第69話
「大試君、この指が何本か見える?」
「グーに見えるんですけど……?」
「これはダメね……。今夜は付きっきりで看病してあげないと……」
「お手伝いします!」
「いやいやいや……」
神様と話していたといったせいで非常に心配されている俺です。
でもさぁ……ここ神社だよね?
その位の不思議体験あってもおかしくないと思うんだ。
「……仲がいいですね?」
「そう見えるか?監禁されかけてるぞ?」
「……傍から見ている分には面白いです」
「私は男女の色恋沙汰には興味がありませんので!幻覚に効く薬ならありますけど飲みます?アサシンには調薬技能が必須ですから!」
エルフ姉妹は我関せずといった感じ。
エルフ的には、宗教といえば精霊信仰らしい。
女神様は、精霊のその上と言った所だそうだ。
だから、神社やお寺は存在しないんだとか。
精々が、お地蔵様のように建てられている精霊像や女神像に祈るくらいだそう。
そりゃまあ、自分たちの御先祖様が気軽に精霊になる奴等だもんな。
「とりあえず俺は大丈夫ですから。心配かけてすみません」
「そう?残念ね……」
「残念って……」
ご心配おかけした方が良かったですか!?
申し訳ありませんが元気です!
「それより、他の所も紹介してくれませんか?これだけ広い敷地なんですから見どころいっぱいでしょう?デカい神社って結構好きなんですよね!」
「そう?ならそうしようかしら!折角だし、てふ子様所縁の品が収められてる宝物殿でも見に行く?」
「いいんですか!?そう言うのって限定公開で人がモリモリ来る奴じゃ!?」
「明日からの催しの時に期間限定で一般公開されるのよ。今日のうちに準備は出来ている筈だから、今なら貸し切りで見れるんじゃないかしら?」
先輩の誘いに乗っかって、皆で噂の宝物殿へと向かう。
気の早い人たちが既に明日からのイベントに供えて屋台を始めていたため、途中で高い飲食物を購入しながらだけども。
なんで焼きそばが1000GMもする……?
でもソースの香りには勝てない!
「マイカもアレクシアもさぁ、屋台で買い食いするのは良いけど、限度考えないと今回のバイト代全部ここで使い切ることになるぞ?」
「しかし!お金には使いどころという物があるんですよ!」
「……この鳥レッグ……スーパーで買えば100GM……でもここなら1000GM……錬金術です……」
やっぱり見た目は似てないのに、似ているエルフシスターズ。
エルフの集落でも出店はあるらしいけれど、メニューや味付けが大分違うらしい。
そういや、競馬見ながら食いまくってたもんなキミら。
そしてここでも、既に出ている10店舗程の屋台全部で買い物をしていた。
食べ物の屋台しかなかったのも不味かったのかもしれない。
この2人は金魚すくいとか射的だったら我慢できたんだろうか?
……金魚は食わないよな?
「大試君大試君!これ見て!ジュース2つがカップルなら割引だって!」
「理衣さん理衣さん、それは詐欺なんじゃないでしょうか?」
「……本当にしちゃえばいいんじゃないかな?」
未だにグイグイアピールしてくるけれど、この娘は本当にそのつもりで来ているんだろうか?
先輩の発言で自分が俺に恋していると思い込んでいるだけなんじゃないんだろうか……?
それに、俺には既に婚約者が3人もいるわけでだな……。
俺としては、理衣は良い子だと思うし、見た目に文句なんて一つもないから、相手がいなければ喜んで結婚しよっとって思っちゃうだろうけどさ……。
仮に聖羅たちが認めてくれたとしても、4番手と言う事になっちゃうんだぞ?
俺は婚約者全員を幸せにするつもりだけど、世間から見たらどうしたって聖女・王女・公爵令嬢の下に見られると思うんだよなぁ……。
まあ、どうせ辺境に帰るんだから、気にしなくても良いといえばいいんだけど……。
いやいやでも倫理的にこれ以上の嫁はどうなんだろう……?
「大試君?何か悩んでいるの?」
「発端がもしかしたら会長かもしれない問題で悩んでます」
「あら嬉しい!」
「違う悩みも追加されたかも」
会長は会長でこれ本気なのかなぁ?
揶揄ってるだけ……って事は無いよなぁ……?
俺の少ない経験的に、好意的に見てくれてる気はするけれど、理衣と同じ理由で難しいよなぁ。
でも、そう言う気持ち一切なしで寝てる所に侵入してくる事は無いよな?
うん、もうどうしたらいいかわからねぇ!
童貞には荷が重い悩みだ!
ゲームキャラのイケメンどもどこ行った!?
俺が知ってるゲームのイケメンは大体揉めて退場しちゃってるんですけど!
女キャラこれだけいるんだから他にもイケメンキャラはいるはずだろ!?
この神社のイベントだって絶対ゲーム内イベントだろうにさ!
「というわけで会長、問題を先送りすることに決めました」
「そう?つまり決められない程度には悩む余地があるって事よね?」
「…………まあ……?」
「大試君大試君!明日は頑張ってキツネ耳になってみるね!無理なら巫女服で我慢してもらうしかないけど……」
「巫女服で十分だぞ?」
「……だって少しでも可愛いと思ってもらいたいもん……」
「うっ……」
だからさぁ!
美少女があざとい事言ったらダメなんだって!
堕とされるだろ!
俺が!
宝物殿には、赤漆でピッカピカに仕上げられた女性用鎧(魔法少女バージョン)や、てふ子様が使っていたとされる備州長船倫光という日本刀も展示されていた。
それって、信玄が持ってたやつじゃなかったか……?
まあでも、正直俺の頭の中はそれどころではなかったせいか、宝物殿の中の事はあまり良く覚えていない……。
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