第68話

 神の世界にいます。


 目の前には、小屋っぽい部屋とヤンキーっぽい女神が。


 世界の管理任されてるのに、世界の管理苦手なんだって。


 怖いね。




「ところで、俺ってどうやったら元の場所に戻れるんですか?皆を待たせてると思うんですけど……」


「心配すんな。ここは時間の流れを弄れるんだよ。あっちでは、まだ1秒も経ってねぇよ。」




 あーそうなんだ?


 それはまあいいとして、気軽に神様の世界に来るのはちょっとアレだなぁ……。


 あまりに唐突だったからなんか納得してるけど、とんでもない状況だと思うんだ。


 まあ、この世界に来るときに似たような状況にはなっていたんだろうけれど、ここまではっきりと神様が見えているという状況は流石に想定外。


 神様って、皆ぺかーって光ってるもんだと思ってた。




「リスティ様って、ぺかーって光らないんですか?前見た神様を自称するやつはぺかーって光ってたんですけど」


「様なんてつけなくていいぜ。その光ってたってのは、多分自分の正体を明かしたくなかったか、明かせなかったかのどっちかなんじゃねぇか?オレは別にお前に正体がバレても気にしねぇし」


「そう言うもんなんですか」


「おうよ。お前がこの世界に来たのはかなりイレギュラーな条件が重なった結果らしいからな。前任のバカ女神がやらかし過ぎなんだよなぁ……しかも、そのせいで死んだ相手と婚約?笑い殺す気かってんだよ!」


「でも、可愛いですよ?」


「お前もお前でヤベー奴だよな……」




 酷い言い草だ。


 そして反論できない。


 でもさ……可愛いんだもん……。




「まあその辺りはお前の好きにしろ。オレは、口出しする気はねぇよ。お前をこの世界に転生させるにあたって、可能な限り好きにさせろって言われてるしな」


「どのくらいまで好きにしていいんですか?」


「100人くらいまでなら嫁作っていいんじゃね?ガンガン子供作れよ」


「大盤振る舞い過ぎる……」


「女神を嫁にしようとしといてよく言えんな……」




 さて、折角女神様に会えたんだから、何か聞いておきたい事とかあれば聞いておくか。


 いつまでこの場所にいられるかもわからないし、できるだけ効率的に……。




「俺のギフトの剣魔法について、何かアドバイスあります?今の所、あんまり使いこなせてる気がしないんですけど。身体能力あげるのメインになってる感じで」


「あー……アレなぁ……。正直言うとよぉ、オレの剣をバンバン使ってもらいたくて作り出しただけのもんだからなぁ。神剣ぽんぽん渡すために、デメリットで他の魔法使えないようにしちまって悪かったな。ランダム性までつけてやっとお前に持たせられたんだよ。でも、役には立ってんだろ?」


「ええまあ……。ただ、なんで俺がガチャすると木刀ばっかりなのはちょっと納得いきませんが」


「……あ!てめぇ!そうだそうだ!そこについてオレはすげー文句いいたかったんだよ!」




 いきなり怒り出す女神様。


 神様に目の前で怒られる気分が分かりますか?


 職員室で担任に怒られるのよりちょっと怖いです。




「木刀は木刀ですげー役に立つんだよ!世界樹製だぞ!?」


「いや、世界樹から出来てても木刀は木刀じゃないですか!」


「ちげーよ!世界樹使ってるから、アレを触媒にすればスゲー魔力を得られんだよ!わざわざ剣って事にしてプレゼントしてやってんのによ!まあ触媒にしたら無くなっちまうんだけどな!」


「……つまり、アレって魔力タンクみたいなもんって事ですか?」


「そうそう!実際には物凄く増幅するだけだけどな。なのにてめーはただ役立たずみたいに扱いやがって!」


「だって木刀は木刀じゃないですか!それに説明にそんな事書いてなかったし!燃えないから薪にもできないし!」


「燃やすなよ!燃えないように加工すんの大変なんだぞ!?オレが何の神だと思ってんだよ!」




 そんな事言われても、触媒にするって言われるより薪にするって方がわかりやすいし……。


 触媒って言われて思い浮かぶのなんて、便器に使ってみたら物凄く汚れが落ちて画期的だったって言う光触媒くらいだし……。




「じゃあ結局どう使ったらいいんですか?魔術的な事なら俺には無理ですよ?」


「んなもん簡単だろ。世界樹製木刀持って『つしゃおらぁ!』って頭の中で叫ぶんだよ」


「えぇ……?もうちょっとこう……エレガントさが欲しい……」


「ゴチャゴチャ言ってねーでやってみろよ!ほら!練習用に一本やるから!」




 そう言って渡された木刀。


 あまりにも見慣れたその神剣。


 見慣れ過ぎて、そんなすごい物に見えないんだよなぁ……。


 まあやってみるけどさ……。




 えーと……なんだっけ?


 しゃおらだっけ?




 いや使えてないな……。




「特に変化ないみたいなんですけど……」


「気合がたんねーよ!もっと魂込めて頭の中で叫べ!」


「魂……」




 魂って何だったっけ……?


 3倍だったか……?


 3倍……3倍……。




(っっっしゃおらっ!!!!!)




 俺の魂込めた念じる気持ちに答えたのか、絶対ここまでやっちゃ駄目だろってくらい光り始めた木刀(世界樹製)。


 そしてそのまま光って消えた。




 消えちゃったよ……?




「えーと……これどうなってるんですか?ライブで振り回すなら目立てるかもですけど……」


「いや、お前普段魔力使って戦ってないからそう感じてるだけだって。魔力に敏感な奴ならちょっと気絶しかねないレベルでお前の魔力高まってるぞ?どれでもいいから神剣で攻撃してみろよ。今パンパンな状態だから、1発攻撃繰り出すだけで一気に流れ出すぞ?あー、試してみるなら外でやれよ?小屋吹き飛びそうだからな」


「どうしよう、試すの怖くなってきた……」




 とは言え、折角木刀1本使ったわけだし、やらないともったいないか?


 大体、現時点でパンパンってことは、今撃っとかないとやばいんじゃね?


 最悪、パーンってなるんじゃ?




 聖羅が近くにいる時ならそれはそれで試せるかもな?


 アイツなら多分俺が頭だけになっても治せる。


 いや、でもアイツ泣きそうだからやめとくか……。




 とりあえず小屋から出る。


 外は、竹林みたいになっているらしい。


 見た目は趣があるけど、竹ってどこまでも何もかも突き破って増えていくから嫌いなんだよなぁ……。


 ほぼグリーンモンスター。




 嫌いではあるけれど、流石に辺り一面火の海になったりとかはまずいだろう。


 ここは被害が小さめで威力が視覚化しやすい奴を選ぼう。


 なにがいいかな……。




 倶利伽羅剣と雷切じゃ火の海だ。


 ボルケーノ(母が命名)はそれこそヤバイ。


 カラドボルグなら、リミッター外して伸ばし、長さを測れば魔力量はわかりやすいんだろうけれど、まず長すぎて測れねぇ……。




 となると、後は村雨丸くらいしかないか?


 これで、どのくらい水を出せるかを確かめてみるか。


 普段だと、変に緻密な操作でもしようとしない限りは、直径5mくらいの鉄砲水みたいな感じまでなら出せた気がする。


 水を操るのがメインだから、出すのは正直この剣はあんまり得意じゃないと思うんだけどな……。




 さて、どのくらい出るかなー?




「っっっしゃおらっ!!!!!」




 おっとエレガントさが無かったな。




 出た水もエレガントさは無かった。


 直径30m程の水柱が正面に飛んで行った。


 地面も竹も何もかも押し流した……というか消し飛ばすように。




 あ、遠くの方できったねー泥水が弾けたのが見えた。


 どのくらい遠いのかも、あの爆発の規模もよくわからないけれど、とにかくヤバイ。


 神の世界で良かった。


 ……え?大丈夫だよね?神様の世界だもんね?


 あの程度の被害なんともないよね……?


 見た感じ、あの爆発だと小さな村なら消し飛んでそうな威力だったんだけど……。




「いい爆発じゃねーか!もっと爆発させやすい剣使ったらよかったのによ!控えめな奴め!」


「えぇ……?まあ怒られないならいいですけど……」


「この世界は、オレの想いのままに出来るからな!小屋だって吹き飛んでも戻せるけど、中にまだまだ剣が保管してあるから、元に戻すのめんどくせーだけでよ!」




 どうやら、竹林であればどれだけ破壊してもいいらしい。


 やはり神様はすごい。


 でも、この世界樹製木刀は、今後有効活用できる気がしない……。


 明らかに火力が高すぎて使いどころに困るぞ……。


 魔力使って戦ってる魔術師たちならすごい便利なんだろうけれども。




「あんまり使い勝手良くないっすわ……。もうちょい小出しに出来ればいいんですけどね。そもそも、俺普段から魔力が枯渇する事って無いんで……」


「んだよ……。折角作ってやったってのによ……。じゃあもうお前の女たちにやっちまえよ。それこそ俺の前任のバカ女神辺りなら大喜びする機能だぜ?」


「あー……確かにそれはそうかも……。でも、渡すたびに具現化可能枠が減っていくのはなぁ……」


「あー言えばこう言いやがって!じゃあもうガチャから70本目の剣を出したら具現化可能数2倍にしてやっからそれでいいだろ!?」


「え!?そんな事して良いんですか!?流石女神様!頼りになる!イエーイ!」


「お前……ワザとごねてただろ……?まあいいけどよ。あーあと、次来るときは何か供え物持って来いよ?アレだ!甘いもんと酒がいい!」


「俺の母親と同じような事言いますね」


「だってお前のかーちゃんはオレの眷属だしな」




 そうか……。


 この女神様は、酒の神バッカスでもあったのか……。


 火とか炉の女神って普通に考えたらお母さんキャラだもんな……。


 何を間違ってそれが剣を打ってんのか知らんけど、少なくとも俺の母親はこの神様の影響を受けているらしい……。


 確かにあの人も火の魔法バンバン使うもん。


 凄い強いもん。


 まあ、光も闇も氷もなんでもバンバン使うけれども。


 回復魔法だけ聖羅の方が上だけど。




「よし、そろそろ時間だな。さっさと戻ってオレの剣を有効活用しろ!楽しみに見てるからな!」


「わかりました。言われた通り、次来るときは甘いものと酒もってきますね。あれ?でも俺未成年だけど酒買えるんだろうか?」


「……確かに……いや、そこは何とかしてくれ!頼む!」


「そんな必死に頼まなくても……まあわかりました。それじゃあまた!」


「おう!」




 ―――――――――――――――――――――




「…………くん!大試君!」


「あ、会長……」


「ちょっと大丈夫?凄い集中してお祈りしてたみたいだけど……反応無いからびっくりしたわよ?」


「神様と交信してました」


「……お祓いする?」




 失敬な!


 本当に神はいたんですよ!


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