第28話 操り人形
「さぁ、みなさん見せてあげなさい……二代目魔法少女の力を」
セレクが指を鳴らしたのと同時に二代目達が動く。
その動きは洗練されていて無駄がない。
やはりセレクの【魂の収集者】は生前の強さをそのままに完全に自分の支配下に置くことが出来るのか。
「オメガ、貴方に彼女達を倒せますか?」
「面白い……」
俺はまず二人の魔法少女と対峙する。
さて、どうくる?
「……マジカルフレイム」
魔法少女の手のひらかから巨大な火球が放たれる。
まるで太陽を彷彿とさせるその火球はその高音から周りのビルを少しずつとかしていく。
流石は『獄炎』と呼ばれた魔法少女だ。
とりあえず避けとくか———ん?
俺は背後に気配を感じ振り返る。
「マジカルトルネード」
直後、俺の背後に巨大な竜巻が発生する。
その竜巻は瓦礫や車などを巻き上げ、その風圧で周囲のビルを切りつけながらこちらに接近してくる。
「まるで災害だな……」
俺は接近してくる竜巻と火球をギリギリまで引きつける。
あともう少し……よし、今だ!
あと少しで触れる紙一重のところで脱出する。
全く、あぶないあぶない……もう少しで消し炭になるか切り刻まれる所だった。でもこれで互いの技は相殺になるはず———
その時、火球と竜巻が衝突する。
だがその二つは相殺することはなくむしろお互いに混ざり合ってどんどん大きくなっていき炎の竜巻が出来上がった。
なるほど、俺ではなく最初からこれが狙いだったのか……魂だけになり操られようと仲間との連携は本物というわけか。なんとも皮肉な話だ。
融合により更に勢いを増した炎の竜巻が俺へと近づく。
まぁ、俺には無駄だけどな。
俺は近づいてくる炎の竜巻に逆にどんどん近づいていく。
そして竜巻の目の前まで到達すると腕を払い起きた風圧で竜巻を相殺させた。
「さて次は誰かな?」
そう呼びかけると俺の前に一人の少女のような小さい見た目の魔法少女が現れた。
一見、弱そうな印象を与えるがそれは間違いだ。
『蒼太、この幼子中々の猛者だぞ』
(ああ、恐らくだが二代目で一番こいつが———)
「……グランドアース」
少女が唱えた瞬間、地面から巨大な尖った岩が突き出す。
俺はその岩を軽い身のこなしで素早く躱わした。
だがそれで終わりではないらしく棘の先端からさらに枝分かれするように次々に棘が展開されていく。
俺かその棘を最小限の動きで躱していると残りの二人が現れる。
「マジカルウォーター」
彼女が唱えると高圧縮された水が何発も放たれる。その威力は銃が可愛く見えてしまうほどでどんなに硬い金属でも容易に貫くだろう。
そしてもう一人が枝分かれ一本の岩の棘に触れると枝分かれした岩に続々とバラが咲き始める。
そのバラは通常よりも鋭い棘を持っていてその棘は岩の棘と合わせて俺を何処までも追尾してくる。
「面倒だな……全て壊そう。」
俺は一度迫る棘を手動で切り裂いた後、折れた棘の岩に触れる。
「【破滅の魔手】」
その直後俺が触れた部分から岩にひびが入っていく。そのひびは伝播し全体へと広がっていきやがて巨大な岩を崩壊させた。
追尾するバラも岩も無くなり視界が晴れた瞬間、そこにはエネルギーを貯めている魔法少女達が。
おいおい、一ミリも休ませてくれねぇな。
そして次の瞬間、それぞれの属性の合体技が放たれる。
「【破滅の弾丸】」
俺の背後に現れた魔法陣から一発だけ弾丸が放たれ、魔法少女達の合体技に晴れた途端、崩壊させた。
俺にこんなにも技を多用させるとはな……やはり二代目は強敵だ。
「どうですか、私の可愛い奴隷達は?」
「ああ、強いよ。流石は二代目魔法少女達だ。よく連携が取れている。」
「ふふ、自分のことではありませんが所有物が褒められるのは中々いい気分——」
「見つけたぞ、セレク……!」
その場に凄まじい怒りを含んだ声が響く。
振り向くとそこにはセレクを忌々しく見つめるエリザベートの姿があった。
「おや、これはこれは。お久しぶりですね。お元気でしたか?」
「ああ、元気だったさ……いつも貴様を殺したくてウズウズしていたからな」
「おや、怖いですね……私、貴方にそんなに恨まれる覚えがありません」
「とぼけるなっ! 私の後輩達を殺した貴様を私は許しはしないっ!」
「何ををいっているんですか? 彼女達は仲間荒れで自らの身を滅ぼしたんです。私は少し能力を使いきっかけを作ったにすぎません。」
「もういい……貴様と話しているだけでも無駄だ……殺す。」
エリザベートが拳を振りかぶりセレクへとその拳が迫ろうとしたその時その間に誰かが割って入った。
「リリ……!?」
『自然』の魔法少女リリ。
二代目魔法少女のリーダで今はなんの感情もない瞳をしているが生前は感情表現豊かで自然が大好きな子だったらしい。
そんな大切な後輩を前にエリザベートがたじろぐ。
「いや、違う……おい、セレク。私の後輩に何をした!」
「私の能力で魂を操っているだけですよ。生きているわけないでしょう?」
「貴様っ!」
『司令、どうしてセレク様を傷つけようとするんですか? セレク様は私を蘇らせてくれた恩人ですよ?』
エリザベートが明らかに動揺する。
その様子を見てセレクは実に愉快そうに嗤う。
「ふふふ、やはりあなたは面白い。私が操って喋らせたくらいでそんなに動揺して……実に滑稽でしたよ」
「貴様……」
『司令こそなんで私達をあの時助けてくれなかったんですか? どうしてそんなに堂々と私達の前に姿を表せるんですか?」
「ふはははっ、これは傑作だ! ほら、言われてますよ、司令?」
「貴様……どれだけ死者を弄べば————!いや、よそう。これ以上言葉を交わせば更に不快になるだけだ。」
冷静さを取り戻したエリザベートは一度深呼吸をして心を整える。
「お前がオメガだな。」
「ああ」
「とりあえずは味方という認識で構わないか?」
「構わない。」
「そうか、それは心強い。ここからは分担しよう。私はあの子達の相手をする。君はセレクの相手を頼む。」
「私一人で十分だが?」
「あの子達は私が眠らせてあげたいんだ……」
その目には確かな覚悟が宿っていた。
「わかった。」
「ありがとう、本来なら私が打ち取りたい所だが君に譲るよ。」
「任せろ」
「頼むよ、オメガ。」
話を終えたエリザベートは二代目達に向かい合う。
「話は終わりましたか?」
「ああ、問題ない。」
「では再戦といきましょう!」
そして再び戦いが始まった。
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