第52話
本日の献立は、「豚丼」です。
では、材料のご紹介。
まず、豚肉。
これは何でも良いです。
トンカツ用でも豚バラブロックでも豚コマでも。
お勧めは生姜焼き用とか書いてあるロース薄切り。
調味料は、砂糖と酒とみりんと醤油を全部適量。
お好きな味でどうぞ。
面倒なら焼き鳥のタレとかすき焼きのタレとか煮詰めて下さい。
完成後にサラッと山椒とかもええよ。
まず、豚肉を焼きます。
ある程度火が通ったら砂糖を入れて馴染ませてから、酒とみりんを入れて最後に醤油。
醬油は案外少なめの方がそれっぽくなります。
本当は、先に調味料だけでタレを作って、煮詰めておいた方が本格的な味になるけど、面倒なので……。
できたら、白いご飯に乗せます!
終わり!
「栄養バランスとか全く考慮しない料理なんだ」
「多めに野菜を入れた味噌汁でもあればいいんじゃない?」
「5分くらいあれば野菜育てられるよ」
「今日は、これだけでも十分なのではないですか?」
学園テレポートゲートに戻って来て、3人を残してスーパーで買い出しをしてきた俺。
宿泊施設にある調理場で料理をしてみたけれど、色々と意見交換をしながら食べている様子。
そこそこ気に入ったらしい。
「それにしても、あのエルフにはびっくりしたなぁ……」
「本当にエルフっていたんですね……」
「大試に涙と鼻水つけたから嫌い」
「まだ言ってんのか……」
未だにプンスコ起こりながら年頃の女性っぽくない豪快な食べ方をしている聖羅を放置し、明日どうするかを考える。
聞いた話通りなのであれば、魔石を渡すのは構わない。
だけど、何かでウソをつかれていて、集落に入った瞬間に矢でドーン!
なんてことになっても困るからなぁ……。
「魔道具に関する事なら、アタシの家族が詳しいわよ」
悩んでいると、あっけらかんとした様子でリンゼが言う。
お嬢様らしくお上品な食べ方をしながら。
「ガーネット公爵家は、魔道具作りの大家ですからね!」
それに同意する有栖。
お姫さまらしくお上品に豚肉の脂身を外しながら。
脂身嫌いだったか?
……あ、残しておいただけか……。
「リンゼの家ってそういうのだったのか。他の貴族たちと違って、名前が漢字じゃないのもそれ関係か?」
「そう言う事ね!私の先祖は外国からその腕を買われて呼ばれてきた魔道具師なの!」
まあ、何かしらそう言うのがあるんだろうとは思ってたけど、魔道具か……。
この世界は、発電施設からして魔石を使っているらしいし、そう考えると魔道具造りで強いということはかなり重宝されるんだろうな。
自動車だって、魔石を使って水を沸騰させたりしてるって聞いたし、アレも魔道具扱いか?
俺の剣だって、魔力を吸い取って効果を発揮しているんだから、扱い的には魔道具かもしれん。
「でも流石に、あんまり偉い人にこのテレポートゲートの事知られるのは怖いんだよなぁ……これ使わないとエルフの集落に連れて行けないし……」
「まぁ……そうよね」
「私の父上は、この施設を知ったら流石に放ってはおかないと思います……」
「アイも便利」
元々、テレポートには大量の魔力が必要で、チャージに時間がかかるという欠点はあったけれど、スマホにアイが入ってくれたことで、それをあらかじめチャージしておいてもらえるようになった。
つまり、モバイルでオーダーするかの如く着いてすぐ利用できるようになっている。
しかも、大昔からのデータが保存されたままになっていたため、きっと学者にとっては垂涎ものだろう。
『エルフの集落を管理するシステムであれば、恐らく私と同型の物であるとは思いますが、単体での性能はあちらが上でしょう』
「そうなのか?エルフの管理ってそんなに高い性能が必要なんだな」
『もちろんです。ただ、現在は私たちテレポートゲートが相互に並列化しているおかげで、単体ではなく全体の力で上回ることは可能であると推測します』
「へぇ……」
別に戦うわけじゃないんだから、そこで張り合わなくても良いんだけど……。
AI的には譲れない事なんだろうか?
「とりあえず、明日エルフの集落に行ってみて、何か魔道具関係で困ったことがあったらリンゼの両親にでもそれとなく聞いてみるか」
「構わないわ!多分アタシが聞けば、詳しく内容を話さなくてもちゃんと教えてくれると思う!」
「アイは明日、スマホを介して管理システムのスキャンお願い。何か問題が出てそうなら直してやらないとエルフは全滅しかねないし」
『畏まりました』
まあ、今のうちに決めておけるのはこんな所か。
エルフの集落自体が未知の場所なのに、それの管理システムの事なんてこれ以上考えてもどうしようもないわ。
豚丼食べたら、さっさと帰って寝ちゃった方が良いだろう。
だけど、大人しく豚丼を食べていた聖羅の言葉で、明日の計画も根本から変わってしまうかもしれない事になった。
「大試、気になってたことがある」
「なんだ?」
「あのエルフ、ナノマシンに感染させられているって言ってた」
「言ってたな」
「感染症扱いなら、私の回復魔法とか、大試の剣の力で治せるんじゃない?」
「…………あー……どうだろ……?」
もしそうなったら、もしかしてエルフを縛るルールが一つ消え去るのか……?
それが良いほうに働くのかどうかわからないけど……。
今日会った娘は、別に俺たちに対して敵対的というわけでもなかったけれど、他のエルフがどうかはわからない。
もっというと、次世代以降に問題が起きる可能性もある。
優秀な身体能力に任せて好き勝手人類を蹂躙し始めでもしたら、それこそ目も当てられない。
思ったより大きい問題か……?
「もし試すとしても、少数相手にこっそりって事になるだろうな」
「そう……大試がそう言うならそうする」
ナノマシンがどういう判定になるかは興味があるけどなぁ。
そもそもこの世界のナノマシンがどういう物かすらわからん。
タンパク質で作られてる奴なのか金属で作られてる奴なのか。
「いや……よく考えたらナノマシンだってこの世界だと魔道具なのか?」
「そうなんじゃない?流石にそんなものは家でも作ってないけど。ナノサイズまで行ったらもう殆ど存在自体が魔術の範疇だと思うし」
結局わからんな。
是非も無し。
「これ以上考えても仕方ないし、今日の所はお開きにしよう。ファムを呼んでっと……」
「にゃー……なんニャ?」
「3人を部屋まで送ってあげて。あと、豚丼おすそ分け。エリザにもあげて」
「わかったにゃ!!!!!」
食いものを上げた時だけ良い返事してくれるな……。
喜んでくれてるなら良いけども……。
「じゃあお休みー」
「「「おやすみ(なさいなさいませ)」」」
そして3人は、ファムに連れられてテレポートしていった。
俺は、皆の食器を集めて台所で洗う。
ただ洗っているだけでは退屈なので、アイと今日の出来事について話してみる事にする。
「いやぁ……まさかいきなりエルフと会っちゃうとは思わなかったよなー」
『言葉が通じてよかったですね』
「そういやそうだなぁ……」
『犀果様は、ああいう見た目の女性が好みなのですか?』
「好み……?うーん……まあ美人だとは思うよ?でも美人さで言ったら俺の婚約者たちだって全く負けてないからなぁ……」
『成程』
デレェっとしながら答える。
しゃーないだろ!だって俺の婚約者たちは美人なんだぞ!
『大変参考になりました。ありがとうございます』
「いいよいいよ。何の参考にするのか知らないけど」
『近々披露させていただきます』
「何か作ってるのか?楽しみにしておく」
『ご期待ください』
この時は、本当に軽いノリでしただけの返事だった。
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