二代目編第1話 二代目魔法少女

 とある日、今日も続くと思われていた当たり前の平和が魔族の出現により突然壊された。

 

「ヒャハハッ! 人間共、跪け!」


 魔族は逃げ惑う人々を楽しむように建物を破壊していく。

 

 魔族の力は圧倒的だ。


 普通の人間ではまず敵わない。されども銃や兵器があったとしても魔族はそれらを全て凌駕する圧倒的な個の力をもっている。


 小さな力がいくら集まろうと強大な力には遠く及ばない。ただただ強者に虐げられるのみだ。


「なんだよ、弱いなぁっ! 人間ってのは所詮魔族に支配される為だけに存在している種族なんだなぁっ!」


 人々の瞳に絶望が宿かけた時、そこに希望の声が響く。


「そこまでだよ! もうこれ以上人々を傷つけさせない!」


「ああ? テメェらは———」

 

 そう、その少女達は魔族から人々を守る人類の希望。


「魔法少女参上! あなたは私達が相手をする!」


「全く、本当に迷惑だよ、せっかくの休みが台無しだ。」


「まぁまぁ、それが私達の仕事だからね」


「ミューももっとお昼寝したかったの……」


「ほら、皆さん。しっかり仕事しますよ。」


 突然現れた少女達はそれぞれが可愛らしい衣装を身につけていて一見あまり強そうには見えないがその力は強大だ。


「へぇ、テメェらみたいなガキが魔法少女か……随分と弱そうな奴らだ。」


 魔族は余裕そうな笑みを浮かべ魔法少女たちを見下す。


「相変わらず魔族は品性にかけるね……ボクの相手には相応しくないかな。」


「ソフィア、今回も皆で協力、ですよ」


「わかってるよ、こんな雑魚早く片付けちゃおうか。」


「よし! じゃあみんないくよ!」


 リーダーのリリの掛け声と共に前衛担当の二人が飛び出す。


「さぁて……始めようか、アリサ。」

 

「了解、いつも通りあんたに合わせてあげるよ」


「ふふ、期待しているよ」


 ソフィアは更にスピードをあげ一気に魔族へと接近する。


「でかいのは口だけかい? 反応できてないよ?」


「くっ! このっ!」


 魔族がソフィア目掛けて腕を薙ぎ払う。


 しかしもうすでにそこにはソフィアの姿はなかった。


「そんな鈍い攻撃がボクに当たるわけがないだろう? 【マジカルフレイム】」


 ソフィアがそう唱えた直後、魔族を中心に十字の炎が発生し、魔族を業火が襲う。


「ぐがぁぁぁぁぁっ!」


「アリサ。」


「準備できてるよ。」


 アリサが魔族に向けて手をかざすと魔族の周囲に風が発生し始める。


 その風は炎と交わりだんだんとその強さをましていく。


「【マジカルトルネード】」


 風によりまた炎もその温度を更に上げていく、まさに何もかもを吸い込み焼き尽くす業火の竜巻だ。


「がぁ……馬鹿……なぁ……」


 魔族は高温の炎に耐えきれずそのまま地理となって消えた。


「やっぱり大したことないね」


「そうね、私たちの敵じゃない」


 魔族を討伐した二人はドヤ顔で誇らしげに腕を組む。


 その様子を見たミューが呆れたようにため息をつく。


「二人とも、地上をよく見るの。」


「ん? 地上?」


「地上がどうし——あ……」


 地上を見ると先程の竜巻から溢れた炎が街に落ちようとしている所だった。


「全く、本当にあの二人は……毎度やりすぎなんですよ……」


 先に地上で待機していたマナは落ちてくる炎に向かって手を翳す。


「【マジカルウォーター】」

  

 その瞬間、巨大な水の塊が炎を覆う。


 そして瞬く間に炎は消え、水の塊は発散し、周囲に雨が降る。


「二人とも……後でお説教です……」


「いや、マナ違うんだこれは……」


「その……少し張り切り姿というか……」


「返事は?」


「「は、はい……」」


 その静かな怒りを含んだ笑顔に二人は大人しくマナにしたがった。


「ま、まぁ、でも無事に倒せてよかったよ!」


「私達の出番なかった……」


「ふふ、そうだね。でも、いつか私達魔法少女が戦わなくてもいいくらいいつか平和になるといいよね」


「いいね、リリらしい。」


「来るさ、ボク達がその未来を切り開く。」


「そうですね、私達はその未来のために戦い続けるだけです。」


「ミューもその未来はいつかくると思うの」


「うん、これからもみんなで頑張ろ!」


 みんなでより一層気合いを入れていたとき、近くで誰かの泣く声が聞こえた。


「おかあさん……どこぉぉ……!」


 振り返るとそこにはお母さんとはぐれたらしき小さな女の子がその不安で泣いていた。


 リリ達はお互いに頷きあうとすぐに女の子の元へと向かう。


「ねぇ、お姉ちゃんにあなたの名前を教えてくれないかな?」


「うぐっ……ゆい……」


「そっか、ゆいちゃんだね。ゆいちゃんはどうしてここにいるの?」


「お母さんとお出かけしてたら……いきなり怖い人が現れて……それでお母さんとはぐれて……」


 その時のことを思い出したからかゆいは再び泣き出してしまう。


「あぁ……泣かないで大丈夫だから。」


「ゆい、お姉さんが綺麗な炎を見せてやろうか?」


「いや、ここは私の風で——」


 二人が自信満々に手に炎と風を発生させようとするとマナが怖い笑顔で圧をかける。


「二人とも……大人しくしていること……」


「「はい、すみません……」」


「ふふ、ゆいちゃん、これあげる。」


 リリはそう言うと一輪のピンクの花を手の中で生み出して見せた。


 するとゆいの表情が徐々に明るくなっていく。


「きれい……ねぇ、お姉ちゃんこれどうやったの?」


「ふふ、それはねお花の魔法だよ」


「おはなのまほう?」


「そう、私達魔法少女は魔法が使えるの」


「すごい……! わたしもおねえちゃんたちみたいになりたい!」


 その純粋で無邪気な笑顔が愛おしくなりリリは優しくゆいの頭を撫でる。


「無理してならなくてもいいよ、魔法少女はとても大変だから。ゆいちゃんは幸せになるだけでいいの。その幸せは私達が必ず守るから」


「それでもわたしはおねえちゃんたちみたいになりたい!」


「……そうだね……もしゆいちゃんも魔法少女になったら一緒に戦おっか」


「うん! やくそく!」


「うん、約束。」


 お互いに小指を差し出し約束を結ぶ。


 リリは絶対にこの子が笑って過ごせる未来を作ろうと心に誓った。


「じゃあお母さんを探しに行こうか!」


「安心してゆい。ボクたちも一緒に探すからあっという間だよ」


「そう、私達は魔法少女なんだからね」


「魔法少女に不可能はないの」


「ふふ、その通りです」


 全員が笑顔を浮かべゆいに優しい言葉をかける。


「いこう、ゆいちゃん!」


「うん!」


 リリとゆいはしっかりと手を繋ぎ母親を探すために歩き出した。

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