第44話 魔法少女と夕食
「はぁ……疲れた……」
あれからノアに連れられプールを遊び尽くし部屋に戻った俺はベットに倒れ込んだ。
俺は……曇らせ信者なのに……何故今日に限ってあんなにラブコメ主人公みたいなイベントが俺にふりかかるんだ!?
「女子達の水着がタダで見放題なんて……やっぱプールは最高だな!」
プールから帰ってきた聖斗は朝の死にそうな表情とは一転実に幸せそうな表情で愉悦に浸っている。
「随分楽しかったみたいだな……」
「ああ、マジで最高だった! というかお前はどうしたんだよ、来栖さんと楽しそうに泳いでたろ?」
「ああ……まぁな。」
まぁ、正直モブの存在意義がどんどん消えていくのを感じて気が気じゃなかったんだけどな。
だが今回改めて自覚した、魔法少女は素晴らしい。
そう、あの幸せに満ちた笑顔が絶望に変わるのが……!
早く曇らせカモーン!
「おっ、さっきナンパした子から連絡がっ! ちょっと行ってくる!」
「夕食までにはもどってこいよー」
俺は聖斗が出ていくのを見送ってからベットに再び横になる。
「さて、疲れたし少し寝るか……」
俺はそのまま眠りについた。
◇
日も落ちすっかり暗くなった頃。
俺達は夕食を取る為に船内のレストランに訪れていた。
「おぉ、すげぇ……」
「流石、豪華客船。レストランも豪華だな」
多くの生徒たちで賑わうレストランはイタリア料理、中華料理、和食などの料理が揃っていてどれも一流の食材を一流のシェフが調理しているらしい。
ちなみにここは自腹だ。
「おぉ! まじで美味そう! どれにする?」
「そうだな……俺はとんかつにしようかな」
「じゃあ俺は国産サーロインステーキにしよっと!」
俺達はそれぞれの食事を取りに行くと空いていた窓側のテーブルに座る。
窓からは夜の海を見ることが出来、最高のシチュエーションで食事をすることが出来るようになっている。
「ん〜まじでうめぇ!」
「こんな美味いとんかつ初めてだな」
値段だけじゃなく味もしっかりといい。
ザクリと狐色に揚げられた衣が柔らかい豚肉を包み込んで肉の旨みをしっかりと閉じ込めている。
『うむ、美味いな! 普段の食事とは違う!」
(そりゃここのはいい食材をいいシェフが調理してるからな。)
『なるほど通りで……お主と魔法少女の娘のイチャつきを見せられて何を見せられているんだ我は……と思っておったが豪華客船とはいいものだな!』
(おい、誰がイチャついてただって?)
そんなことをヴォルディアと話していると
その場に聞き慣れた美しい声が響く。
「あら、蒼太じゃない。
振り返るとそこにはクリスティナ以外の魔法少女が全員集結していた。
「速水くん、こんばんは。1日に2回もお会いできて嬉しいです」
「速水くん、こんばんは!」
「……」
今日は一体どうなっているんだ……
「ど、どうも久しぶりですね……来栖さん」
ノアに会った途端聖斗は何処かバツが悪そうな表情を浮かべる。
「あら、あなたもいたんですか? えっと……名前はなんでしたっけ……?」
「……」
学年のマドンナ来栖優菜から放たれるお前の名前なんだっけ発言にいつもは余裕そうな表情を浮かべている聖斗も明らかにダメージを喰らっている。
聖斗のことだ、どうせしつこく迫ったからここまで嫌われているんだろう。自業自得だな。
「あー……蒼太、ステーキやるよ! 俺少し用事思いだしたわ!」
聖斗は場の空気に耐えられなくなったのか俺にサーロインスステーキを渡すと急いで部屋の方へと駆けて行った。
やったぜ、高いステーキを無料でゲットだ。
「ふふ、何処かへ行ってしまわれましたね。速水君、空いてる席がないのでこちらに座ってもよろしいでしょうか?」
「……どうぞ」
「ありがとうございます、では失礼しますね。」
俺が諦めてそう答えるとノア達は俺の隣にノア、そして俺の正面にはルナ、フィオナ、フランの三人が座った。
この四人が座ったことで再びプールの時のような視線が集まる。
どうやら今日は俺の曇らせの女神様は休んでいるらしい。
「それにしても今日のプール楽しかったですね、速水君。」
「はい、俺もめちゃくちゃ楽しかったです」
「えっ、二人とも今日一緒にプールで遊んだの?」
「ええ、今日はですね——」
ノアはこの話をするのを待っていたと言わんばかりに今日の出来事を楽しそうにみんなに語る。
興味深々な様子で聞く、フィオナ、話を聞くたびに俺のことを少し睨んでくるルナ、ステーキを狙ってくるフラン。
「半分食べる?」
「食べる……!」
魔法少女に甘い俺は速攻で分けてあげた。
「——とそんなことをして今日は遊んだんですよ」
「いいね、すごく楽しそう!」
「……」
その瞬間、ルナに睨まれる。
いや、これは仕方なくない?
「随分と……楽しんでたようね……ねぇ、蒼太?」
あなたは私のペットでしょう? と言っているのが無言でも伝わってくる。
「い、いやこれは……」
「ふふ、しばらく餌は抜きね……」
「そんな……」
「餌がどうかしたんですか?」
「いえ、犬の餌の話よ。そう、飼い主以外にも尻尾を振る犬のね……」
玲奈は不適な微笑みを浮かべながら俺に向かってそう呟くと再びカルボナーラを食べ始める。
いや、怖っ!
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