第41話 魔法少女とプール

「〜♪」


 曇らせの予兆を感じ取ることができた俺は最高の気分を味わいながらベットで寛ぐ。


 いやぁ……しばらく曇らせはお預けだと思って少し落ち込んでたけど……よっしゃあっ! 曇らせ確定演出きたぁぁぁぁぁぁ!


 曇らせの女神はいつだって俺に微笑んでくれる!


「あぁ……まじで地獄だったわ……」


 俺がベットで新たな曇らせの夜間に心を踊らせているとトイレから聖斗が出てきた。


 酔い止めが効いたのだろうか、先程より顔色がいい。


「よう、大丈夫か?」


「ああ、もう大丈夫だ。それより今からプールいこうぜ!」


「そういえばもう始まってるのか……通りで廊下が騒がしいわけだ。」


 この船の目玉の一つ、巨大プール。


 一年生全員がが入っても余裕があるその広さに少し小さなスライダーまであるという豪華仕様だ。


 おまけにプールサイドの休憩スペース、エステなどのサービスも全て無料となんとも太っ腹な仕様になっている。


「そんなに泳ぎたいのか?」


「馬鹿、もちろん女子の水着姿を拝みに行くために決まってるじゃないか!」


「だろうな、仕方ない、いくか。」


「お、珍しく乗り気じゃねぇか。お前も誰かの水着がみたいのか?」


「まあ、そんなとこだ。」


 もしかしたらクリスティナもいくかもしれないからな。曇らせを見逃すことは断じて許されない。


「じゃ、いくか。」


「ああ。」


 俺達は水着と着替えを持って部屋を出た。



 ◇



「おおー! 広いな!」


「確かにな、これは予想以上だ」


 更衣室で水着に着替えてからプールに来た俺達はそのデカさに驚いた。


 もはや普通のプール施設より広いんじゃないかと思わせるようなプールは既に多くの生徒達で賑わっていた。


 だがそのほとんどがカップルの生徒達や女子だけの生徒が多いように見える。他の男共はプールサイドで水着姿の女子達を見てはニヤけている。


「で、どうするんだ?」


「ふっ、当然女子の水着を間近で覗きにいく! 続け、蒼太!」


 そう言うと、プールに飛び込み女子の方へと泳いで行った。


 俺は聖斗の後ろ姿を見届けてからプールサイドを歩き出す。


「それにしても美男美女が多いな……」


 プールにいる男女は皆顔面偏差値が異様なほどに高い。全員がクラスに一人いるかいないかの美人かイケメンだ。


 これもこの世界がアニメの世界である影響だろう。


「蒼太」


 そんなことを思いながらプールサイドを歩いていると鈴を転がしたような声で名前を呼ばれる。


 振り向くとパラソルの下で優雅に足を組みながら寛ぐ白い純白の水着姿の美少女、氷姫のルナこと橘玲奈の姿があった。


 先程クラスの女子の顔が良いと思ったがルナを見て改めて体感する。魔法少女の顔面偏差値は他とは比べものにならないくらい高い。


 やはりこの世界の主役は格が違うということだ。

 

「あら、どうしたの? そんなに見つめて」


「いや、相変わらず美少女だなと」


「ふふ、あなたもお世辞が言えるのね」


「いや、本当の事さ」


「そう、ならありがたく受け取っておくわ」


 彼女は上機嫌そうに微笑むと側に置いてあったジュースを上品に飲む。


 それにしても本当に綺麗だな……


 プールサイドで優雅にジュースをのむ水着姿の魔法少女とはこんなに絵になるものとはな。このままタペストリーとして部屋に飾りたいくらいだ。


 ああ、またルナの曇らせもみたくなってきた。


「あなたがこんなところに来るなんて意外だわ。水着姿の女の子でも見に来たの?」


「んなわけねーだろ、俺はあいつの付き添いできただけだ。」


「ああ、優菜にちょっかいかけてた男ね。あれあなたの友達だったのね」


「まぁ、一応な。あんまり知り合いだと思われたくないけど……それで玲奈は何しに来だんだ?」


「私もあの子達の付き添いみたいなものね」


 ルナの言葉にプールの中を確認するとフィオナ、ノア、フランの三人がが楽しそうに遊んでいた。


 やはり魔法少女は他の女子とは別格で三人だけ他とは異なるオーラを発している。


 だがそこには案の定クリスティナの姿はなかった。


 やっぱりクリスティナはいないか……


「楽しそうだな、玲奈は泳がないのか?」


「私はこうしてプールサイドで優雅にジュースを飲みながら寛ぐのが好きなの。」


「へぇ、てっきり泳げないのかと」


 その瞬間ルナの表情がピキリと固まる。


 あ、適当に言ったんだけどもしかして当たってた?


「いい、勘違いしないでもらいたいのだけれどきちんと私は泳げるわ……浮き輪があれば。」


「そ、そうか。」


 それは泳げるという範囲に入るのか?


「……今私のこと馬鹿にしたわね」


「別にしてないぞ、ただ可愛らしいなと思っただけで」


「そう……私を小馬鹿にするとはいい度胸ね……丁度ジュースがなくなっちゃったの。買ってきてくれる?」


「もちろんですとも、姫!」


 俺はルナの機嫌を直すために全速で売店にジュースを買いに行った。

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