第42話 一緒に泳ぎませんか?

 ルナのパシリとしてジュースを届け終わった俺はルナにもう行ってもいいわよと言われたのでせっかくだしプールに入ることにした。


 にしてもカップルが多いな……


 あたりを見渡せば初々しいカップルにそれに嫉妬してその隣をバタフライで全力で泳ぐ奴など人によって楽しみ方は人それぞれだ。


 さて、適当に泳ぐかな。


「あ、速水くん」


 泳ごうとしたところで優しい声で名前を呼ばれて振り返る。


 そこには水色の水着を着た亜麻色の髪に美しい翡翠色の瞳を持つ美少女、魔法少女『慈愛』のノアこと来栖優菜がいた。


「来栖さん、お久しぶりです。また来栖さんにお声をかけていただけて光栄です」


「ふふ、そうですね私も速水君にまた逢えて嬉しいです♪」


 そう言って彼女は嬉しそうに微笑むとその際に彼女の大きな胸が揺れる。


 普段の制服の時も大きいなとは思ったが……水着だと更に破壊力抜群だな……流石は魔法少女の胸の大きさランキング第一位だ。


「速水君はお一人ですか?」


「そうですね、一人です。」


「そうなのですか? あそこの変な人と一緒にきたのではないのですか?」


 ふとプールサイドを見ると女子にナンパしている聖斗の姿があった。


「いえ、知らない人ですね」


 俺は聖斗を見捨てた。


「そうなのですね……でしたら、私と一緒に遊びませんか?」


「……」


 なんでだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!


 なんでそうなるんだ!? 今そんな流れじゃなかったろ!?


「来栖さんはお友達と来たんじゃないんですか?」


「そうなのですが……二人ともスライダーの方へ行ってしまいまして……今は私一人なんです。私と一緒に遊んでくれませんか?」


 上目遣いでそうお願いされる。


 駄目だ……俺は魔法少女にはとことん甘くなってしまう。


「わかりました、一緒に遊びましょうか。」


「本当ですか! ありがとうがとうございます!」


 パァッと眩しいような笑顔で喜ぶノアはまるで子供のようでみていてとても微笑ましい。


「じゃあ早速———ん?」


 ノアと一緒にプールを泳ごうとした所で遠くからこちらに向かって何かが近づいてくるのが見えた。


 その嫉妬心に燃えたサメ(男子生徒)は勢いよくバタフライをしながらこちらに向かってくる。


 恐らく学校のマドンナの一人来栖優菜と楽しそうに話していたから標的にされてしまったようだ。


「来栖さん、ちょっと失礼しますね」


「え?」


 男子生徒がすぐそこに迫ったところで俺はノアを反射的に抱き寄せた。


 その直後俺の背後を通り過ぎ、俺に勢いよく水がかかる。


 全く、嫉妬に狂った奴は恐ろしいな。


「あの……」


「ああ、すみません、大丈夫でしたか?」


「は、はい……ありがとうございます……」


 俺が手を離すとノアは恥ずかしそうに俺に背を向ける。


「来栖さん?」


「す、すみません……少し待ってもらえますか?」


「はい、わかりました」


 しっかり水を防いだ筈だが……もしかして目に水が入っちゃったのか?


 しばらくしてからノアが振り返るとその頬は少し朱色に染まっていた。


「お待たせしました、もう大丈夫です」


「じゃあいきましょうか。」


「あっ、速水くん、少し待ってください」


 その時、俺の二の腕に辺りに柔らかい何かがあたる。


 ん? この感触は——


 横を見ると俺の腕にノアが抱きついていた。


「ふふっ、男の人の腕ってとても逞しいですね。」


 ノアは顔を朱色に染めそう呟くと更に強く腕を抱きしめる。


 ……俺は曇らせ信者……俺は曇らせ信者……


 ふと昔に沈めた筈の欲求が一瞬出かけたので全力でその欲求を再び沈める。


 よし、沈静化できたな! 今の俺はどんなことにも靡かない!

 

「しばらくこのままでいていいですか?」


「もちろん、いいですよ。ではゆっくり泳ぎましょうか。」


「はい!」


 俺達はゆっくりとプールを泳ぎ始めた。

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