二代目編第3話 楽しかった思い出

 週末、司令の高級車に乗って私達は遊園地を訪れていた。


 休日だからか親子連れやカップルも多く、遊園地は賑わっている。

 

「ついたー!」


「懐かしいね、子供の頃よく来たよ。」


 みんなも久しぶりの遊園地で嬉しいのか数々の楽しそうなアトラクションを前にして目をキラキラと輝かせている。


「さて、皆は何に乗りたいんだ?」


「ボクはバンジージャンプかな。」


「里奈はコーヒーカップがいいの」


「私はメリーゴーランドかなー」


「私は観覧車がいいです」


 結果、それぞれの意見が一切被ることなく皆がバラバラの意見になった。


 あぁ……バラバラになっちゃった……


 こうなると少し面倒くさい。


「まずは1番の恐怖、絶叫ジェットコースターを味わっておいた方が他のアトラクションがもっと面白くなると思わない?」


「えーやだよ、あれすっごく速そうだし……」


「やっぱりゆったりとしたコーヒーカップがいいの」


「そうですね、私もゆったりと乗れるコーヒーカップがいいと思います」


 やはり意見はまとまらない。


 普段はほとんど意見が合致する私達でも時々意見が合わない時がある。その場合、各々に譲れない意思があるので決まるまでにすごく時間がかかる。

 

「司令は何か乗りたいものはありますか?」


「ん? 私はお化け屋敷が———どうした皆、そんなに青ざめて」


「司令、お化け好きなの?」


「ん? まぁな。殴って倒せるものであれば何も恐れる必要などないだろう?」


「え? 幽霊って流れるんですか?」


「ああ、私に殴れないものはないぞ。」


 司令はすごいだろとドヤ顔で自慢する。


 司令の場合本当に殴れそうだ。


 ほとんどの格闘技をマスターしている司令がお化け屋敷なんて行ったらスタッフさんに重傷者が出るかも……


「じゃ、じゃあみんな、ここは公平にじゃんけんで決めよっか」


「「「「さんせーい!」」」」


「じゃあ行くよじゃんけん——」



 ◇


 じゃんけんの結果、一人勝ちした佳奈の絶叫ジェットコースターに決定し、私達はジェットコースターに乗り込んだ。


「のぉぉぉぉぉぉぉ!?」


「イェーイ最高ー!!」


 全力で楽しんでいる佳奈に対し、里奈は目をつまりながら必死に取手を掴んでいる。

 

 大丈夫かな、里奈……


 ジェットコースターが終わる頃には里奈はもうすっかり魂が抜けたようにグデリとしていた。


「里奈、大丈夫ですか? 」


「ギリギリ大丈夫……なの……」


 ベンチに横になり有希の膝の上で休む里奈の顔色はかなり悪そうだ。


「里奈、いつも飛んでるのにこれはだめなんだね。」


「自分で飛ぶのは平気なの……でも高速で動く乗り物は駄目なの……」


「じゃ、じゃあ少し休んだら里奈の好きなコーヒーカップに乗ろっか!」


「!! 乗るの!!」


 すると先程まで元気のなかった里奈が一気に元気になった。


「よし、じゃあ行こっか」


「行くの!」


 そして里奈の乗りたがっていたコーヒーカップに私達は乗り込んだ。

 

「楽しいの!」


「ふふ、それはよかったですね。」


「うーん、もう少しスピードがあった方がよくない?」


 その時、佳奈が中央のハンドルを握る。


「もっと早くしようよ!」


 佳奈がハンドルを回すと同時にカップのスピードが徐々に上がっていく。


「何をする———ののぉぉぉぉぉーっ!?」


 その瞬間、コーヒーカップは高速回転する狂気の乗り物となり、再び里奈の悲鳴が鳴り響いた。


 

 ◇



 その後私達は色んなアトラクションやフードなど食べて遊園地を楽しみ尽くした。


「いやぁ、最高だったね、久しぶりに休みを満喫した気がするよ」


「のぉぉ……全然楽しくないの……佳奈のせいで酷い目にあったの……」


「まぁまぁ、里奈もなんだかんだたのしかったでしょ?」


「……の」


「私も久しぶりに仕事のストレスから解放されたよ。」


「ふふ、皆さん楽しめたようでよかったですね」


 みんなもなんだかんだ楽しかったのか幸せそうな笑顔を浮かべている。


 ああ、こんな幸せな毎日がずっと続くといいな……いつか私達にも後輩の魔法少女達が出来たらその子達とも一緒に。


 うん、きっと私の願いは叶う。


「みんな、これからもずぅっと仲良くしようね」


「急にどうしたのリーダー、そんなのあたりまえでしょ」


「もちろんだよ、ボク達五人の友情は最強だからね」


「ふふ、そうですねずっとずっと仲良くしましょう。」


「当然なの!」


 私はみんなと司令がいてくれればなんでもできそうな気がした。



 ◇



「よし、もう少しで着くな……おーい皆、そろそろ着くぞー」


 後方に座っている五人に声をかけるも返事はなく、鬼龍院の声だけがひびく。


「皆、どうしたんだ?」


 返事がなかったので鬼龍院がミラーで確認すると疲れていたのか五人で仲良く後部座席で寝てしまっていた。


「ふっ、もう少し寝かせておいたやるとするか。」


 鬼龍院は少しだけ遠回りしてから帰ることした。

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