第31話 ルナの願望

「……さて……どうなるかな……」


 破滅剣エクシティウムは全てを滅ぼす。


 例え分体だろうと関係ないその魂を辿り確実に滅ぼす。


(どう思う?)


『うむ……エクシティウムの破滅からは逃れられるものがいるとは思えんがな。奴が生きていたら我と同等の魔神が向こうにいるとみていいだろう。』


(なるほどな……まぁ別にどうでもいいかな。死んでればそれで終わり、もし生きているならまた曇らせを楽しめる……いやむしろ生きていて欲しい。)


『クハハ、相変わらずお主は頭のネジが吹っ飛んでおるな。』


(失礼な、俺はただただ魔法少女が大好きなだけだ。)


 そう、俺は変わらない。


 俺は……この世界で全力で曇らせを堪能するっ!


「オメガ、あの子達は……」


「奴の分体が滅びる直前に回収された。」


「そうか……やはりあいつは分体だったか……私は……あの子達を奴の支配から解放してやることはできなかったか……」


 エリザベートは悔しそうに表情を歪める。


「……オメガ、ありがとう。君がいなかったら私はセレクとあの子達に負けていたかもしれない。」


「気にするな」


「正直君には聞いてみたいことが色々とあるが……私は後輩を救ってくれた恩人にそんな無礼なことはしない……私はあの子達の様子を見にらいくとするよ。また会おう、オメガ。」


 エリザベートはそう言い残してフランの反応がある場所へと向かっていった。

 

 さて、俺も帰るか……


 その時、誰かが俺の背後で呟いた。


「オメガ」


 ゆっくりと振り返るとそこにはいつもと何処か様子が違うルナが立っていた。


 その力は以前と比べると圧倒的に向上していて今の彼女からは二代目以上、エリザベートに匹敵する力を感じる。


 おお……! 覚醒したのかっ!


 魔法少女の覚醒の条件は誰かを強く思う力……すなわち愛だ。アニメでは仲間がやられてた仲間への思いで覚醒してたんだけど……原作の覚醒よりも圧倒的に強くなっているのは何故だ? 


「無事だったか。」


「ふふ、あなたが私のことを心配してくれるなんて嬉しい♡」


 おや? ルナの様子が……なんでキャラ変わってんの???


「……そうか……私はもう行く。」


「ねぇ、オメガ私も連れて行って? 私をあなたの仲間に……いえ、あなたの奴隷にしてほしいの」


 ??????


 え、なにこれ? どういう状況? まじで理解が追いつかない……


「いや、お前には魔法少女としての義務が……」


「あなただけの為にこの力を振るう……それが私の責務よ。だって私はあなたの為だけに存在しているもの」


 ???????????????


 ……よし、逃げよう。


『いや、この娘多分追いかけて来るぞ』


(まじで?)


『いつでもお主が飛んでいってもいいように準備してあるな。今のお主がトップスピードを出してもしばらくはギリギリ視認できる距離にいるだろう』


(ヴォルえもん〜!! なんかないのか!?)


『なんだその呼び方は……まぁいい我の能力で瞬間移動すれば良い。そうすればどんなに速くとも追いつけん。』


(それだ!!)


 俺はヴォルディアに瞬間移動のやり方を教えて貰う。


「オメガ……どうか願わくば私をあなたの……」


「———魔法少女ルナよ、さらばだ。」


 その瞬間、俺は瞬間移動でその場から姿を消した。



 ◇



「さらばだ。」


「ま、待って! オメガ!」


 私は急いで彼に抱きつこうとするも次の瞬間には彼の姿はその場にはなかった。


「また……行ってしまったわね……」


 先程までオメガといて高鳴っていた胸が急に落ち着きを取り戻していく。


 私、絶対彼に変なやつだって思われた……


 彼に嫌いだと言われたら私はもう生きていく意味を失うだろう。


 次に彼と会えるのはいつになるのだろう……心の何処かで彼に会えるのなら上級魔族でも七魔帝でもなんでも来てしまえとすら思ってしまう。


「……さて、とりあえずはみんなと合流しようかしら。」


 そう思い地上へと降り立つと周囲は荒れ果てていた。


 ビルの窓ガラスは割れ、地面に亀裂が入っている。


 これは修復が大変そうね……


 そんなことを考えながら歩いていると私はとあるものを見つけた。


 その黒い布は一見何の方もないただの布に見えるかも知らないがその布からは彼の魔力が感じられた。


 私はその布を見つけた途端、すぐさま駆け寄り手に取る。


「こ、これってまさかオメガのローブの一部……?」


 恐らく戦闘時に破れたのだろう。


 それほど激しい戦闘だったことが伺える。


 私はローブの一部を大切にポケットへとしまう。


「ふふっ、すごく良いものを拾ったわ♪」


 これでいつでも近くにオメガを感じることができる……これは肌身離さずもっておこう。


 私は振り返り、彼のいた場所を見つめる。


「オメガ……また会いましょ。次は二人きりで……♡」


 そう呟き私はみんなの元へと向かった。

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