第30話 魔神
「これが我が魔剣、破滅剣エクシティウムだ。」
俺の手に収まったエクシティウムは常に死の瘴気を周囲に放っていて大体の生物はこいつに近づけば即死する。
目の前のセレクも先程までの余裕そうな笑みはどこにもなく、かなり焦ったように真剣な表情をしていた。
「っ! これは……本当に死んでしまうかもしれませんね……」
「怖いのか? 今なら使わないでおいてやってもいいぞ。」
「クフフ、ご冗談を。私はあの方以外には負けませんので」
セレクは恐怖心を余裕な態度を保つことで打ち消し、再び不可視の斬撃を放つ構えを取る。
その構えは一切の油断がなく、真剣なものだった。
「さぁ、オメガ始めましょう! 私達の真剣勝負を——」
セレクが高速で刃を振おうとしたその瞬間、セレクの首が宙を舞う。
「な———」
その一瞬の出来事にセレクも反応できずに首のない自身の体を見つめる。
だが流石は七魔帝、切られてから0.5秒後にはすぐに宙を舞う自分の首を掴み、すぐさま繋げようとするがもう既に体は崩壊を始めていた。
この破滅剣エクシティウムに滅ぼせないものはない。例えどんな魔族、世界、概念だろうとその滅びの未来からは逃れることはできない。
「クフフ、これがオメガの……」
「じゃあな、七魔帝。」
「ええ……また会いましょう……オメガ」
そう呟いた直後、セレクの体は塵となって崩壊した。
◇
「やれやれ、桁違いの強さですね……」
魔界のとある部屋でセレクは疲れたように大きくため息を吐く。
魂の収集者で自身の魂を分割し、分身作り出して置いたからよかったものの、これが本体だったらと思うとゾッとする。
「まさかあれほどとは……もしかしたらオメガの強さはあのお方に匹敵するやもしれませんね……」
あんなに圧倒されたのはあの方以来久しぶりだ。
だが成果はあった。
二代目達の魂も消滅寸前に回収したし、特に損失もなくオメガの情報を集めることができた。
「とりあえずあのお方にオメガについてのご報告を——」
セレクが部屋を出ようと立ち上がった瞬間、体の崩壊が始まった。
「こ、これはっ!」
間違いなくオメガの能力だ。
(ま、まさか私の分体を伝って……! ま、まずい……これは直せない……!」
崩壊はどんどん全身に広がっていく。
「な……私が、こんな……ところで……!」
魂にまで崩壊が伝播しようとしたその時ピタリと崩壊が止まった。
『運がいいなセレク……我がいなければ貴様はほろんでいたぞ。』
その直後、崩壊しかけていた体が綺麗に戻っていく。
オメガの破滅の力を無効化出来そうな人物などセレクは一人しか知らない。
「ヴェヌズフィア様、見苦しい姿をお見せして申し訳ありません。」
『よい、それにしてもオメガ……中々の実力のようだな。』
「はい、この私が手も足も出ませんでした。あの者ヴァヌズフィア様と同等の力を持っています。恐らく奴は魔神です」
『ほう……我と同格……か……』
ヴェヌズフィアは愉快そうに嗤う。
「我が君?」
『オメガの脅威など取るに足らん……もし我の前にたつのならば我が直接相手をしてやるだけだ。』
魔神はそう呟き闇の中へと消えていった。
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