第34話 気まずい空気
「ではいってらっしゃーい!」
いよいよ俺達の順番になり二人でに乗り込んんだところでジェットコースターが発進した。
ジェットコースターは最初は緩やかなコースを高速で駆け抜けていく。
ふとルナの方を見ると周りの観客が悲鳴をあげる中、余裕そうに微笑みを浮かべていた。
まぁ、流石に普段から飛んでるから恐怖とかはないか。
いよいよジェットコースターは最も急なゾーンに登っていく。
「大丈夫……大丈夫……」
「おい、大丈夫か?」
「な、何を言っているの? 大丈夫よ……」
「ならいいけど」
そしてジェットコースターが頂点に到達したと同時に勢いよく降下する。
「ッ!?」
その瞬間、ルナが俺の手を強く握った。
「おい、なんで手を———」
そう声をかけようとするが玲奈は恐怖で目を瞑っていて俺の声は届いていなかった。
結局、最後まで手は繋がれたままだった。
「大丈夫か?」
「……大丈夫よ」
ベンチにぐったりと座り若干青ざめながらルナは答える。
まさか絶叫系が苦手とはな……意外だ。
「ほら、水買ってきた。とりあえず飲んで落ち着け。」
「ええ……ありがとう……」
俺からペットボトルの水を受け取るとゆっくりと飲んでいく。
水をを飲んでいる姿さえ美しく、神秘的でこれを広告にしたら水がすごく売れそうだ。
「ふぅ……」
「少しは落ち着いたか?」
「ええ、ごめんなさい。気を使わせてしまって……」
「別にいい、デート中に女性に気を使うのは男として当たり前だからな。」
と、昨日ネットに書いてあった気がする。
「ふふ、ありがと。」
「もう少し休憩するか?」
「いえ、もう大丈夫よ。さぁ、いきましょ」
「わかった、じゃあほら。」
俺はルナにそっと手を差し出す。
「ど、どうしたのよ……」
「転ばれても困るしな。しばらくは掴まっていた方がいいだろ?」
「それは……そうね……じゃあお言葉に甘えさせてもらうわ……」
「ああ。」
ルナは俺の手を取ると嬉しそうに微笑む。
そしてしばらくお互い無言で歩く。
そういえば昨日ネットでデートで無言になるのは絶対にNGとか書いてあったような……何かはなしたほつがいいか……
「そういえば、周りの人たち結構耳を付けている人が多いな。」
「え? 確かにそうね。」
「せっかくだから玲奈もつけてみたらどうだ?」
これは正直俺のルナのケモ耳姿が見たい!という個人的な願いも入っているがそこは黙っておく。
だが当然そう簡単に承諾してくれるはずもなく、訝しげな視線を向けられる、
「あれを私に……?」
「ああ、似合うと思うぞ」
「本当に?」
「ああ、間違いなく似合う。だから選びに行こうぜ。」
「……わかったわ。」
ルナの許可も降りたところで俺達はショップの中へと足を踏み入れる。
中には様々キャラクターの耳を模したカチューシャが販売されていてどれもルナに似合いそうなものが多い。
さて、これは重大無問題だ。
この数ある種類の中からルナに似合いそうなものを——
「じゃあ、これにするわ。」
「え? もう決めたのか?」
ルナが持っているのはこの遊園地のメインキャラを模したもので俺の候補の中でも上位に入っていた耳だ。
「いいんじゃないか、似合うと思う。」
「ありがと、ちなみにあなたも同じものを買うのよ?」
「お、俺もか?」
「私一人だけに被らせる気?」
まさかこんな形で自分にも帰って来るとは……だがルナのケモ耳はみたいし……ここは大人しくしたがっておくか。
「……わかった、じゃあ買ってくる。」
「お金を——」
「いいよ、ここは俺にかっこつけさせてくれ。」
「そう……ありがと。」
「ああ。」
ルナからのお礼を受け取り俺はレジへと向かった。
◇
「ど、どう? ちゃんと似合っているかしら?」
「おぉー! すげー似合ってるよ」
予想通りルナにケモ耳はめちゃくちゃ似合っていた。恐らくこのケモ耳は魔法少女達に着けられる為に生まれてきたのだろう。
うん、そうに違いない。
「そ、そう……ならよかったわ……あなたもよく似合ってるわよ。」
「そうか? 男にはこういうのはどうかと思うが……」
「いえ、すごく似合っているわ。それにしても……なんだかすごくみられているわね……」
ルナの言う通り周囲の人々がルナに見惚れていた。
ただでさえ美人なルナに更に可愛いが足されたのだ。目立たないわけがない。
「……やっぱり外してもいいかしら?」
「恥ずかしいか?」
「見られてると思ったら急に恥ずかしくなってきたわ……恥ずかしいと思わない人なんていない——」
ルナがそんなこと言ったその時、俺達前方に一人の女性が可愛らしい猫耳堂々とつけてベンチに座っていた。
「次はどれに乗ろうか……! せっかく仕事を抜け出して来たんだ、バレるまで楽しまないと———」
その瞬間、その人物と目が合う。
「……」
「……」
「……」
そして訪れる沈黙。
その場に気まずい空気が流れる。
ルナは気まずそうにその人物から目を逸らす。
その人物もまたまさかこんなところに知人がいるとは思ってもみなかったのか完全に固まってしまっている。
「……いきましょうか。」
無言でその場を立ち去ろうとした時がっと肩を掴まれる。
「……少し……お茶をしに行こうか。」
その人物、鬼龍院刹那ことエリザベートは真剣な表情でそう言った。
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