第37話
ファムは、エリザとリンゼに任せた。
後で俺の制服だけ返してくれ。
じゃないと、明日俺は蛮族スタイルで登校することになる……。
それはそれとして、俺にはまだガチャチケが4枚ある。
残りを誰に引いてもらおうか……。
まあ、2人はもう決まってるんだけどな。
今の所、この集団で俺と会話したことある女子は、ガチャを引いた人間を除くと残り2人しかいないから……。
「というわけで、マイカ頼む!」
「……えっと……この紙を破ればいいんですか……?」
「そう!マイカの運に期待してる!」
「……期待して頂いてもお応えできるかは……えいっ……!」
そして出てきたカプセルを開ける。
早速説明書きを読む。
クラウ・ソラス(SSR):試練を乗り越えた物に神が贈る光る剣!光で攻撃する!光は射程距離が長く貫通力もすごいけど効果範囲が狭いため弱点を狙わないといけない!装備時に身体能力を100%増加!
おー!SSRだ!
だけど、使いにくそうな性能してるな……。
ん?てかこれ、もしかしてマイカなら上手く使えるんじゃね?
「マイカ、これちょっと使ってみてくれるか?狙撃武器みたいなんだ」
「……狙撃ですか……?わかりました……」
マイカに今出た剣を譲渡する。
マイカの魔眼と遠距離魔術は、併用すると体調を崩してしまうらしいけど、この剣なら処理するのは剣の方だし大丈夫なんじゃないだろうか?
「……わ!?これ……すごいです……!」
そう言って、彼女は遠くの木の幹を指さす。
近寄って見てみると、ハートマークの小さい穴が穿たれていた。
覗いてみると、幹の反対側が見える。
やべぇぞこれ……。
「気に入ったか?俺だとあんまり上手く使えそうになかったから、活用してくれ」
「……いいんですか……!?その……ありがとうございます……!」
うんうん。
これで便利なスナイパーがさらに便利になったぜ……!
ところで、さっきクラウ・ソラスを出した時に「ガチャから10種類の剣を入手した記念に具現化可能枠を20に増やします!」って声が頭の中に響いたんだけど、これって……。
とりあえず、木刀を限界まで具現化してみる。
すると、既に具現化している本数と合わせて丁度20本になった。
現在、俺が消さないようにしている剣は、有栖に譲渡しているエクスカリバーと、聖羅に譲渡している木刀と、エリザを召喚使役するために出しっぱなしにしている聖剣ホーリーグレイル(元・魔王剣デモングレイル)と、今回新たに出た猫丸とクラウ・ソラス。
つまり、5本の剣が具現化した状態でキープされている。
しかもその内3本は、譲渡してしまっているから俺の身体能力にプラス補正は掛からない。
だから、俺自身が普段使える枠は残り5つ。
10本までしか具現化できない以上大分戦いの幅が狭まってきていたけれど、それが20本まで拡張されるという事は、相当な強化になりそうだ!
50本以上剣を出して、やっと10種類ってどういうことだよ!という文句もこれなら言わずに我慢できる。
今後も枠は増えるんだろうか?
……増えるとして、ガチャから20種類の剣が出るまでどれだけの時間がかかるんだろうか……?
まあいいや!気にしない!
「次は、佐原京奈さん!」
「あのさ、私の事も皆みたいに名前で呼んでくれていいんだよ?毎回フルネームじゃなくても……」
「それで覚えちゃったから……。京奈、頼む!」
「はいはい!じゃあビリッと!」
村雨丸(SSR):すごい水が出せる退魔の剣!超常的な存在へのダメージが100%上昇!装備時に身体能力を100%増加!
「すごい!またSSRだ!ありがとう京奈!」
「はいはい、これでこの前のイノシシのお礼とでも思ってくれたら嬉しいな!」
「わかった!十分!」
説明を読む限り、SSRでは珍しく使いやすい性能をしていそうだ。
今までの、出すだけでボーボーとかビリビリとうるさくて目立つような奴ではなく、水ならまだマシだろう。
それに、これさえあれば水が無くなった時にこれ使って水が出せる……って理解で良いんだよな?
ちょろちょろと出るだけって事は……いや、すごい水が出せるって言うんだから、それこそ川のように出せるんじゃないか?
あとで、実験しておかないとな……。
あーわくわくするなぁ……。
……『すごい』って、色んな意味がある日本語だよな……?
いや大丈夫だ!きっと量のはずだ!
実は呪われていて、何故かはわからないけど赤い水がじょろじょろ出てくるだけだったりしたら……。
まあ考えても仕方がない。
今度実験するだけさ。
それより、残りはチケット2枚。
どうしたものか……。
もう今ここに集まってるメンバーで話したことがあるのにガチャ引いてもらってない奴がいない……。
あ、そういやファムは……いやでもアイツ運悪そうだな……。
なんか、ブラック企業で揉まれてきた哀愁を感じるもん……。
そんな事を考えながらもバスに乗って学園まで戻る。
今日も皆で合宿という事でバスで砦に送ってもらうと、今日は今日とて会長がやって来ていた。
目の下のクマがすごい。
「やぁやぁ!頑張っているみたいね皆!」
「会長もお疲れ様です。あ、ちょっと失礼」
そう言って、疱瘡正宗を具現化してちょんちょんと頭に柄を触れさせてみる。
すると、一瞬で目の下のクマが無くなった。
疲れたな……という気持ちや体力まではどうにもできないけど、寝不足という症状ならこの刀で治せる。
俺もよく訓練に疲れたら使っていた。
眠気が覚めてなんとなく楽になったような気がするだけだったけれど、それだけでも集中力は回復するから。
「……え?大試君!これすごくない!?」
「でしょう?流石に目の下真っ黒にしてる人を放っておくのも心が痛むので……」
「ありがとう!本当にありがとう!何かお礼いる!?なんでもいいよ!?キスでもしようか!?」
予想以上にテンションを上げてしまったようだ。
そんな辛かったのか……?
でも、ちゅーは好きな人としてください!
そういえば、会長も侯爵家の人間なんだからガチャでいい結果でるかも?
いや、でも運はあんまりよくなさそうというか、ここ数日は何故か幸薄そうで放っておけないって言うか……。
まあいいや、頼んでみよう。
俺は、会長にガチャについて教えた。
「なので、お礼してもらえるというなら、これを破ってくれませんか?」
「そんな事でいいのね?わかったわ。いい剣が出てくると良いんだけど……」
そして出てきた剣だけど……。
三好左文字(SR):凄い切れ味!この剣は所有者と仲が良い者へであれば譲渡しても自分への身体能力補正は継続される!装備時に身体能力を50%増加!
へぇ……。
こういうのもあるのか……。
これはこれで便利だな!
できれば、10本制限が解除される前に欲しかったなぁ……。
「会長、すごい便利なのが出ました!ありがとうございます!」
「そんな事で礼を言う必要はないわ!寧ろお礼だったのだから!さぁて、気分転換のサボりもする必要もなくなったし、これで帰るわね!」
そう言って走り去る会長。
嵐みたいだったな……。
にしても、今日だけで随分新しい剣が手に入ったぞ!?
もっと早く、いろんな人に引いてもらってればよかったな……。
……開拓村じゃ無理か。
悲しい……。
荷物をバスから降ろして砦の中に持っていく。
他の女子たちの荷物もあるけれど、本人たちは既に魂が半ば抜ける程の疲労がたまっているようなので、了解をとってから俺がどんどん運び入れていた。
最後の荷物を砦内にいれてしまい、最後のチェックとしてバスの座席周りや荷物スペースを確認して歩く。
今回も俺の役割は比較的楽だったし、体力も残っているからこの位はやっておこう!
……最後のガチャチケ、誰に引いてもらおうかなぁ……。
「犀果大試、少し良いだろうか?」
チェックを終えてバスから降りると、横から呼び止められた。
そちらを見ると、こんな所にいるのはおかしいだろと怒鳴りつけたくなるような相手がいた。
「わかっているとは思うが、私は第2王子宏崇だ。犀果大試、君に折り入って話したいことがある。店を予約しているから、同行してくれ」
男からデートに誘われてしまった。
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