第51話 街の闇
ひったくり犯の騒ぎから逃れる為に噴水広場を後にした俺達は丁度時間がお昼頃だったこともありイタリアンレストランに入ることにした。
「おいひい!」
お腹が空いていたのかフランはマルゲリータピザをチーズを伸ばしながら美味しそうに頬張る。
「ふふ、美味しいのはわかりますけどお口にチーズがついてますよ」
「ほんと……?」
「少し待てってくださいね」
ノアは自分のバックからハンカチを取り出すとフランの口元を優しく拭う。
その様子は正に手のかかる子供の世話を見る母親そのものだった。
「はい、綺麗になりましたよ」
「優菜……ありがと……」
「ふふ、どう致しまして。」
ノアは魔法少女の中でも母性が高い。なので人を甘やかすことが大好きなのだ。
うんうん、やっぱりいいなこういう日常があるからこそ曇らせがより光輝く。
「……」
「……」
そんな仲睦まじい二人とは反対にクリスティナとフィオナはどこか浮かない表情で何かを考えている。
クリスティナはともかくフィオナが落ち込む理由はなんだろうか?
「結衣、どうかしましたか?」
「え?」
「なんだかいつもより表情が暗いですよ」
ノアに言われて自分の表情が暗くなっていることに気づいたのか仲間を安心させるためにフィオナは無理に笑顔を作る。
「ううん、なんでもないよ」
「結衣、私達があなたの嘘に気付かない訳がないじゃないですか。話してください、私達は仲間なんですから」
「……うん」
フィオナは頷くと悩みを打ち明け出す。
「さっきのひったくり氾の人あのスーツの人達に対してすごく怯えてたからもしかしたら私があの人を捕まえちゃったせいで今頃もしかしたら酷い目に遭ってるんじゃないかと思って……」
「別にいいんじゃないかしら。窃盗は許されない行為……犯罪よ」
「それは私もよく分かってるんだけど……それでも……」
やはりフィオナは優しすぎるな。悪人にも温情をかけてしまう。
だがまぁ、実際この街で窃盗や強盗事件が多いのにはもう一つ理由がある。それはカジノでの敗北。
この街のカジノは金持ちが集まるので当然賭け額も大きい。故に勝ったものは更に大金持ちに。負けた者は金持ちから一気に一文無しになるわけだ。
まさに人生を賭けた賭博。
その金持ち達の賭博に魔族が入り込んでいるとなると……どうやらこの街の闇はかなり深いようだな。
「大丈夫ですよ、結衣。あなたは正しいことしました。あの時、あなただけではなくここにいるみんなも同じ行動を取ろうとしました。考えはみんな同じです。だからせっかくの旅行を楽しみましょう」
「うん……そうだね……ごめん、みんな重い話をしちゃってもう大丈夫。」
「ふふ、では冷めないうちに料理を食べてしまいましょうか」
「うん!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます