第7話 学園編(3)休日の過ごし方
「おはようございます!」
そう俺に挨拶をしてきたメルスの顔を見て
「おはよう」と俺は返した。
昨日の夕方に皆で入寮し、その後、寮の食堂でティア達とも合流してみんなで一緒に夕食を摂ったのだった。
食堂のメニューはクレア星の文化にちなんだメニューがほとんどで、ライドの説明を聞きながらみんなで色々なメニューを選んだ結果、みんな肉料理にも少しずつ慣れてきたようだ。
そうそう。俺達Aクラスにあてがわれた学生寮の部屋は、なかなかに充実していたぞ。
俺の部屋は2LDKの間取りで、贅沢しなけりゃ4人家族とかでも住めそうな広さだ。キッチンがあるので「自炊」もできるって事だな。
寮の1Fに食堂があるので、自炊なんてしなくても食事に困る事は無いが、自室のキッチンはどちらかというと、惑星開拓に必要な「調理の技術を自室で研究できる設備」と考えた方がいいのかも知れない。
リビングダイニングはあるが、ソファがあってテレビがあるといった感じでは無く、誰かと歓談する為のテーブルと椅子があるだけで、他には何もない。
テーブルは大きめで、8人くらいで食事ができそうなサイズだが、これもどちらかというと、何かの「作業台」として使う事が多くなりそうな気がしている。
残り二つの部屋のうち、一つはただの寝室だ。
いつもの睡眠管理機能が備わったベッドがあるので、どんな興奮状態だったとしても熟睡できるようになる。おかげで今朝もスッキリ目覚めた。
もう一つの部屋が俺のお気に入りで、なんと「重力制御機能」がある部屋だ。
部屋の中には何も無く、四角四面のただの部屋にしか見えないのだが、デバイスで操作する事で、部屋の重力を自由に設定できるのだ。
要は、ここで他の惑星の重力を体験しましょうって事なんだと思うけど、俺はこの部屋で体力作りができるのがめちゃくちゃ気に入っている。
重力制御装置を起動すると「どの惑星の重力を選択しますか?」って表示が出て、ズラっと各惑星の名前と重力が表示される。
惑星の情報は800万近くあるので、まだどんな惑星が存在するのかについては調べていないのだが、リストは「重力の強い順」に並んでいて、クレア星の重力を「1.000」とした場合の惑星の重力の比率で表示されていた。
ちなみに、クレア星より重力の強い惑星は、1つしか無いようだ。
一番重力が強い惑星が「レプト星」になっていて、その重力比は「3.201」だそうで、クレア星の約3.2倍の重力があるようだ。
レプト星って、確か犯罪者を収監する為の惑星だよな。
クレア星の3.2倍って事は、プレデス星の7.7倍近いって事だから、かなりキツイ重力だ。
こりゃ、収監された罪人も、おいそれと脱獄は出来そうに無いな。
ちなみに昨日の俺は、食後みんなと別れて寝るまでの間、ずーっと「重力制御の間(と俺は名付けた)」で筋トレしてたんだよな。
「よう、ティアとシーナもおはよう!よく眠れたか?」
メルスと1Fの食堂に入ったところでティアとシーナの姿が見えたので声をかけた。
「ショーエン!おはよう!」
とティアは元気そうだ。
「おはようです」
とシーナはティアの声にかき消されそうな声で返していた。
「あれ? ライドは一緒じゃないの?」
とティアは俺達が2人しか居ないのを見てそう言った。
それにはメルスが反応し、
「ああ、声をかけようと思って部屋には行ったんだけどね。もう部屋には居なかったんだよ。たぶん、もう食堂に来てるのかと思ってたんだけど・・・」
と食堂の中を見回すように視線を動かした。そして、視線の先にライドを見つけると、
「あ、ほら。あそこに・・・」
と言って言葉を切った。
どうしたのかと俺もメルスの視線の先を見てみると、食堂の窓際のテーブル付近にライドが立っていて、誰かと話をしているようだった。
話相手はどうやら、同じクラスの男女のようだ。
名前は何だったかな、とにかく昨日の試験の時に、俺の右前にいた金髪を短くカットした少年と、俺の右隣に居た栗毛の少女の二人だ。
「あれって、同じクラスの人だよね」
とティアも視線を窓際に向けて言った。
「あれは、ランキング4位のイクスと、ランキング5位のミリカです」
とシーナがティアの方を見て言った。
窓際のライドとイクスとミリカ。特に揉めてるわけでもなさそうな様子だ。
「とりあえず朝食を選んでから、ライドが居るテーブルで一緒に食べようぜ」
と俺が言うと、みんなも賛成して注文カウンターに向かった。
今日の俺の朝食は、赤いスープとコッペパン。あとはサラダとベーコンとスクランブルエッグだ。
赤いスープはミネストローネみたいな感じで、酸味のあるトマトの様な香りがしていたので、コッペパンにサラダとベーコンを挟んで、少しスープを掛ければサラダドッグみたいになるんじゃないかと思う。
他のみんなもそれぞれメニューを選んでトレーに乗せ、ライドのいるテーブルへと歩み寄った。
「よう、おはようライド」
と俺は3人が話しているのも構わずに声をかけた。
ライドはこちらを見て
「あ、お、おはよう・・・」
と返してくれた。
イクスとミリカもこちらを向き、二人とも驚いた表情で固まってしまった。
「よう、お二人さんも、おはようさん」
と俺はイクス達にも挨拶をすると
「あ、お、おはようございます!」
とイクスもミリカもバネ仕掛けの人形の様にお辞儀をして挨拶をした。
なんだか随分緊張しているみたいだな。
「ライドはもう朝食は済ませたのか?」
と俺が訊くと、
「い、いえ、まだ・・・」
としどろもどろに応える。
うーん、ライドもまだまだコミュ力に難アリだな。
「そうか、じゃぁ、早く注文して来いよ。一緒に食べようぜ」
と俺は言ってから「イクスとミリカさんだっけ? あんたらも朝食がまだなら、一緒にどうだい?」
とイクス達にも声をかけた。
イクスとミリカは目を丸くして顔を見合わせ
「よろしいのですか!?」
と俺の顔を見て顔を輝かせている。
「ああ、せっかくクラスメイトになったんだから、みんな仲良くやろうぜ」
「は、はい!すぐに朝食を注文してきます!」
と、重力をものともしないライドの動きに無理やり付いていく形でカウンターの方に向かって行った。
はは、ほんとプレデス星人って、別の星に行ったらコミュ障扱いされそうで心配になるぜ。
俺達はライドたちが朝食を持ってくるまでの間、何でもない雑談をしながら過ごし、ライド達が戻って来てから一緒に朝食を食べた。
一番最初に食事を終えたティアは、
「ねぇ、イクスとミリカは何を目的に惑星開拓団を目指してるの?」
と話しかけた。
始めに答えたのはスープを飲み終えたミリカだった。
「はい、私は衣服について研究をしています」
「衣服?」
とティアは不思議そうな顔をした。
「はい。ティアさんは、私たちが着用しているこの衣服に疑問を感じた事はありませんか?」
「ええ? そんな事考えた事も無かったけど・・・ いったい何が問題なの?」
「実は、私は子供の頃から、衣服の発祥について疑問を抱いていたんです」
とミリカは遠い目をして宙を見つめた。「私が成人した時、私の中で芽生えた感情がありました。それが何なのかは分かりません。ただ、その感情を制御しようと身体を動かしたり、色々な事を試していた時に、誤って果物の果汁を衣服にこぼしてしまったのです。その時に衣服にこぼした果汁が見せた模様を、何故か、私は美しいと思ったのです」
ティアは首をかしげながらその状況を想像しているようだが、
「模様ねぇ・・・」
と、あまりしっくりこない様子だった。
シーナに至っては興味さえ無さそうにしている。
だが、これは・・・
俺はひとつ思いついて口をはさんだ。
「なあ、ティア。俺はミリカの言う事はよく分かるつもりだぜ」
するとティアは驚いて俺を見て、
「本当に!?」
と身体ごとこちらに寄せてきた。さらに興味無さげだったシーナまでが
「ショーエンがそう言うのなら私も知りたいです!」
と、よく分からないトリガーが発動しているようだった。
「うーん、つまりだ・・・」
と俺は言いながら立ち上がり、自分の着ているローブのダブついたウエスト部分を両手で左右に引っ張り、引っ張った生地の両端を結んで丁度ヘソの前あたりに結び目を作って見せた。
すると、俺の身体はウエストがくびれた様なシルエットになり、お腹の部分にリボンが付いたようなアクセントが付いた。
「例えば、こうしてローブのウエスト部分を絞るだけで、着ている人の体形を上半身と下半身に分けて表現する事が出来るのが分かるか?」
ティアとシーナはポカンとして俺を見ていたが、ミリカは驚いた様に目を丸くして、
「凄い! これは今まで考えた事もありませんでした!」
と立ち上がり、「まるで衣服の上下が分かれている様に見えますね!」
と言った。
「なるほど!確かにそうね」
とティアも続く。最も的を得た反応をしたのはシーナで、
「ショーエンが逞しく見えるのです」
と言った。
「シーナ、それだよ」
と俺はシーナの方に視線を向けた。
「それ、といいますと?」
「そうだな、シーナに一つ質問だ。俺が逞しく見えたのは、何故だ?」
「それは・・・」
とシーナは少し考えてから「腰が引き締まった事で、衣服を着ていても筋肉質な身体が想像出来るからだと思います」
俺は心の中でほくそ笑んだ。
分かっちゃいたが、やはりこいつらは感性の無い人形なんかじゃない。
「さすがシーナだな。 例えば俺達は、寝る時も勉強をする時も、遊ぶ時も仕事をする時も、いつも同じ衣服しか着ていない。それは、寝る時はベッドに装備された睡眠誘導機能があるからだし、勉強の時間も仕事の時間も、いつもデバイスが時間の管理をしているから、気分を変える必要性を感じて来なかったからだ」
そう言って俺は両手を広げて辺りを見回した。「でも、ここはどこだ? そして俺達は何を目指しているんだ?」
それにはメルスが応えた。
「惑星開拓団の一員になる事を目指しています」
「だよな? 惑星開拓団の一員になって、まだ技術が進歩していない惑星に行ったとして、そこに睡眠誘導機能のついたベッドがあると思うか? まだ荒地かも知れない大地を移動通路で運んでもらえると思うか?」
「いえ、きっと無理だと思います」
とこれにはミリカが応えた。
「だよな。なら、就寝時用の衣服、険しい大地を歩きやすい衣服、そういった衣服が必要になるとは思わないか?」
「確かに・・・」
やっとティアも理解したようだった。「つまり、デバイスに頼れない環境を補完する衣服が必要になる、という事ね」
俺は頷いて、
「そう。事実、宇宙船に居た乗組員は宇宙専用の服を着ていたからな。でもまだ半分だ」
と言って「でも、残りの半分については、また改めて話す事にしよう」
と一旦この話題を区切る事にした。
残りの半分は「オシャレ」の講義をする事になるが、これは最終的に恋愛感情や生殖行動に至るまでのストーリーを話さなければならなくなるので、朝食時にする話ではないと思ったからだ。
「じゃ、次にイクスの話を聞かせてくれよ」
俺はイクスに話を振る事にした。
「あ、はい。僕の研究は、食糧についてです」
とイクスは話し始めた。
「これから知らない惑星に行く事があるとすると、プレデス星では考えられない様な食事をする事になると考えています。その惑星にしか無いような食材でも人間が健康的に食す事が出来るようにする事が研究テーマなのです」
ふむ。まぁ、それは必要な事だろうが、いまひとつパンチが効いてないテーマだな。
そこで俺は一つの提案をする事にした。
「なぁイクス。事実、クレア星の食材がプレデス星とは全然違う事は俺達全員が今感じている事だと思うが、それを美味しく食べられる様に調理する事も研究する気は無いか?」
「美味しく・・・ですか?」
「ああ、美味しく、だ」
「つまり、調理法についての研究という事でしょうか?」
「それもある。もちろん食材の研究も必要だし、調味料の研究も必要だ。あと、それと並行して発酵という概念が俺は必要だと感じている」
「発酵・・・といいますと?」
「端的に言えば、食材を適度に腐らせるという事なんだが」
「食材を腐らせる? それでは食べられなくなってしまいますし、プレデス星の法で禁じられています」
「おいおい、今更プレデス星の法なんて持ち出すなよ。プレデスの法を持ち出せば、俺が今こんな言葉で会話している事もプレデス星の法に触れる行為だぜ?」
俺はイクスの方に身体を乗り出し「惑星開拓をするって事は、俺達がその星の法を作るって事だ。新しい技術ってのは、いつも法の外にあるもんなんだ」
イクスは少したじろいだ様子で、
「それは・・・そうですが・・・」
「俺が独自に研究した限りでは、発酵させた食材は、人間の身体に不可欠な栄養素をものすごく効率的に吸収させる事が分かっている。お前が本気で食材の研究をするのなら、俺も色々なアドバイスが出来ると思うぜ」
まだたじろいだ様子のイクスに、シーナがたたみかけた。
「ランキング断トツ1位のショーエンの提案が聞けない人は、私たちの仲間にはいらないのです」
「ええ!?」
それはイクスの絶望の悲鳴にも似た叫びだった。
「そ、それは・・・ わかりました。ぜひ研究させていただきます!」
シーナ、お前って意外とえげつない事を平気で言うのな。
俺は心の中で、このコミュ障集団をどうやってまとめていくべきか、本気で悩む事になりそうな不安を抱え始めていたのだった。
△△△△△△△△△△△△
朝食が終わって皆は一旦各自室に帰る事にした。
俺は今日はメルスとライドを連れて学園内を見て回るつもりで、デバイスを使ってメルスとライドに学生寮のエントランスに集合する様にメッセージを送っていた。
俺は待ち合わせの時間前にエントランスに着いてメルスとライドを待っていた。
そこにティアが手を振りながらシーナと共に近づいてくるのが見えた。
「ねえ、ショーエン。今日は一日自由行動じゃない? 一緒に学園内を見て回らない?」
と声をかけてきたのはティアだ。
シーナも、
「もちろん私も付いていくのです」
と言っている。
まぁ、ティアの積極的な誘いを断る理由も無い。
「ああ、いいぜ。今メルスとライドを待ってるところだから、あいつらが来たら一緒に行こう」
そうしているうちに動く歩道に乗ってスイスイやって来るメルスとライドの姿が見えてきた。更にイクスとミリカも一緒に居るようだ。
「お待たせしました。ショーエンさん」
とメルスが言いながら「イクスとミリカもご一緒したいと言って付いて来てしまいましたが、良かったですか?」
と続けた。
「ああ、もちろんいいぜ。せっかくだから、みんなで行くか!」
俺達は7人で学園内を見て回る事にした。
この学園に来た時にバスの中でも感じた事だが、この学園は、長い塀に囲まれた城塞都市のような街の中にある。
昨日は色々な倉庫や研究所の様な巨大な建物全部が学園の施設だと思っていたが、実はあれらは「惑星開拓団」の施設だという事が分かった。
俺達は今は「候補生」という扱いだが、3年生になるあたりから、優秀な生徒は「実習生」として惑星開拓団の行動に参加する事もあるらしく、そうした実践的な訓練を行う為の施設として、あのような巨大な研究所や倉庫があるようだ。
教室棟は昨日の5階建の建物だけなので、学舎自体はたいして大きな施設では無いようだ。
塀の中にある街のようなところは、まさに「街」で、俺達が買い物をしたりリフレッシュしたりできる施設があるらしい。
飲食店やリフレッシュセンターがある他、惑星体験アトラクション等もあるようで、既に人間が移住するに至った千を超える惑星の生活環境を疑似体験できる施設もあった。
これは「近いうちに利用しよう」と皆とも話し合い、いつでも来れる様にデバイスに施設の場所を登録しておいた。
街では調理器ショップを見つけたので、俺は少し調理器具を購入しておいた。ほかにも食材ショップを見つけたのだが、地球で言うスーパーマーケットの様な品揃えだったので、調味料として塩と砂糖を買っておいた。
というか、調味料の種類が塩と砂糖しかないのだ。
プレデス星の法で「発酵」という食材加工は禁忌とされているようだから、酒も無いし、調味料不足は致命的ともいえる。
元日本人の俺としては、味噌や醤油は何が何でも作りたいところだ。
俺も試してみようとは思うが、せっかくだからイクスに作らせるのが今後の為にもいいだろう。
衣服についてはミリカに色々研究してもらうつもりだが、街にはローブしか売っていない。参考になるファッションが無いので、これは俺がある程度参考資料を作ってやる必要があるだろう。
既に開拓された惑星の中に地球が含まれているかどうかは分からないが、俺が思うに既に開拓された惑星の中にあるはずだ。
地球にいた時に様々な本を読んできたが、神話について記述された本の中に出てくる「神」と呼ばれる存在の挿絵を見ると、神々は皆一様に同じようなローブを着ていた。
そう、まるでプレデス星やクレア星の人々が着ているローブそのものだ。
そこで俺は、一つの可能性としてこう考えているのだ。
惑星開拓団が開拓した星で、俺達はその星の「神」になるのではないのか?
と。
例えば日本古来の書物「古事記」にもそうした記述がある。
ちゃんと覚えている訳じゃないが、古事記の流れは確かこんな感じだ。
始めは混沌だけがあった。そこに3柱の神が現れ、天と地を分けた。地は海しかまだなく、次いで2柱の神が現れ、それが「イザナキノミコト」「イザナミノミコト」の男女の神だ。海に陸が生まれ、夫婦の契りを交わした二人の神は、次々と国を産み落とす。そこに生命が生まれ、やがて人を生み、人を統治する王を生んだ。
だったか?
神は一人じゃないし、天から降って来るってところも踏まえて考えると、それは宇宙から来た惑星開拓団のメンバーじゃないかって考えに至るのも必然じゃないか?
俺はその考えに至る度に情報津波を試してみるのだが、これがなぜかうまくいかない。
情報津波は万能じゃないのだ。
何故か情報にセキュリティがかかっているかのように「引き出せない情報」というものがある。
アカシックレコードの情報を得られない事もそのひとつだし、惑星の誕生に関する情報についてもそうだ。
生き物かどうかに関わらず物質について様々な情報を得られる割には、宇宙規模での情報を得ようとすると、情報津波が発動しないという事が多い。
まったく、発動基準くらいは明確に知っておきたいぜ。
「今日は楽しかったね」
一通り学園や街の探索が終わり、学生寮に戻る途中でティアがみんなの方を向いて言った。
「ええ、本当に楽しかったです」
とイクスとミリカが応えた。
「私はショーエンと一緒ならどこでも楽しいのです」
とシーナはどうやら俺に心酔している雰囲気だ。
「僕も同じ気持ちですよ」
とメルスもシーナに共感している様子だ。
「ぼ、ぼくも」
とライドも徐々にこの集団に馴染みだしているらしい。
「明日からは授業もあるし、俺達の本当の学園生活がこれから始まるんだな」
俺はみんなに聞こえる様にそう言い、「ところで、今日の夕食はどうするんだ?」
とライドの方を見て言った。ライドは、
「食堂で魚料理を食べたいです」
と自己主張できる程度には打ち解けてきたようだった。
「お、いいねぇ。ライドのお勧めの魚料理を教えてくれよ。今日は俺もそれを食べる事にするぜ」
「は、はい。ぜひ食べてみて下さい」
「ショーエンが食べるなら私も食べるのです」
とシーナは何故か俺の真似をしようとするが、まあいい。
「じゃ、みんなで食堂に集合しましょ」
と、だんだんと仕切り上手になってきたティアがみんなに声をかけている。
なかなかいい感じになってきたんじゃないか?
少しずつ、だけど着実にクラスの一体感みたいなものが出来てきた気がするぜ。
俺はそんな事を考えながら、みんなと一緒に学生寮までの帰路についた。
帰路につきながら、俺は考えていた。
そうだ、俺は「神」になろうとしているんだ。
惑星開拓という仕事は、きっとそういう仕事なんだ。
でもいいじゃないか。むしろ俺には、おあつらえ向きじゃないか?
だって、そうだろ?
俺の目的は正にそれなのだから。
「俺が生きたい世界は、俺がこの手で作る」
それが俺の求めた事だ。
やってやるさ、必ずな。
このメンバーなら、必ずできるはずだ。
俺はそんな事を考えながら、この世界で初めてできた仲間達のすがたを見ていたのだった。
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