第36話 あの人

 エリザベートと別れた俺達はその後色んなアトラクションに乗ったり、限定フードを食べたりして全力で楽しんだ。


『蒼太! 美味しかったぞ!』


(そりゃよかった、そんなに気にいったか?)


『うむ! 毎日食べたいくらいだ!」


(流石にそれは無理だなー)


 ふと時計を見ると時刻は5時。もうそろそろ帰った方がいい時間だ。


「玲奈、そろそろ帰るか?」


「そうね、そろそろ……ねぇ、最後にあれに乗らない?」


 ルナが指差した方向を見るとそこにあったのは大きな観覧車だった。


「ああ、別に構わないぞ」


「ありがと、早速乗りましょうか。」


 俺達は揃って観覧車の列に並ぶ。


 あまり混んでいなかった為思いの外、早くなることが出来た。


「えっと……夕焼けが綺麗ね……」


「そうだな……」


 話すことがない……


 観覧車は基本的に静かかつゆっくりと動いて行くのでいつもよりも沈黙が地獄のように感じる。


「そ、そういえばネットでみたことがあるわ。観覧車で告白する人って結構多いんでしょ?」


「あ、ああ、まぁ、結構いるんじゃないか?」


「私も観覧車であの人に告白しようかしら……」


「やめておけ、断られた場合気まずさで死にたくなるぞ」


 観覧車の頂上で告白して断られた場合、残りの半分の空気と帰り道の空気が地獄になり結局は一切連絡を取り合わなくなる。


 まぁ、振られた魔法少女の顔が気にならない訳でもないがな。


「そ、そうなの?」


「ああ、よく踏み出す勇気も大切だと言うが踏み止まる勇気もまた大切だ。」


「そ、そうなのね……よく覚えておくわ。」


「それにしても本当にその人のことが好きなんだな。」


「ええ、あの人は私の全てなの……」


 そう語るルナの表情は恍惚としていた。


「そうか、いつかその人と結ばれるといいな。」


「ええ、私はいつか必ず彼と……」


 ルナにこんなにも好意を向けられるとは幸せな奴もいたものだな。


「そういえばあなた前も言っていたけど好きな人はいないの?」


「ああ、いないな、興味もない。」


「そう、でも私は彼と付き合ってもあなたと友達でいてあげるわ。感謝なさい?」


 ルナは蠱惑的な笑みを浮かべイタズラっぽく言う。


「ああ、ありがとな。」


「ふふ、いいわよ。ペットの面倒を最後まで見るのは飼い主の役目だもの。」



 ◇



 遊園地から帰った私は真っ先にお風呂に入って体を清めてから最近の楽しみをしていた。


「はぁ〜♡ 幸せ……」


 私はベットに寝転びながら彼の黒い布の匂いを嗅ぐ。


 この時間は私の心を落ち着かせ最後の気分にさせてくれる。


「オメガ……あなたは今、どこにいるの?」


 時々思う、彼の仮面の下は一体どんな顔をしているのだろうか……イケメンなのだろうか……もしかしたら案外普通かも……


 だが私は彼の全てを受け入れると決めているからどんな顔でも構わない。顔を見ただけで冷めてまう愛などそれは紛い物だもの。


 私はしばらくオメガの布を堪能すると私は布を枕元に起き自身も布団に入る。


 こうしていると彼と一緒に添い寝しているようでよく眠れる。


「ふふ、おやすみなさい……オメガ♡」


 私は彼の布にそう声をかけ眠りについた。

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