第55話
「管理システムの声は、もっとクールな感じで……!感情の一つも持っていないような……!そんな声で指示されるのが気持ちよかったのに……!なのにこんな……!?だって……可愛い声なんて!?どうしよう!可愛い!」
十勝エルフのアレクシアの情緒が壊れた。
よくわからないけれど、少なくとも普段の管理システムとやらの話し方とは違うらしい。
あと、どうやらアレクシアの性癖を刺激する声だったらしい。
普段の声も好きらしいが……。
『そこのエルフは、暫く静かにしていてください。ピリカは今、ヒューマンと話をしているのです』
「はい!やっぱりこの声がいいっ!」
「なんだコイツ……」
これが普段の話し方か。
まあでも、正直俺もこっちの声で命令される方が……。
『じゃー改めて!ヒューマンの皆!ピリカちゃんだよ!』
「ピリカ、俺達は、エルフの管理システムを維持するための手伝いを頼まれてここに魔石持って来たんだけど、これはどういう状況なんだ?ピリカには、具体的に何か問題でもあるのか?」
『大したことないよ!ちょっとエネルギー供給装置が破損している上に、念の為にエルフ3人に与えてた管理者権限が1人意識不明の重症の2人死亡で実質どうしようもなくなってるだけ!』
……何それ?
どうしろっていうの……?
『……どうしたらいいのです……?』
「本人にもわからんのか……」
『ピリカとしても、もうヒューマンに媚びを売って助けてもらうくらいしか思いつかないのです……』
あの喋り方は媚びを売っていたのか!?
それは……いや逆に無理してアレだったら個人的にはグッとくるけども……。
いや待て。
そういや、俺には心強い人工知能の味方がいたわ。
「アイ!管理システムをスキャンして問題点と改善策を教えてくれ」
『畏まりました』
『え!?もしかして、ピリカと同じ人工知能仲間がおられるのですか!?』
『肯定します。私は、テレポートゲートを管理する人工知能です。現在の管理者である犀果様より、アイという固有名を得ております』
『なるほど!それでは是非ご協力くださ……助けてねお姉ちゃん♡』
『……お姉ちゃん?』
今度は、アイにまで媚びを売り始めただと!?
必死過ぎだろ……。
いや、実際それだけ追い詰められているって事なんだろうけれど……。
『……エルフ管理システムの異常を検知。地下魔力収集炉が動作しておりません。機能自体が停止しているため原因特定不能。大気魔力収集装置によりここ100年程なんとか管理維持を行っていたようですが、こちらも現在多くが破損しており、それを修復するユニットも多くが機能停止中。原因は、鉱物資源の枯渇ではないでしょうか?部品の更新が適切に行われておりません』
『肯定するのです。ピリカがこの地を管理し始めて以来、周辺の魔物がエルフとの生存競争で強力になってしまい、強力なエルフが死滅した今となっては、外部へと助けを求めるのも困難となっています。1年前にダメで元々のつもりで1人に魔眼機能を開放し、使い捨てのステルス付与の魔道具を渡してヒューマンの街へと助けを求めに行かせたのが最後で、それ以降は自己保存と最低限のエルフ管理機能を維持するために、システムの大半をスリープ状態にしていたのです』
エルフを1人送り出してたのか。
そのエルフがどうなったのかは知らないけれど、この状況を見る限り結果は出ていなかったらしい。
まあ、それらはとりあえず置いておいて、問題はなぁ……。
「管理者権限、どうすんだ?」
『ピリカも、まさか長命なエルフが3人もまとめていなくなるなんて考えていなかったのです……。ある程度であればピリカ自身の裁量でなんとでもできますが、流石に自身の改造等は管理者権限が必要なのです……。地下の魔力流がズレて、地下魔力収集炉が機能できなくなった際に、移設するための許可を出してくれる人材が丁度流行り病で全滅し……』
「ふーん……。その管理者権限は、どうやったら他の者に委譲できるんだ?」
『管理者権限保持者2名による許可、もしくは管理者権限保持者1名とピリカ自身の許可です。ですから、管理者権限保持者が最低1人は必要なのです……』
となると、意識不明になっている管理者権限もってるエルフを治せば、とりあえずは何とかなるのか?
アレクシアが言うには、前の世代のエルフは強かったって言うし、管理者権限持ちのエルフさえなんとかしてあげれば全部解決したりして……?
なんたって、こっちには天下の聖女様がいるからな!
「俺に考えがある!」
『なんと!本当なのですか!?』
――――――――――――――――――――――――――――――
「ごめん大試、この人は治せない」
「何故に!?」
「この人が目を覚まさないのって、病気じゃなくてただの老衰だから」
「あー……流石に老化は治せないか……」
「老化しないように若さを維持する事ならできるんだけど……」
エルフにも老衰ってあるのか……。
しゃーない。
聖羅が実際凄い奴なのは俺がわかっている。
その聖羅に出来ないというのであれば、これはもう諦めるしかないだろう。
残念だけどな……。
「というわけで、他の方法を考えよう」
『お願いするのです!ピリカに出来る事ならなんでもするので……お願いねお兄ちゃん!』
「……お兄ちゃん?」
うん、悪くないかもしれない。
『犀果様。とりあえずは、定期的に魔石を魔力炉へ投入しておけば、しばらくは管理を維持できるのではないでしょうか?その間に、私の方で妹ピリカの管理者権限を解除できるように解析してみます』
「……妹ピリカ?」
…………………………………………まあいいか。
「じゃあとりあえずその方針で行こうか。こっちでも、魔道具とかに詳しい人たちにそれとなく聞いてみるよ。あと、今日も帰りに大き目の魔物倒して魔石回収しておくから、その内また届けに来るわ」
『ありがとうお兄ちゃん!ピリカ嬉しい!』
『私も可能な限りバックアップしましょう』
『お姉ちゃんもありがとう!』
すごいなぁ……。
流石高性能な人工知能……。
ここまで周りに媚びを売れるなんてどんな学習してきたんだか……。
何はともあれ、今の俺達にできることは現状維持くらいだ。
リンゼの家族に何とかならないか聞いてみたいけれど、こんな高性能なシステムについて尋ねても大丈夫なんだろうか?
「キミはその人間と殆ど差の無い程の人工知能を一体どこで見つけたんだい?」
みたいな話になったらどうしよう……。
この世界における現代の技術水準が分からないから難しいなぁ……。
少なくとも、普段生活している場所には、アイやピリカみたいなちゃんと受け答えができるAIなんて見なかったけれど……。
さて、今日ここでできることは終わったし、またでけー魔物倒してさっさと帰るかね。
「ところで、さっきから皆そこで固まって何しているんだ?」
聖羅たちが一塊になって、コソコソと何かを話し合っている。
チラチラとこちらを見ながらだから、何かを企んでいるのかもしれないけれど、さっさと帰ろうよ?
「おーい?」
「せーの……」
聖羅が掛け声をだして、周りにタイミングを合わさせる。
目の前には、超がつく美少女が何人も。
彼女たちが、各々あざとくポーズをとって、目をちょっとウルウルさせ、何人かは顔を羞恥で真っ赤にさせて。
そして……。
「「「「「お兄ちゃん……♡」」」」」
あっ
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