第33話 氷姫とのデート

「ここ……で、あってるよな?」


 週末、指定された場所に着いた俺はスマホの画面を見て時刻を確認する。


 ルナに1時間前は冗談だけど私より絶対に早く来て私を待ってなさいと言われていたが約束の15分前には無事到着出来たみたいだ。


 まったく……どうしてこんなことに……


 当たり前だが俺に女性経験は一切ない。


 そんな俺がデートのルールなんてものを知るはずがない。


「一応、服はそこそこなの来てきたけど……はぁ、どうしたものかな……」


 まじで最近モブとしての存在意義がなくなってきている気がする……何故だ……何故俺のモブ生活が……


「お待たせ、蒼太。」


 そんなことを悩みながら待つこと10分、鈴を転がしたような美しい声が響く。

 

 振り返るとそこには白い純白のワンピースを身に纏い優しい微笑みを浮かべるルナがいた。


 そのあまりの美しさから周囲の人も息を飲んで玲奈を見つめる。


「よ、来たな」


「もちろんよ、それでどう? 私の服に対する感想は?」


「ああ、勿論似合ってるぞ。流石玲奈だな。」


「ふふ、ありがと。じゃあいきましょ」


 俺達は歩いて駅まで移動し電車に乗る。


 今日の目的地は都内で有名な遊園地で玲奈が一度も行ったことがないので行ってみたいということで決まった。


『蒼太! 我もチュロスというやつが食べたい!」


(ん? ああ、あれか。お前食べ物好きだな。)


『食事と戦闘くらいしか楽しみがないからな!』


(わかった、後で食べるとしよう。)


『うむ! 頼んだぞ!」


 ヴォルディアとそんなことを話していると玲奈がじーっとこちらを見ていることに気がついた。


「な、なんだ?」


「今日はいつもだらしないあなたも身だしなみをきちんとしているのね。」

 

「まぁな、最低限お前と並んで釣り合うようにしないと変に目立つからな。」


 だがまぁそれでも俺とルナの容姿では到底釣り合わず、周りでヒソヒソとなんであんな男と美人が……などの話し声が聞こえてくる。


 やっぱり目立つよなぁ……なんせルナは美人すぎる。


「ふふ、釣り合ってないっていわれてるわよ?」


「へいへーい、俺は玲奈様には釣り合わない男ですよー」


「あなただって普通にかっこいいとおもうわよ? まぁ、私に釣り合うのはあの人だけだけど。」


「ウラヤマシイナー」


 そんなことを話していると電車が目的の駅へ到着した。

 俺達は電車を降り、駅を出てから数分歩くと目的の遊園地に到着した。


「これが……!」


「もしかして遊園地初めてか?」


「ええ、親が多忙だった事もあってあまりこういう場所には来たことがないの」


 よほど楽しみなのか数々の立ち並ぶアトラクションに目をキラキラと輝かせている。


「さて、何か乗りたいものはあるか?」


「そうね……このジェットコースターに乗りたいわ」


 ルナが指差したのはこの遊園地の目玉である超絶叫ジェットコースターだ。

 

 説明欄にも一生のトラウマにになる怖さなどと結構えげつない事が書いてある。


「本当に大丈夫か?」


「大丈夫よ、問題ないわ。」


 自身まんまんにドヤ顔を見せつけくるルナ。


 本当に大丈夫だろうな?


「じゃあ行くか。」


「その前に、することがあるでしょう?」


「ん? なんだ?」


 全く分からず疑問に思っているとルナが俺に向かって手を差し出す。


 ……これは……


「今日はデートの練習なのよ? せっかくだし手を繋ぎましょ」


「……」


 俺は無言で天を仰が空を見上げる。


 なんでだよぉぉぉぉぉっ!!


 なんでこんなラブコメイベントばっかおきんだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?


「どうしたの? 手の握り方もわからないかしら?」


「……これはデートの練習なんだろ? そういうのは本番でやった方がいいと思うぞ。」


「その為にあなたで練習するんじゃない。わかったら早く私の手を握りなさい。」


「……わかった」


 俺はルナに逆らえず言われるがままにルナの手を握った。


「これで満足か?」


「ええ、それでいいわ。エスコートお願いするわね、精々私を楽しませなさい。」


「善処しまーす」


 そうして俺達はジェットコースターの乗り場へと向かった。

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