろう?私は龍だ。焚火に飛び込んだって平気だぞ」
「なら安心です」
「ちょっと待て、それを聞いてなんだか私は不安になってきたんだが?」
カラドボルグを倶利伽羅剣に持ち替える。
やっぱり、火力を重視するならこの組み合わせだな!
これでも勝てる気があんまりしないけど!
あくまでも勘だけどな。
でもさ、神剣で勝てない相手って……。
「そろそろ準備はできたかの?」
「もっと待ってもらえるなら待っててほしいんですけどね。1000年くらい」
「流石に待てんよ。なに、ちょーっと遊ぶだけじゃ。おぬしらがちゃんと我を満足させてくれたら、何か報酬も用意しよう」
「いらないんで皆で帰ってご飯食べたいんですが」
「諦めが悪いのぅ?ではいくぞ!一撃で倒れるなよ?戦いという原初の行為に身を任せようぞ!」
強者にお約束の、「最初の一撃は動かずに喰らってやる!」的な物も無いらしい。
そこで全力をぶつけて即終了できたらいいなーなんて思ってたけど、期待なんて裏切られるものだ。
タケミーが重さを感じさせない踏み込みで近寄ってくる。
かなり手加減をしているような動きだ。
表情からしても、相当楽しんでいるように見える。
本人の言う通り、遊びのつもりなんだろう。
象の遊びに付き合ったら、アリなんてすぐ死んじゃうって事を考慮してなさそうだけれど。
相手の剣を受けるのは怖い。
神剣で受け止めたとしても、そのままフッ飛ばされそうだ。
だから、先制を心がけたい。
「ボルケーノ!」
「なんと!?」
近寄られる前に吹き飛ばす!
剣術勝負なんてしてやるか!
俺は、剣しか武器が無いから剣を使ってるだけで、剣士じゃないんだよ!
やったか!?
「びっくりしたのぅ。中々の火柱じゃ。危なくちびるとこじゃった」
「やっぱりやってない。だと思ったよ」
射線上の森が燃え上がっている。
この火力で煤すらついていない。
多分だけど、現時点での俺の最高火力なんだけど……。
「私を忘れるな!」
みるく先輩がどこからか出した弓矢を撃ち込む。
そういや弓道部だっけ。
龍の矢って強いんだろうか?
何かのエネルギーを纏っているように見える矢がまっすぐにタケミーへと向かい、そして斬り払われた。
「龍星矢か!いいのういいのう!神剣に龍弓……なかなかここまで面白い相手をまとめて相手取れるなんてないぞえ!」
「知るかよ!こっちは一つも楽しくねーわ!」
「そうか!?私は案外楽しいぞ!正面からの戦いは楽しい!」
「このバトル脳が!」
相手が矢を斬り払った隙に、もう一回ボルケーノを叩きこむ。
こんなポンポン使うべき技じゃないんだけど、出し惜しみなんてしてられない。
効果が殆ど無いとしても、例え1000の内1しか削れないとしても、攻撃をやめる理由にはならない。
「燃え尽きろ!」
「良いねぇ!どんどんぶつけて来るがいいわい!」
3発、4発と叩きこむ。
やっぱり見た目からはダメージを感じられない……。
「龍星矢三連!」
みるく先輩の矢もダメージは感じられない。
だけど、タケミーはそれを必ず斬り落とすために一瞬隙ができる。
まあ、ワザとなんだろうけれど……。
今までは、そのタイミングでボルケーノを叩きこんでいたけれど、戦略を変える必要がある。
動きが止まった隙に俺は突っ込む。
できればやりたくはないけども、本来俺の持つ神剣は近い程効果を発揮するんだ。
ボルケーノは、ただの応用技だし。
「雷切!!!」
剣を剣で受け止められたけれど、この距離なら問題ない。
単純な火力で押し切れないというなら、雷で体中を焼いてみる。
本物の雷だぞ?
これでどうにか……。
「うーむ……良い電流じゃったが……そのなぁ……」
信じられないことに、これも全く効いていないらしい。
結構自信あったんだけどなぁ……。
「実は我、雷とか司っちゃってるからのう……」
「そう言う後出しやめてほしい!」
俺が後ろに飛びのくと、すかさずみるく先輩が矢を撃ち込んで足止めしてくれる。
この人めっちゃ強いな?
なんでこれであんなにすぐ俺に負けたんだろう……。
というか、指令室内にいちゃいけない人だろ。
外で弓構えてろよ。
「犀果大試、ここからどうする?」
「どうしましょうね……。気分的には全力で離脱したいですけれど」
「逃げきれんだろう?」
「最初からずっと存在する難題ですね」
そう言いながらボルケーノを放つと、先ほどまでと違い、タケミーがその火柱を切り裂きながら突っ込んできた。
何なんだコイツ……。
何でもありだな……。
「おりゃ!」
「ぐうううっ!?」
ふざけた掛け声で叩きこまれた刀は、信じられない程の衝撃を伝えてくる。
剣で受け止めた俺の腕が、そのままバラバラになってしまいそうだ。
……ってか、攻撃受け止めて地面に足が少し埋まるっていう初めての経験に驚いている。
こんなのもうバトルマンガの世界じゃん……。
「随分と体を磨き上げているようじゃな?ええぞええぞ!」
「お褒めに与り光栄ですね!」
嬉しくないけれど!
受け止めた状態のまま滑らせるように相手を斬り払う。
それを余裕でよけて、タケミーが後ろに飛び去る。
これもう本当にどうしたらいいんだ?
「はぁ……、本格的にもうどうしたらいいかわからないんですけど、アイスでも買いに行きます?暑いし」
「現実逃避している場合じゃないだろう!?」
「ははは」
わかってるけどさ……。
「なに、死に物狂いで掛かってくると良い。我が満足するまでな!この調子だとそう遠くなく満足ゲージが満タンじゃぞ?」
聞いたこと無い要素を出してくるな!
ここまででも必死だったんだけど、ここから更に色々続けろって言うのかよ!
ウンザリした気持ちで刀を構える。
ボルケーノ戦術に戻るか、他の神剣に持ち替えるか、それを悩んでいると、どこからか何かが飛来する。
それはもう、物凄いスピードで。
「なんじゃあああ!?」
「うおおお!?」
「キャアア!」
飛んできた物は、タケミーに直撃した。
俺達には当たらなかったけれど、余波だけでフッ飛ばされそうだ。
また何か訳の分からない物が現れたか……?
そう思い、飛来した方向を見てみると……。
「民を守り、国を守り、そして黄泉路の果てに乙女の涙に乞われ顕現したるは武田が棟梁!」
なんか、赤い格好の、それもフリフリマシマシな服の上に鎧を着た女の子がポーズをとっていた。
「魔法少女、武田てふ子!ここに彗!参!」
てふ子様だった。
何故?
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