第32話 予行練習
いやぁ……本当に昨日は有意義な日だったなぁ……まさかあんなに大量の曇らせを摂取できるとは……
昨日、都心で起きたセレクによる大規模な襲撃により、都心のビルはほぼ壊滅状態だった。
だが一夜明けた今、もう既にアルテミスグループによる復興作業が始まっていて復興は意外にも早そうだ。
にしても昨日のルナのあれは一体なんだったんだ?
そんなことを考えならがらいつも通り屋上の扉を開けると既にベンチには先客がいた。
その先客は何かをポケットにしまうといつも通りの冷たい瞳でこちらに振り向く。
「よ、玲奈。」
「あら、今日も来たのね、餌ならあるわよ。」
「お、さんきゅ」
最早ペット扱いされることにあまり抵抗もなくなった俺は玲奈から差し出されたお弁当箱を受け取り玲奈の隣に腰をおろす。
蓋を開けると相変わらず美味しそうな料理が詰められていて味も最高に美味しい。
「どうかしら?」
「ああ、めっちゃ美味い。毎日すまんな、こんないい飯貰ちゃって」
「別にいいわよ、ペットのご飯を用意するのは飼い主の義務だもの。それにこれはいつかある人に完璧な料理を出せるようにするための練習だから。」
「へぇー、前に言ってた人か。」
「そうなの、あの人は———」
なんかいきなり目つきが変わってあの人について語り出したので俺は適当に相槌を打ちながら弁当を味わう。
ああ、今日もいい天気だ……そして弁当が美味い……
「ねぇ、私の話聞いてる?」
「ん? もちろん聞いてるぞ。随分元気になったと思ってな。」
「……そうね、あの時はありがと。とても助かったわ。」
「別にいいよ、俺は何もしてないしな。」
これ以上変にルナに好かれるのも俺の目的の障害になるしな。
「ふふ、でも私は本当に感謝しているの。だからあなたにお礼をしてあげる……明日一緒に何処か遊びにいきましょ」
「え?」
俺はその言葉を聞き弁当を食べる手を止めた。
なんでだよぉぉぉぉ!! 今そんなデートイベント発生フラグなかったろぉぉぉぉぉ!?
「……気持ちはありがたいが……好きな人がいるんだろ? なら俺のような一般生徒Aとデートなんてしない方がいい。うん、きっとそうだ。」
「これはあくまであなたへの単純な恩返しとあの人とのデート練習よ。あなたには一ミリも興味ないから安心して」
「ああ、なんだそうなのか。そういうことなら別にいいぞ」
「ふふ、決まりね。」
こうして何故か明日玲奈とデートの練習をすることになった。
◇
学校が終わり、珍しく生徒会の仕事もあまりなかった私は帰宅後、シャワーを浴びてよく手を洗ってから今癒しの時間をすごしていた。
「ふふ♪」
黒い布を眺めていると自然と笑みが溢れる。彼のローブの一部であるこの布は私にとって一番大切なものだ。
この布をずっと待っていると彼がずっと側にいてくれているみたいですごく心が落ち着く。
「はぁ〜……幸せ……♡」
オメガ……貴方は今どこで何をしているのかしら……もしかしたら貴方も私のことを思って……
と変な妄想をしているうちにとある欲求が強く湧いてくる。
「……匂い……嗅いでみようかしら……」
今まで何度も嗅いでみようとしてみたものの流石にそれはどうなんだと思い踏みとどまっていた。
でも……もう我慢の……限界……
結局欲求耐えられず私は欲求のままに彼の布の匂いを嗅ぐ。
すると彼に抱かれた時の匂いが蘇り、身体中を幸福感が包む。
「オメガ……♡」
オメガへの愛が高まったその時、周囲に冷気が発生し、私に集まっていく。
冷気は白い純白のドレスへと姿を変え、私は無意識に魔法少女に変身してしまっていた。
「な、なんで変身が……それよりオメガの布はっ!」
布を見るとそこだけは凍っておらずオメガの布は無事だった。
私はそのことに安堵しつつ部屋の氷結を解き、変身したままベットに寝転び再び彼の匂いを満喫する。
「きっとこの布が私達をまた引き寄せてくれる……ふふっ」
オメガ……あなたの為なら私は……
その後しばらく私は至福の時を過ごした。
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