理解できない 神奈川県庁の世界①
霧野 ぬん
第1話 県庁の徽章って何のためにあるのでしょう???
ぬんは、新採で県庁に入った時、神奈川県のクラゲマークの徽章をもらった。
裏側にアルファベットと数字が書いてあり、厳しく管理され、無くすと上司にひどく叱られたり、紛失届を書いたり(ちなみにぬんは無くすほど徽章の出番がなかったので無くすこともなかったけど。)、それは大切なものとして、箱に入れて、引き出しの中にしまってあった。
でも、本当に全く出番がない。
県庁でも、毎日スーツの襟もとにしている人なんか見たこともない。
新採の頃は、毎日通勤するときにしていた。
1カ月くらいすると上司から、「霧野ちゃん、徽章はしてこなくていいんだよ。」と言われた。
「だいたい、電車に乗って神奈川県職員だってわかると嫌でしょ。」???
と言われた。
(あと上司に言われたのが、電車等の中で「県庁に戻って・・」と言うような、県職員だとばれるようなことは決して言ってはいけないとのこと。職場に戻るときは「会社に戻って・・」と言うように、「県庁」ではなく「会社」と言えと。だからぬんは、ついつい自分の勤務先を「うちの会社」と言ってしまって、同僚たちに不思議な顔をされます。)
現在は、暑い時は暑く、寒い時は寒い県庁で、服装も軽装でと言うことで、スーツを着ている人すらあまり見ない。
以前は、6月から9月までは軽装でとか、時期が決まっていたけれど、去年からか今年からか、通年で、県民が不愉快を感じない程度の軽装でいいと言うことになった。
余計、徽章の出番が無くなってきた。
ではいつ?徽章をするのか?
県議会に出たり、議員の先生たちに説明に行ったりするときにするのである。
ネクタイをしない夏でも上司たちはスーツを着て、上着に徽章をしている。
だから、その考えで行けば、県議会に出るほど偉くなかったり、議員の先生に説明に行かない人は、徽章がなくてもいいわけだ。
でも、ぬんは警察手帳と同じで、身分証明書と徽章は、唯一、神奈川県職員の証として、大切に思ってきた。
現に、15年前くらいには、よく議員の先生たちのところにも行って仕事の説明をしていた。
その時は、必ず徽章やシーズンによっては、赤い羽根をつけていた。
合川課長は、仕事の説明をするのに、秘書のごとくぬんを議員の先生のところに連れて行った。
だから、徽章の出番も多かった。
でも、高森担当課長になってから、議員の先生のところに行って話をするというような目立つことは高森担当課長が手放さなくなった。
何でも、C事室の本口担当部長に声をかけて二人で説明に行く。
徽章をつける時は全くなくなった。
そして、一番ショックだったのは、出先機関に異動した時だ。
異動してまず最初に言われたことは、
「霧野さん、徽章、返してくれる?」と上司に言われた。
「ここでは、議員の先生のところに説明に行くこともないしさあ。」
「え、何、それ?」
徽章って、神奈川県職員の証ではないの?
例え貸与だからって、神奈川県職員を辞めるわけでもないのに、取り上げるわけ?
徽章って基本は神奈川県職員全員が持っていていいものではないの?
何で持つ人を選ぶの?
何で?何で?
民間会社の人も株主総会とかに出る人とか、説明したりする人以外は、会社の徽章を取られてしまうわけ?
よくわからない?
でも、何となくわかった。
徽章って、県議会の時に議員の先生の前で
「神奈川県職員です。徽章もちゃんとつけています。先生のところに来るときは正装できました。」ってだけのバッジなんだ。
それだけのものなんだ。
25年近くも神奈川県職員の証として大切に大切に扱ってきたものを、
「県議会に行くことないから。」とか
「大体、霧野ちゃん、主査だしさぁ(出ました!格づけ)。」と言うことで、あっという間に取り上げられ、どこの役所にも属さないただの小役人になってしまった。
あと持っているのは、紙でできたぺらっぺらの身分証明書。
今どき国もY市もプラスチックでできた磁気付きの身分証明書なのに、神奈川県庁はぺらっぺらの紙、それだけがぬんには残った。
25年間、番号もちゃんとメモしていたあれほど大切にしてきた徽章はいとも簡単に取り上げられ、今、ぬんの手元にはピッカピカの新参者の徽章が来た(主査は変わらないのになぜ?)。
でも、もうぬんがその徽章を襟につけることはないだろう。
だって、ぬんは、議員の先生の前で話すこともない人事課の扱いになってしまったから。
辞める時にはピッカピカの徽章を返納する。
この徽章は、きっとまだた誰かの手に渡るのだろう。
徽章さん、今度は出番が多い人にもらわれるといいね。
陽の目も見れず、かわいそうだったね。
今日はこれで終わり。
理解できない 神奈川県庁の世界① 霧野 ぬん @kiri-nun
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