第27話 亡霊
「はっ!」
「ふっ、遅いな。」
俺は七魔帝セレクの鋼糸を華麗に躱しながら夜の一部のように舞う。
正直、闘いが面白いと思ったのはこの闘いが初めてだった。一挙手一投足の読み合い、至高の攻撃、触れれば重症のスリル。これが本物の闘いなのだ。
「ふふふ、楽しいですね……これほど心が踊る戦いはいつ以来でしょうか。」
「ふっ、そうだな。私も強い奴との戦いは楽しい……今までの上級魔族は弱すぎた。」
「私とあんな雑魚どもを一緒にされては困ります。私、これでも一応七魔帝なので。」
セレクの指が微かに動く。
その瞬間、再び鋼糸の猛攻が始まる。
『蒼太、右斜め前。』
「ああ、来てるな」
視力を最大限強化し、右斜め前を見ると細く透明な後が俺に迫っていた。
うお、あぶねー……恐ろしく細い鋼糸……俺でなきゃ見逃しちゃうね。
その糸は到底肉眼では直視できるものではなく、視力強化でようやく少し見えるほどのものだった。
俺はその糸が届く前に手刀で切り裂いた。
「ふん、まさかこんな小細工を仕込んでいるとはな。」
「バレてしまいましたか……この技はあの方のお墨付きをいただいていたのですが……残念です。この技を見破ったのはあのお方とあなただけですよ。」
セレクは愉快そうに笑い拍手を送ってくる。
『あれに気づくとは大したものだな蒼太。』
(まぁな、俺もなかなか強くなってるだろ?)
『ああ、流石は我の見込んだ男よ。今回の相手は中々腕が立つ。雑魚では試せなかったことも色々と試せよう』
(もちろん、色々と試させて貰うとするよ、この間使えなかったらあれもこいつなら使えるかもな。)
そんな思いに心躍らせていると何処からかとんでもない爆音が響いた直後、天に穴が空いた。
「おやおや、随分と懐かしいお方も来ておられますね。」
こ、この馬鹿みたいな力は間違いない……ついにあのエリザベートが出てきたかー!
暴虐の魔法少女エリザベート。
言わずもがな作中最強キャラその圧倒的なパワーで敵を粉砕していく姿はもはや爽快さすら覚える。
正直俺は昔エリザベートのことがあまり好きじゃなかった。
だってあいつフィ⚪︎カルギ⚪︎テッドみたいな圧倒的パワーでせっかく魔法少女の曇らせが見れそうな所で魔族を一撃で片付けて魔法少女の表情をあっという間に晴れちゃうから。
でもエリザベートのあのシーンを見てからは俺もエリザベートが好きになった。
ふふ、楽しみで仕方ねぇなぁっ!
「暴虐の魔法少女か……」
「おや、貴方も彼女をご存知ですか?」
「当たり前だ、魔法少女のことは全て知り尽くしている。」
「ほう、それはそれは……あなたに好かれる魔法少女達がうらやましいですねぇ。私も好きですよ、魔法少女は。最も、特に暴虐の魔女にはめっぽう嫌われていますがね。」
残念ですとわざとらしく落ち込んだふりをするセレク。
まぁ、あれだけのことしたら嫌われるよなお……俺はお前のこと嫌いじゃないから元気出せよ。
「さて、では再戦といきましょうか。そろそろ貴方の本気を見せてはくださいませんか? オメガ。」
「それは貴様もだろう。」
「私の能力である悪感情増幅は格下か同格にしか効きませんので。圧倒的格上である貴方には私の能力は効きません。」
「とぼけるな、さっさと隠している能力を使え。」
「ふふ、バレていましたか。仕方ありませんね。ではお見せしましょう、私のお気に入りの人形を。」
口元を嗜虐的に歪め、セレクは唱える。
「【魂の
その直後、周囲に白い霧のようなモヤが立ちこめる。
「さぁ、おいでなさい。私の可愛い奴隷よ……顕現、魔法少女。」
白いモヤは徐々に固まっていき、五つの人型へと形を変えていく。
その姿は20才ほどの美女達ので魔法少女らしい可愛らしい衣装に身を包んでいる。だが全員感情のないような瞳をしていてまるで生きていない亡霊のようだ。
「ふん、随分と悪趣味な能力だな」
「そうですか? 彼女達も死んでもなおこうしてまたこの世に顕現できて私はとても優しい能力だと思うのですがね。」
魂の収集者……その能力は死者の魂を集め、それを自らの奴隷とすること。
まさに魔族らしい能力だ。
「さて、では参りましょうか……二代目魔法少女の皆さん。」
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