第38話 許されない罪

 私には昔から友達がいなかった。


 そもそもそんなものは必要ないと考えていた私にはそれほど気にすることもなかった。


 一時期騒音を撒き散らす暴走族達を片っ端から締めていたら女帝だの変な二つ名を付けられ更に周りから人がいなくなったがそれすらもどうでも良かった。


 私には一人で生きていける力がある。


 私の人生に友情などただただ足手纏いなだけだとそう思っていた。


 だが高校に入り、魔法少女としての力に目覚めたことでその考えは変わった。


 同じ力を持つ少女達と魔族と呼ばれる存在と戦う。それが魔法少女という存在の使命らしい。


 最初は仲間などいらないと思っていた私だったが仲間達と共に戦うにつれ、初めて友情というものが芽生えた。


 そしていつの間にか四人の仲間達は私にとっての一番大切な存在になっていた。


 学校ではあの子達に寄りつく変な虫も全て追い払ってきた。


 この子達を守る。


 それが私が魔法少女として戦う意味になっていた。


 ……だけど、それももう叶わない。


 私は……大切な仲間を傷つけるという許されない罪を犯してしまったのだから……

 


 ◇



 アルテミスグループが所有するビルの最上階、そこにエリザベートによって魔法少女達が召集されていた。


「ごめんなさい、待たせてしまったわね。」


「あ……ルナ……」


 最後の一人ルナが到着すると場の空気が一気に重くなる。


 先の七魔帝セレクの一件で操られていたとはいえルナを陥れようとしてしまったクリスティナとそれに同調しルナを一時的に無視してしまった他のメンバー達はしっかり謝罪したとはいえルナに合わせる顔がなかった。


 セレクの能力、悪感情増幅のより操られた者の言葉を聞いた者は自然とその言葉を信用してしまうとエリザベートからは聞かされたがそれでも仲間を傷つけてしまったという事実は変わることはなく、魔法少女達の心に深い傷跡を残した。


「ルナ……その……」


「みんな、そんな顔しないで。私は全然気にして無いって言ったでしょ?」


 ルナは優しく微笑み、慰めるように言う。


 その様子は前までのルナとどこか様子が違って見えた。

 

「全員集まったな、始めよう。」


 エリザベートの声にみんなが真剣な眼差しを向ける。


「今回集まってもらったのは君達にとって重要な話があるからだ。」


「重要な話……ですか?」


「ああ、君達は今度流星学院でリゾート都市アルトゥヌムへ行くだろう?」


「はい、みんな参加予定になってます」


「アルテミスグループ情報網を使って調べたんだが……ここ最近、アルトゥヌムにて魔族の目撃情報が確認された。」


 その言葉を聞き、全員に驚愕が走る。

 

「目撃情報……ということはまだ実害は出ていないんですか?」


「ああ、今の所魔族による犠牲は確認されていない。あの血気が盛んな魔族にそんなことがあり得るのかが疑問だがな。」


 魔族は基本的に凶暴かつ残忍な性格の者が多く破壊と殺戮を何よりも好む。


 そんな魔族が何もせずじっとしているなど信じられない。


「奴らが何を企んでいるのかはわからない……だがろくでもないことだけは確かだ。」


「では私達はどうすれば……」


「君達には学生として侵入し、アルトゥヌムが現在どのようになっているかを調べ、そして有事の際には市民や島を守り魔族を討伐して欲しい。」


 てっきり今回は行くなと言われると思っていた全員が驚いたように鬼龍院を見つめる。


「行ってもいいんですか?」


「ああ、勿論だ。何もないならそれでいいしな。私としては嘘であって欲しいよ。」


「しかし、それでは都心に魔族の襲撃があった場合は……」


 魔法少女がいないとなると都心を守るものがいなくなる。


 アルトゥヌムに行っている間にもしも襲撃があれば誰も抵抗できずに都心は一方的に滅ぼされることになってしまう。


 だがそんな魔法少女達の不安を見透かしているかのように鬼龍院は余裕そうな表情を作ってみせる。


「私が此処を守る。」


 そして堂々と宣言した。


 エリザベートは基本的に出張が多い。


 この都心に帰ってくるのもたまにしかないくらいに多忙だ。


「ですが鬼龍院さんの仕事は……」


「ああ、それならば問題ない、面倒なのは一通り片付けた。お前達が心配することはない。これでもまだ不安か?」


「いえ、それならば都心は安泰ですね。」


「そうだ。だから君達はアルトゥヌムを頼む。」


「わかりました。」


「任せたぞ、フィオナ、ノア、フラン、ルナ、クリスティナ。」

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