第47話 アルトゥヌム

 数分後、船は無事リゾート都市アルトゥヌムへと到着し、俺達流星学院の生徒達は船から降りバスで移動する。


「おー、これがアルトゥヌムか……!」


 バスから見える外の光景は正に別世界。上が見えないくらい高いビル群に華やかな衣服や装飾を身につける人々に道路を走る車のほとんどが高級車。


 流石はアルトゥヌム、噂には聞いていたがここまで金持ちの街になっていたとは。


 そしてしばらくしてバスが止まり、俺達が滞在するホテルに着いた。


 いやいや、豪華すぎんだろ……


 俺は部屋に入ってそのあまりの豪華さに唖然とした。


 俺達が今回泊まるホテルはアルトゥヌムでも5本の指に入るほどの高級ホテルで行きの船もすごかったがこれはそんなものじゃない。


 広すぎるリビングに超大型テレビ、ふかふかのベット、ジャグジー付きのアルトゥヌムの街を見渡せる風呂などもうここで暮らしたら普通の生活に戻りたくなくなるほどの豪華さだ。


「はぁ、最高だな……」


 俺は一人そんな豪華な部屋を全力で堪能していた。


 聖斗のやつはホテルに着くなり「ちょっと浜辺に美女の水着姿みに行ってくる!」と今までにない勢いで浜辺に向かっていった。


 俺には全く理解できない。


 それにしても……この部屋はいいな……バカンス中はもうずっとここにいてもいいんじゃないか?


 そう思いながら部屋でくつろいでいると部屋のチャイムが鳴る。


 ん? ルームサービスなんて頼んでないが———


 そう思いつつ、扉を開ける。


「えっと……」


「ふふ、来ちゃいました♪」


 そっか、きちゃったか……


 ……よし……とりあえずラブコメの女神お前まじで船降りろ。



 ◇



 アルトゥヌムのホテルのとある一室。


 七魔帝の一人、ヴァイツはアルトゥヌムの街並みを眺め口角を上げる。


「もうすぐだ……もうじきこの街は俺のものに……」


 その時、部屋の扉がノックされホテルの従業員が部屋に入ってくる。


「何か用か?」


 ヴァイツがそう語りかけた瞬間、従業員の顔がドロリと溶ける。


 やがてその下からは一本の禍々しいつのを持つ魔族の顔が現れた。


「ご報告に参りました、ヴァイツ様。」


「……聞こう。」


「魔法少女の一行がこの島に到着しました。」


「ようやくか、待ちくたびれたぞ……奴らの今の動きは?」


「現在は特に目立った動きはなくホテルに滞在しています。いかが致しましょう?」


「まだ放置だ、計画の準備にはまだ少し時間がいる。魔法少女にはまだてを出すなと血気が盛んな他の奴らにもしっかりと通達しておけ。」


「畏まりました。」


 魔族は丁寧にお辞儀をしてから部屋を退出する。


 部下の魔族が退出したのを見送りヴァイツは不快そうにため息をつく。


「……お前はいつまでここにいるつもりだ」


 ヴァイツが誰もいない空間に向かって呟く。


 直後、空間が歪み白い外套を纏い仮面を被った人物がその姿を現す。


「……ご命令を」


「必要ない、早く出ていけ」


「いえ、これも我が主の命令ですので」


 次の瞬間、ヴァイツの纏う空気が変わる。


「聞こえなかったか? 俺が必要ないと言っているんだ。分かったらとっとと失せろ。」


 常人なら気絶していまいそうな殺気。


 だがその殺気を受けても白い外套の人物は平然とその場に立っていた。


「ですが……ヴァイツ様よりも私の方が強いですのできっとお役に立てると思いますよ?」


「……」


 ヴァイツの中で煮えたぎるような怒りが爆発し、言い返そうと思ったがそれは正しいことだと思い直し怒りを沈める。


 その白い外套の人物はヴァイツよりも確かに強い存在だからだ。


「……ああ、それは認めよう。だがその上で貴様の力など借りん。」


「……畏まりました、ではもし私の力が必要な時はお呼びください。」


「セレクによく言っておけ、貴様に頼るくらいなら死んだ方がマシだ、とな。」


 ヴァイツは一言そう告げるとマントを翻し部屋を出て行った。

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