第47話

「おいしい……おいしいよー……!1日ぶりのご飯おいしいー!」


「やっぱりニンゲンが作るチーズは最高ニャ。生ビールくらいとりあえずでぶち込めるにゃー……」


「悪いがそれには同意できない。俺は、チーズ無しのプレーンな牛丼の方が好きだ」


「何ニャ?戦争ニャ?使役してるからって舐めてるニャ?」




 全力ダッシュで牛丼を買ってきた俺です。


 ファムへの報酬もそうだけど、夕食の時間終わっちゃってたから、理衣さんのためにも必要だった。




 まあ、牛丼を選んだ1番の理由は俺が食べたかったからだけど……。




「……さて、とりあえず腹が満たされた所で、そのギフトをある程度使えるようにしておかないとまた同じ事になるよな?」


「解除はできるようになったけど、どうして猫になったのかはわからないんだよねー……」




 他人事だからナデナデしてぇって程度のわくわくさで終わるけど、そりゃ本人からしたら溜まったもんじゃないよなぁ。


 昼寝から目覚めるとデカい猫だからなぁ……。




「そもそもの話、ラッキーガールの効果が今の所わかってないんだよな。まさか本当にラッキーすけべを起こすものではないだろうし」


「そんなのだったら私、女神様を呪うよ……」




 因みに、その女神様は今、恐らく寮の部屋でゆっくりしている。




「検証するなら、やっぱり招き猫方面で攻めるべきだと思うんだよな」


「うん……流石にもう男の子におっぱい見られたくないもん……」


「ごめん」


「うん……」




 ギフトの検証ってどうやるんだろう?


 本人すら全くわかってないとなると、難しそうだなぁ。




「……いやいやいや、よく考えたらもっと簡単にわかる方法あったわ」


「ホント!?私もう猫にならなくていい!?」


「それはわからない……まだラッキーすけべがメインの可能性も捨てきれないし……」


「うー……!」




 こっちには、元女神がいるんだ!


 ソイツに聞けば詳細も多少はわかるだろ!


 寮の部屋でゆっくりしてるんだしな!




「まあさ、今日の所は夜も遅いし部屋に戻ったら?」


「それもそうかも……早く服が着たいし……」


「ファム、部屋に送ってあげてくれる?」


「わかったニャ。確か、リンゼと同じ寮だったニャ?」


「うん!そうだよー!」




 ……ん?


 リンゼと同じ寮?


 あそこって上位の貴族用だよな……?




「理衣さんって、結構なお偉いさん?」


「うーん……?猪岡侯爵家だけど、私自身が偉いってわけじゃなくて、お父さんが偉いだけだから……。私自身は、姉妹でも下の方だからそんなにでもないよ?」


「マジか……すごい牛丼が似合うから俺と同じ男爵辺りかと……」


「えー!?そうかなぁ……似合っちゃうー?えへへ……」




 まさか喜ばれるとは思わなかった!


 でも、親しみやすさは美徳だよな?


 うん!


 寧ろ、男子人気は高そう……。




「とりあえず、今夜の内に心当たりに聞いてみるから、今日の所はゆっくり寝てくれ。明日、もし猫になってたら部屋で待機しててくれ。学園に来てなければ、またファムに迎えに行ってもらうよ」


「うん!ありがとー!」


「侍女使いが荒いニャ……」




 さてと。


 このご令嬢は気がついてないみたいだけど、今現在非常に大きな問題があるんだよなぁ。


 ギフトの事とは別にさ。




「理衣さんは、まずは昨日の夜から行方不明になっていた言い訳を考えておくことをお勧めする」


「…………あー!どうしよう!?怒られちゃう!?」


「怒られるだろうねぇ……」




 理衣さんは、「武者修行してたら1日過ぎていたって事にする!」って言ってファムに送られていった。


 多分その説明でも怒られると思う……。




 まあいいや。


 その辺りは俺の考える事じゃない。


 俺は俺でやれることをやろう。




「もしもしリンゼ?ちょっと聞きたい事があるんだけど」


『……こんな時間に電話かけてくるくせに、まったくイチャつく内容じゃなさそうで腹が立つ!』


「え……それはごめん……」




 電話越しにペコペコ謝りつつ、今日の出来事と合わせて理衣さんについて聞いてみる。


 俺の予想だとゲームの方のネームドキャラの1人だと思うし、そうじゃないとしてもあのギフトを作ったのはリンゼか、もしくは後任の女神様だろう。


 説明を頼むのにこれ以上の適任者はいないだろうさ!




『何そのラッキーガールって?』


「マジかよこいつ」




 まさかの情報なし。




『理衣なら知ってるわよ?あの娘は2作目のサブヒロインだし。人気投票だとメインヒロインと殆ど同じくらいの順位だったもの。でもそのギフトは知らないわ』


「そうなのか……。むしろギフトの内容を知りたかったんだけどな……」


『2作目は、ギフトって要素が無かったのよ。だから、この世界に2作目のキャラが生まれたらランダムで珍しいギフトが送られることになっていた筈よ』


「そして、その珍しいギフトの内容をお前は知らないと?」


『そう言う事ね!大体もうアタシ管理者じゃないし!』




 そう言う事なのね……。


 じゃあどうしろっていうのよ!?




『ランダムのギフトって言っても、ゲームの理衣と全く違うものにはならない筈よ。今回のその猫化だって、ゲームの中にあった展開だもの』


「そうなのか?その時はどうやって解決したんだ?」


『主人公が新たな力に目覚めて、メインヒロインと一緒に理衣に憑りついてる猫の怨霊を祓うのよ』


「つまり、2作目の主人公とメインヒロインを連れてくればいいのか?」




 なんだ、解決策あるんじゃないか!


 早く言えよ!


 心配して損したわ。




『2作目の主人公の名前は竜司っていうんだけど、聞き覚えない?』


「竜司……?いやあんまり……」


『アンタが……アタシを守るためにぶっ飛ばした奴よ』


「あー……、じゃあもしかして奴は……?」


『退場してるわね』


「ならせめてメインヒロインを……」


『メインヒロインは先輩キャラなのよ。それで、今死んだように寝てるらしいわ』




 なんか聞いた話だな?


 つい最近……というか今日!




「もしかして、会長か?」


『そうよ。協力させる?』


「やめとこう……ファムに理衣さんのサポート頼んであるし、人間に戻る事はできるようになったらしいから何とかなるでしょ」


『それがいいわね。2作目は、1作目と共通のキャラも割と出てくるし、1作目のキャラも2作目では全く違う行動してたりで複雑に絡み合ってるはずだから、その内勝手に解決するかもしれないわよ?』


「そう願いたいな……じゃあもう時間も遅いし電話切るぞ」




 俺は俺で明日も学校だし、リンゼも当然そうなんだから寝た方が良いだろう。


 そう思ったんだけど、何故かすぐには返事が返ってこない。


 寝落ちか?


 って思ったけど、どうやらそうではなく少し考えてただけらしい。




『もうちょっとだけ、このまま話しなさいよ……』


「……そう言われると、なんか、緊張するな……。もしかして、女の子に夜電話するのは結構凄い事なのでは……?」


『そうよ……自覚しなさい。しかも相手は婚約者よ?ドキドキさせた責任とって、しばらく付き合いなさい!』


「わかった……。じゃあ聞きたかったことあるんだけどさ」


『何よ?』


「この前さ、前世から俺の事知ってたって言ってたけど、その辺りについて俺は心当たり多いわけではないんだが……やっぱりリンゼってアイツの妹の凛是ちゃ」


『結婚したら教えてあげるわ!おやすみ!』




 それを最後に一方的に切られた!


 俺をドキドキさせてからのそれは酷くない!?


 解せぬ!




「なぁアイ、世の中って難しいな」


『私には通話の内容を殆ど理解できませんでしたが、恋愛感情というのは興味深いですね』


「その反応良いな!その内に人の心を理解して電子の妖精と化したりしてな!」


『言葉の意味はあまり理解できませんでしたが、鋭意努力させていただきます』




 こうして、結局大して何かが解決したわけでもないまま今日が終わってしまった。


 主人公いなくなりすぎなんだよなぁ……。






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